ビューティ

花王がヘアケア事業を変革 高価格帯市場に商機

花王がヘアケア事業の変革を加速する。ドラッグストアにおける1400円以上3000円未満の高価格帯ブランドを複数立ち上げるほか、既存のマス向けブランド「メリット(MERIT)」「エッセンシャル(ESSENTIAL)」「セグレタ(SEGRETA)」の再構築を図る。同社の中期経営計画最終年度となる2027年にはヘアケア事業の売上高を23年比で43%増を目指す。

花王によると、近年のヘアケア市場はシャンプー価格が1400円以上の“ハイプレミアム”ゾーンが拡大傾向にあり全体の4割(SRI+調べ)を占めているという。一方で、同社のヘアケア事業は9割以上が1400円未満のマス向けブランドで構成し、ハイプレミアムブランドは3000円台の「イネス(INES)」のみを展開。ポートフォリオでは1400~2000円台の商品を扱うブランドが空白だった。「近年のヘアケア市場は楽観視できる状況ではない。市場とのギャップを解消し、改めてお客さまに喜ばれる商品の提供を推し進める」(内山智子 花王ヘアケア第一事業部長)と、昨年から取り組む事業変革を急ぐ。

変革の指針となるビジョンとして“髪の生きる力を、人の生きる力へ”を新たに策定した。「人それぞれのありたい髪を実現することで希望や活力に満たされ、そして自信を持って過ごしてほしいという思いを込めた」と、ヘアケア研究を100年以上続けてきた花王ならではの原点に立ち返った。今後は同ビジョンをもとに、感性や感情に響くマーケティングを軸に据え、商品体験とそれらを支える技術を融合させるモノづくりの思想を取り入れる。

商品開発の体制も見直す。従来では各部門がバトンをつなぐようなリレー形式で進めてきたが、今後は、全体を把握してさまざまな部門を横断するスクラム型に変更する。これにより、開発リードタイムが短縮され短期的に新ブランドを展開できる体制へと生まれ変わる。

変革の成果はすでに出ており、感情的な価値を意識したコミュニケーション戦略を取り入れた「エッセンシャル」の中核ライン“エッセンシャル ザビューティ”のバリアシリーズ(昨年4月発売)は、アットコスメの2023年ベストコスメのシャンプー・コンディショナー部門で1位を獲得。アウトバスのヘアケア“ウォータートリートメント”もヒットし、花王全体のアウトバスの売り上げは21年比で236%(インテージ SRI+調べ・23年11~12月)と躍進した。

“ハイプレミアム”ブランドを拡充

事業変革の一環として“ハイプレミアム”な新ブランドを続々と投入する。第1弾では「メルト(MELT)」を今春立ち上げる。シャンプーとトリートメント(各1760円※編集部調べ)、スペシャルケア(2200円※同)、アウトバス(1430円※同)の4種をそろえる。ヘアケアの新ブランドは2020年に誕生した「イネス」以来、4年ぶりとなる。3月上旬に全国のロフトで先行販売し、4月20日からマツモトキヨシグループやココカラファイングループ、ハンズ、アットコスメストア、花王のECサイトで販売を開始する。

「メルト」は“休息美容”をブランドコンセプトに掲げ、「とろけるような」艶髪へ導く。高品質な天然精油をブレンドしたゼラニウム&ミュゲの香りが特徴。ベビーピンクを基調にしたデザインで丸みを帯びたボトルパッケージを採用した。目玉の1つはスペシャルケアとして提案する、水と混ぜると濃密な炭酸泡が発生するパウダー“クリーミーメルトフォーム”だ。毛穴まわりの汚れや皮脂を浮き上がらせて落とし、清潔な頭皮と髪に整え、トリートメントのなじみをよくするブースター効果も兼ね備えた。単品でも使用できるが、同ブランドのシャンプーと混ぜて使うことを推奨する。

コミュニケーション戦略では、美容感度の高い人をターゲットに、交通広告や、TikTok、YouTube、インスタグラムを活用しながらブランドの世界観を拡散。このほか、五感に働きかける没入体験のコンテンツを用意するなど話題化を狙う。

ここ最近のヘアケアブランドは、「ジェンダーレスをコンセプトにしたブランドが増えすぎて、同質化している印象がある」(野原聡 花王ヘアケア第1事業部ブランドマネジャー)と分析。「お客さまからも『使っていて高揚感を感じない』という声が聞かれる。だからこそ逆張りの戦略として、あえて女性向けのコンセプトとムードで勝負した」と説明する。

今後「メルト」を皮切りに、今秋に第2弾、25年に第3弾の新ブランドをローンチする。「第2、第3のハイプレミアムブランドも『メルト』とは一味違う形でお客さまの情緒に訴えていきたい」(野原ブランドマネジャー)と意欲を燃やす。

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