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資生堂が日本事業を改革 「前例踏襲の文化が邪魔している」

資生堂が大規模な日本事業の構造改革に乗り出す。23年からスタートした中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」では、25年に日本事業で500億円を超えるコア営業利益の実現を目指している。藤原憲太郎社長COOは現職の着任から6カ月を経て、「日本が決して成長市場ではないこと、その中で他社からシェアを奪いながら成長する必要があること、そのためにはより市場のニーズや消費者の動向に敏感となり、すばやく対応できる体制が必要だ。コロナの影響は、ある意味良い転換点であった。現状に対する危機感や変革への期待、成長への情熱を持つ社員が多くいることがわかった。一方で、組織における過去のしがらみや前例踏襲の文化が邪魔をし、市場変化の対応が遅くなっている」と指摘する。

「われわれは価値創造を積み重ねながらイノベーションを起こしてきた。勝てる組織をつくることが大切であり、今変わらなければ日本事業の存在意義すら危ぶまれる。日本事業のビジネスモデルを再設計し、既存のルールを解き放つことが重要だ」と、日本事業にメスを入れる。そこで、「改革は自分でやるしかない」と藤原社長COO自らが主導すべく、9月1日付で資生堂ジャパンの代表取締役会長を兼任する。直川紀夫常務兼資生堂ジャパン社長兼CEOは続投し、藤原社長COOとともに二人三脚で経営体制を強化する。

改革実現のために、「Profitable Growth(収益性の高い成長)への事業構造転換」「固定費の合理化」「組織風土改革」の3つの柱を掲げる。

「Profitable Growthへの事業構造転換」では、消費者起点のビジネスモデルとして、「シセイドウ(SHISEIDO)」「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」などのプレステージブランドで戦略的な値上げや高い付加価値を価格に転嫁。新商品で顧客接点の拡大を図る。「エリクシール(ELIXIR)」「マキアージュ(MAQUILLAGE)」などのプレミアムブランドでは、セルフ販売の能力を強化。消費者購買行動を軸としたデータドリブンで効率性を追求する。ECは売り上げ比率を22年の10%台後半から25年までに30%へと伸ばす。100年続いた制度品ビジネスでは、商品を進化させ、顧客価値を最大化する。

「固定費の合理化」では、販促物の輸送オペレーションを改善しシンプル化を目指す。ITシステムやデータ分析は内製化し、外部委託費を削減。すでに営業オフィスを半減させているが、さらにオフィスの再編や直営店の見直しを図り、リース費用の削減にも取り組む。

店頭人材においては「適正に配置ができていない」と述べ、接客時間の最大化を図るべく、店頭人材配置の適正化を推進する。デジタルを活用しながらエンゲージメントを高め、将来的に人材の価値を高める仕組みを構築する。

加えて生産性の向上を目指し、現行の早期退職制度の活用するものの、藤原社長COOは「抜本的にリストラをすることは考えていない」と言及する。

「組織風土改革」においては“タブーを排除”し、自己革新が起きる組織風土を目指す。スピーディな商品開発を見据え、「トップダウンの意思決定が必須」と経営体制を強化。スピード感のある消費者起点の商品展開やブランドとR&Dのコミュニケーションを強化すべく、岡部義昭 資生堂 常務チーフイノベーションオフィサー チーフブランドイノベーションオフィサーを、副社長チーフマーケティング&イノベーション オフィサー チーフブランドイノベーションオフィサー チーフブランドオフィサー ブランドSHISEIDOに昇格する。

また、社員の満足度を最大化するチーフピープルオフィサー職を設ける。すでに適任者を固めており、後日発表する予定だ。「リスクを恐れない挑戦ができる組織風土」を目指し、24年1月から次世代リーダーの積極登用と育成も強化する。

藤原社長COOは、「(これら推進することで)新しいポジティブサイクルになるだろう。『自己革新こそが永続的な発展を作る』という考えをもとに、飛躍のための改革をやりきる」と意欲を燃やす。

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