ビューティ

“サロパ 2022”を振り返り 今年売れたブランドは?【香水ジャーナリスト連載 Vol.3】

 今年で10回目を迎えた日本最大級の香りの祭典「サロン ド パルファン 2022(SALON DE PARFUM 2022)」が10月19〜24日、伊勢丹新宿本店で開催された。今年は44ブランドが出展し、6日間の会期中、多くの来場者が訪れた。同期間の商況(メンズ館を除いた本館催物場の売り上げ)とそこから見えたトレンドを振り返る。

 今年はコロナ禍での入国制限が緩和され、海外在住の調香師やブランドのファウンダーが相次いで来日した。「ル クヴォン メゾン ド パルファム(LE COUVENT MAISON DE PARFUM)」を手掛ける世界的調香師、ジャン=クロード・エレナ(Jean-Claude Ellena)のセミナーは募集開始から数分でウェブチケットが完売するほど人気で、当日は立ち見客も会場にあふれた。今回が初上陸となる「メゾン クリヴェリ(MAISON CRIVELI)」のティボー・クリヴェリ(Thibaud Crivelli)=ファウンダーや、英国発「ブーディカ ザ ヴィクトリアス(BOADICEA THE VICTORIOUS)」のデヴィット・クリスプ(David Crisp)CEO、ジャパンブランド「サノマ(CANOMA)」のジャン=ミッシェル・デュリエ(Jean-Michel Duriez)調香師といった来日ゲストの登場は会場を大いに盛り上げた。トークショーやカウンセリングに参加した来場者からは「非常に満足度が高かった」との声も多く聞かれた。

過去最高の売り上げを記録、売れ筋はミニサイズセット

 今年の客層は例年と比べて若年層が増加。幅広い世代でジェンダーを問わず集客があり、香水マニアから初心者まで心をつかむ商品ラインナップが充実していた。入月雅子=伊勢丹三越 第2MDグループ 新宿化粧品商品部 バイヤーによると、今年は昨年より会期が1日少ない中、売り上げは前年の期間中と比べ約50%増と過去最大の売り上げを記録。「今年から導入した、イベント初日の“エムアイカード顧客・三越伊勢丹アプリ顧客”のみが入場できるサービスは、じっくりと香りのカウンセリングや商品説明を受けられたため満足度が高まり、最も大きな結果を生んだ」という。売り上げ上位のブランドは、「ゲラン(GUERLAIN)」「パルファン サトリ(PARFUM SATORI)」「ブーディカ ザ ヴィクトリアス」「フエギア 1833(FUEGUIA 1833)」「メゾン クリヴェリ」(順不同)だった。老舗の人気ブランド以外に希少性の高い香りを展開するブランド、日本初上陸ブランド、イベント限定出展ブランドなどが話題の中心となった。

 昨年同様、ディスカバリーセットやトライアルセット、ミニサイズセットへの需要は高かった。特に新客は「小さいサイズで試してからフルサイズを購入したい」という要望が高く、「キリアン(KILIAN PARIS)」や「ペンハリガン(PENHALIGON’S)」のディスカバリーセットは早々に完売した。こうしたミニサイズセットは、客単価は低下するがブランドの世界観や複数の香りを知ってもらうことができるため、将来的にポジティブだと考えるブランドも多い。

ジャパンブランドは過去最多の8ブランドが出展

 今年はジャパンブランドの出展数が過去最大の8ブランドとなった。オーダーメイド香水ブランド「リベルタパフューム(LIBERTA PERFUME)」や「エディット(EDIT(H))」は売り上げが昨年を上回った。「リベルタパフューム」を手掛ける山根大輝ヤマネコ代表や「エディット」のPR担当は、「SNSでのフォロワーや投稿数もイベント中から急増。確かな手ごたえを感じた」と話した。「リベルタパフューム」の新作フレグランス“コロンコンサントレ ギンジョ”や“コロンコンサントレ チャバ”は、オーデコロンのようなみずみずしい透明感と、パフュームとしての複雑さや多面的な要素を持ち、かつ手に取りやすい価格帯を実現したことから売れ行きが良かった。

 「ミヤ シンマ パリ(MIYA SHINMA PARIS)」のブースは、京都の高級フレグランス専門店「ル シヤージュ(LE SILLAGE)」の米倉新平オーナーがカウンセリングと接客を担当し、深い香水知識によるコンサルテーションで盛り上がりを見せた。今回、初出展したジャパンブランド「コウシ(KOHSHI)」は、同イベントでしか販売しない限定商品が完売となった。限定品以外に50種のフレグランスを販売し、圧倒的な香りの種類とクオリティーの高さ、調香師たちの接客による香りの説明の分かりやすさが奏功した。

情報通の来場者量が増え、接客ニーズも高まる傾向

 「キャロン(CARON)」や「ザ ディファレント カンパニー(THE DIFFERENT COMPANY)」「エラケイ(ELLA K)」「ソンボン(100BON)」などを輸入・販売するフォルテの南野眞由子マーケティング・PRマネージャーは、「香りを体験したい、販売スタッフから話を聞きたい」という来場者の熱意に圧倒されたという。「コロナ禍以降、ECでのムエット(試香紙)送付やミニキット導入などお客さまとの接点づくりに取り組んできたが、熟練した販売スタッフによる香りのコンサルテーションの重要性を改めて感じた」と話した。フォルテが出展した4ブランド売り上げの売り上げは、合計で昨年対比24%増と好調だった。「昨年も『キャロン』のリニューアルローンチがあり好調だったが、今年は特に『エラケイ』が同400%増と急成長。数量限定で販売したレザーシリーズは、専門家からの評価の高さからSNSで注目の香りと拡散され予約が急増。会期中にシリーズ3種とも完売した」と語った。

 「リキッドイマジネ―ル(LIQUIDES IMAGINAIRES)」や「カリーヌ ロワトフェルド(CARINE ROITFELD)」の販売代理店を務める白石謙アールオー(ART EAU)=ディレクター・フレグランスキュレーターは、「お客さまの香水に対する情報量に驚かされた。既にそのブランドの香水を複数本持っている場合が多く、割高でも小さいサイズやトラベルセットが好まれた」と述べた。「リキッドイマジネ―ル」の売り上げは、前回出展した19年対比で約100%増とブランドの認知度の高まりが感じられたという。

 「フエギア 1833」の担当者も今年の印象を、「オンライン上でブランドを知り、普段はECで購入している顧客の来店が多く見られた。実店舗を未体験の顧客へのアプローチと、在庫体制の強化が来年の課題となった」と振り返った。新作の先行発売となった「ミラー ハリス(MILLER HARRIS)」の ”ミリカミューズ オーデパルファム”は、アペリティフ(食前酒)をモチーフにしたレッドベリー系のフルーティーフローラルムスクの甘酸っぱい華やかな香りと、マットな質感のレッドカラーのボトルデザインが人気となり新たな客層を獲得した。

 コロナ禍を経て、世界的にフレグランス市場は拡大している。10回目を迎えた「サロン ド パルファン2022」においてもそうした需要の拡大が感じられた。一方で課題点もあり、ムエットコレクターやリサーチャーが増え購入に至らないケースがあったとの声がブランドから聞かれた。人気イベントとなったことで多くの接客を少ないスタッフが対応しなければならず、香水の基本的知識に加えブランドや香りについて熟知しているスタッフ確保の必要性と難しさも感じさせた。また、カウンセリングと購入のみの待機列が一緒だったため、スムーズな誘導を希望する声も多かった。待機列が長かった「パルファン サトリ」では、大沢さとり調香師が自らムエットを配布して整列をフォローし、SNSでは「好感が持てた」との声も広がった。SNS上の消費者同士の情報共有や拡散は、大きな盛り上がりを見せるようになった。年内には全国の三越伊勢丹グループ(東京都以外)店舗で順次開催される。全国規模に成長した同イベントの今後に期待が高まるばかりだ。


YUKIRIN
美容・香水ジャーナリスト
香水・香り関連商品と、ナチュラル&オーガニック美容分野に特化した記事を執筆。女性誌などのメディアで発信する。化粧品や香り製品のコンサルティングやイベントプロデュースなど幅広く活躍。「日本フレグランス大賞」エキスパート審査員、「イセタン フレグランス アワード2019」審査員などを務める

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