ファッション

完全復活の「プラダ」、新生「ファビアナ フィリッピ」の競合は「ザ・ロウ」!? 2024年春夏ミラノコレ現地リポvol.2

2024年春夏ミラノ・ファッション・ウイークが9月19〜25日に開催されました。今季のミラノは、サバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)による「グッチ(GUCCI)」や、ピーター・ホーキンス(Peter Hawkings)による「トム フォード(TOM FORD)」、シモーネ・ベロッティ(Simone Bellotti)による「バリー(BALLY)」など、新たなクリエイティブ・ディレクターによるデビューショーも目白押し。オフスケジュールのイベントやアフターパーティーも復活し、盛り上がった現地の様子を村上編集長と、ミラノコレ取材2シーズン目の木村記者が振り返ります。

「マックスマーラ」

木村:2日目は「マックスマーラ(MAX MARA)」でスタートしました。毎シーズン歴史上のエンパワーメントな女性のアイコンからストーリーを紡ぎますが、今回は1940年代のイギリスで戦時中に自国を支えるために団結した“ランドアーミー”に着目しました。レポートの詳細はこちらから。コレクションの印象はいかがでしたか?

村上:春夏はコートブランドの「マックスマーラ」に難しいシーズンだし、昨今温暖化が進んで「トレンチさえなくて良いかも⁉︎」なムードが色濃くなる中、上手にまとめたと思います。ミリタリーやアウトドアの要素を盛り込んで普遍性の高いブルゾンやジャケットをコンパクトに提案し、微妙にディテールやカラバリを変えることで変化をつけましたね。ハリのあるオーガンジーのような素材で作ったトレンチは、さすが。スケスケ素材がマストなシーズン、程よい肌見せが楽しめるし、これなら4、5月あたり重宝しそうです。

「ファビアナ フィリッピ」

木村:ファビアナ フィリッピ(FABIANA FILIPPI)」は、ルチア・デ・ヴィート(Lucia De Vito)新クリエイティブ・ディレクターのデビューショーでした。振付師のヨアン・ブルジョワ(Yoann Bourgeois)とのコラボで実現したパフォーマンスダンサーによるプレゼンテーションは圧巻でした。回るステージの上を10人のダンサーが登場し、共に手を繋いで歩いたかと思えば、それぞれにすれ違ったり、春の出会いと別れ、そして前向きなムードを清々しく表現しているようでした。今季のトレンド素材のマクラメやフェザー、フリンジといった揺れる素材も演出と相まって一層エレガントに見えました。

村上:新クリエイティブ・ディレクターによって、トレンドの“クワイエット・ラグジュアリー”なムードが高まったし、ニットやチュールスカートだけじゃないライフスタイルブランドに舵を切り始めた印象ですね。モードなイメージが強くなって、競合は「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」から「ザ・ロウ(THE ROW)」や「ジル サンダー(JIL SANDER)」に変わってきた印象があります。値段は、ちょっと高くなりそうかな?それでも「ザ・ロウ」や「ジル サンダー」よりは少し手頃なプライスレンジで落ち着きそう。そんなポジショニングで戦えるか?に注目したいと思います。

「アンテプリマ」

木村:アンテプリマ(ANTEPRIMA)」のインビテーションはトランプのようなカードセット。「人生とはゲーム。そしてファッションは究極の遊び場。心を開き、恐れを知らない精神で人生という名のゲームを謳歌しよう」というポジティブなメッセージが書かれていました。コレクションは、スペードがキーモチーフに。シャーベットグリーンやイエロー、ホワイトといった春らしいカラーパレットと、シアー素材のレイヤードは今季のトレンドですね。カーキのミリタリーシャツのカットスリーブとカーゴパンツのセットアップなど、「マックスマーラ」に引き続き登場したミリタリー調もトレンドとして気になりました。ちなみに「アンテプリマ」は日本市場ではどのような立ち位置ですか?

村上:日本だと“ワイヤーバッグ”のイメージが強いかもしれませんが、ニットを中心に美しい洋服を作るので大人世代に愛されている印象です。可愛らしいというより、潔いくらいに爽やかな清涼感あふれる素材と色使いがよかったですね。1枚、ヴェールのようにフワッとハイゲージのニットを被せるだけで、途端に軽やか。ミラノでコレクションを発表しているブランドは、チュールやオーガンジー、レースとは違う、超ハイゲージニットというシースルー素材を武器として持っているので、今シーズンは強い印象を受けます。化繊を混紡しているから、ハリコシある素材が生まれて、形を作りやすいのかな?

「ヴァレクストラ」

木村:続いて「ヴァレクストラ(VALEXTRA)」の展示会へ。こちらも“クワイエット”な佇まい。青波海パターンのイジデバッグや、折りたたみ可能なオリガミバッグの新作、バッグと同じレザーのペン立てなどステーショナリーグッズも登場しました。

村上:「ヴァレクストラ」のバッグって、冠婚葬祭に便利なカッチリした形というイメージがあったけれど、バリエーションを広げていますね。上部を折りたたむとブランドの頭文字のVが現れるホーボーバッグは、実際肩からかけたとき、腕が上手くバッグの上に収まるんじゃないかな?収納力も高そうです。

「プラダ」

木村:プラダ(PRADA)」は、韓国のアイドルグループENHYPENが全員来場とのことで、会場前はすごいことになってましたね。カメラに収めなければと会場を走り回っているうちに、時間切れ。要さんから事前に聞いていた通り、自分の席を見つけるのが大変でめちゃくちゃ焦りました。(結局、ほかの人に座られちゃってましたが)。肝心のショーのレポートはこちらから。要さんのショーの印象はいかがでしたか?

村上:2023-24年秋冬の「ミュウミュウ(MIU MIU)」が、今シーズンのミラノに大きなインパクトを与えているように、トレンドセッターとしてのミウッチャ・プラダが完全に復活した印象があります。今回は40年以上の長きにわたり彼女の右腕として活躍してきたファビオ・ザンベルナルディ(Fabio Zambernardi)がフィナーレに登場したこともあって拍手が一際大きかったけれど、当面、センセーションで記憶に残るコレクションを発表する「プラダ」の存在感は増していくのではないでしょうか?それは新生「グッチ」がセンセーションとは異なる、静かでも丁寧な服作りに舵を切ったからでもあります。コレクションやショーの演出は、6月のメンズ同様だったけれど、それでも来場者はコンセプチュアルなアプローチに拍手喝采でしたね。しばらく、ミラノは「『プラダ』は次、何をしてくるのかな?」とウワサし合うカンジになると思います。ビジネスにおいても、話題になるという点でも、完全復活の印象です。

「エムエム6 メゾン マルジェラ」

木村:次の「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」の会場はどんな盛り上がりでしたか?

村上:みんな「プラダ」から必死に会場入りしたカンジ(笑)。雨だったから、なかなかハードでしたね。でもコレクションはとても良かったです。メンズライクなテーラードを基調にしつつ、ワイドパンツやシルキーな素材のシャツを合わせて、自然体がカッコいいムードを醸し出すのは、「MM6」の得意技の1つですよね。キーワードの1つは、「ELONGATED(縦に引き伸ばす)」だったのかな?ジャケットはロング丈、カーディガンもひざ下、ネクタイも股間に迫る長さで、パンツは厚底ブーツの上でたっぷりクッション。タンクトップやノースリーブのフーディもロング丈です。きっと若い世代は上手にレイヤードしたり、コレ一着をワンピースのように楽しんだりするんだろうなぁと素直な気持ちで楽しめました。ワンショルダーのエプロンドレスや、同じくラペルを模したストラップを肩にかけるタイプのジャケット、左右で太さが全然違うデニムパンツなど、アシンメトリーなアイテムは、一度解体して新たな形を追い求めるブランドのらしさを醸し出しています。いろんなアイテムの背面にあしらった、長めのドローコードが電車のドアなどに挟まれたり、引っかかったりしないように注意!です(笑)。

「エンポリオ アルマーニ」

木村:エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」の会場には、グローバルボーイズグループ・INIの池﨑理人さん、田島将吾さん、西洸人さんが来場しました。ビジューが施された透け感のあるブラウスやスーツを着こなした彼らはバックステージで「袖を通すと自信がみなぎるようです」とコメント。ショーは天井から降りてきたポールが床に波紋を描いてスタートしました。軽やかな透け素材のブルゾンやワンピースが多く登場しました。にこやかな表情でゆっくりと歩くモデルのウォーキングからもリラックスしたリゾートムードが漂います。玉虫色のパンツやジャケット、そして最後はベアトップやシフォンスカートにあしらったスパンコールがクラクラするほどのまばゆい光を放っていました。

村上:ファーストルックは、大ぶりのオーナメントがついたブラトップに、ジャケット&パンツ。チューブトップのミニドレスや抜き襟でクロップド丈のブルゾン、編み込んだロープのサンダルなど、序盤は落ち着いたカラーパレットながら若々しさもあって、良いスタートでした。ブルゾンやジャンプスーツ、葉っぱのモチーフをあしらったチャイナ服などはオーガンジーで作って、トレンドもしっかりプラス。シルクにライムグリーンをのせたショートパンツを基軸とするマリンルックも可愛かったです。でも、終盤はちょっと盛り込みすぎだった印象がありますね。フューシャピンクとパープルという強い色同士の掛け合わせにホルターネックのビジュー付きトップスと幾重ものネックレス、仕上げのターバンのスタイルで、ミニマルでフレッシュだった序盤のパートを忘れかけてしまいました。“クワイエット・ラグジュアリー”は、終始徹した方が、良い印象を持ち帰ることができるのかも。そんな気がします。

「モスキーノ」

木村:ジェレミー・スコットが退任した「モスキーノ(MOSCHINO)」はいかがでしたか?

村上:ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)が去り後任が待たれる中、設立40周年を記念して、ケイティ・グランド(Katie Grand)やガブリエラ・カレファ・ジョンソン(Gabriella Karefa-Johnson)ら著名スタイリスト4人が創業者フランコ・モスキーノ(Franco Moschino)の作品から着想を得たコレクションを作りました。マスキュリンなテーラード、Tシャツとフリフリスカートのミックス、メッセージとシャツにパニエとサイハイブーツ、そして裸の体を描いたタイツ。改めて創業デザイナーのアイコンを振り返る良い機会だったと思います。

「GCDS」

木村:ジュリアーノ・カルツァ(Giuliano Calza)が手掛ける「GCDS」は、前回の“ホーム“というテーマを継続し、故郷のナポリの街を思い描いて製作したそうです。ファーストルックはラフィア素材のホットパンツと、ホワイトのカーディガンの組み合わせ。ホットパンツはよく見ると「GCDS」のアルファベットが散りばめられています。ローライズのジーンズを2枚履きしたようなパンツに、クロップド丈のトップスの合わせは力の抜けたY2Kスタイル。全体的にいつもの煌びやかなパーティールックは控えめで、後半にかけてはショートパンツとタンクトップといったパジャマスタイルも登場しました。デニムのショートパンツにラガーシャツを合わせたメンズモデルの足元はラメ入りのシースルーソックスとバレエシューズの合わせ。コーディネートのどこかにフェミニンな要素を掛け合わせるバランス感がとってもキュートでした。

「トム フォード」

木村:2日目のトリは今回の目玉の一つ、ピーター・ホーキンス(Peter Hawkings)による「トム フォード(TOM FORD)」でした。トム・フォードの美学を完璧に再現したコレクションで、「トム フォード」を引き継ぎ発展させていくぞ、というホーキンスの強い意志が感じられました。コレクション・リポートはこちらから。

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