ビジネス

J.フロント、経営陣の大胆な若返りは「不透明な時代」への布石

J.フロント リテイリングが経営陣の大胆な若返りに動く。執行役常務の小野圭一氏(48)が3月1日付でグループの新社長に就任し、子会社の大丸松坂屋百貨店も48歳の宗森耕二新社長に交代する。コロナ禍からの復活にメドをつける中、次の時代を見据えた新体制を築く。

「知識や経験は好本(達也社長)に遠く及ばないが、学びながら会社のあるべき姿に向かっていきたい」。30日に都内で開かれた記者会見で、小野次期社長はそう決意を述べた。

67歳の好本社長とは、年齢が二回り近くも違う。かつて山本良一前社長が大丸社長に就いた2003年当時も52歳という年齢が話題になったが、それよりも若くしての抜てきだ。

“異例”なのは若さだけではない。好本社長、山本前社長がそうだったように、J.フロントのトップは大丸松坂屋の社長から昇格するのが通例だった。小野次期社長は大丸松坂屋の社長を経ておらず、百貨店の店長経験もない。

一方で、“畑”に縛られず多彩なキャリアを重ねた。大丸京都店の営業推進部長(16年〜)、人材子会社のディンプル社長(18年〜)、グループの構造改革推進部長や経営戦略統括部長(22年〜)、パルコ取締役(同)などを歴任した。

若さと胆力

好本社長の後継者の選定は昨年3月から始まった。小野次期社長はそれ以前から、中期経営計画の策定などグループ経営の中枢に関わってきた。好本社長は小野次期社長を指名した大きな理由の一つに、前述の多彩な経験から培われた「物事を俯瞰して見る力」を挙げる。13年、当時大丸松坂屋のトップだった好本社長から百貨店事業のインバウンド戦略の旗振り役に指名された小野次期社長は、「誰も考えつかないような取引先を指名したり、タイアップ企画を組んだりと、前例にとらわれない視野の広さがあった。それを最後まで遂行する胆力もあった」。

好本社長自身、高い視座に立ち、百貨店の既成概念に縛られない改革を続けてきた。ラグジュアリーSCのギンザシックスの開業(17年)、定借面積を大幅に増床した大丸心斎橋店の建て替え開業(19年)などがその成果だ。「一時期は“脱・百貨店”を目指すとまで言っていたこともあったが、ここしばらくこの言葉を口にしていない。コロナ禍という危機を経て、百貨店という業態の先人が築いてきた価値、お客さまからの信頼を改めて再認識した。だが我々が思っている以上に消費者の価値観の変化のスピードは速い。不透明な時代の中で、前例のないチャレンジを続けていく必要がある。私は今回の決断(社長交代)がグループの未来の成長につながることを確信している」。

“同期”で一枚岩の経営

J.フロントの小野次期社長と、大丸松坂屋百貨店の宗森次期社長は、98年入社の同期で、当初から気の知れた、互いを高め合ってきた間柄だ。親会社と百貨店事業会社、一枚岩の経営により、新時代に向けた強固な経営基盤の構築を進める。「足元業績には追い風が吹いているが、今こそ必要なのは“変革”。向こう30年、さらにその先の会社の姿を見据えた手を打ちたい」(小野次期社長)。

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