「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」をビジョンに掲げるマクアケ。2020年12月からビームスと業務提携しており、これまでさまざまな取り組みを実施してきた。坊垣佳奈マクアケ取締役と山﨑元ビームス上席執行役員の対談を通じ、両者がタッグを組んだ理由と、その先にある新しいモノづくりのあり方を探る。
PROFILE:総合商社・外資ブランドを経て、2018年にビームスに参画。上席執行役員・経営企画室長として、経営企画全般の他、CSV戦略、グローバル戦略、新規事業開発、ローカル戦略などを担う。21年よりビーアット取締役
坊垣佳奈(ぼうがき・かな) マクアケ共同創業者取締役
PROFILE:同志社大学卒業後、2006年にサイバーエージェントに入社。サイバー・バズの他ゲーム子会社2社を経て、13年マクアケの立ち上げに共同創業者・取締役として参画
マクアケ×ビームスによる「ストーリーのあるモノづくり」
坊垣佳奈マクアケ取締役(以下、坊垣):マクアケとの提携の狙いについて、改めて教えてほしい。
山﨑元ビームス上席執行役員(以下、山﨑):現場の若手社員たちが、新しいモノやサービスのアイデアに挑戦できる場所が必要だと思ったから。ビームスは世界中からいいモノを探してきて、それをビームス流のこだわりでとがらせて、ビームスが持つネットワークで広げていく、「さがす・とがる・ひろがる」を強みにしている。いわゆる、プロダクトアウトの考え方で成長を遂げてきた。ビームスには30ほどのレーベルがあり、各レーベルのディレクターらが店舗に並べる商品や見せ方について細部まで、美学を行き渡らせている。
だが、それがビームスの強みでもある反面、若手が新しいことに挑戦する際の高いハードルにもなっていた。生活者のニーズが多様化する中、30人ほどのディレクターらの感度だけではどうしても対応できない部分もある。もっと多くの社員が新しいモノやサービスを生み出せる会社にしていきたい、と思っていたところ、現場の若手社員たちから「『Makuake』を活用してみたい」という声が上がってきた。
坊垣:一人一人の生活者が多様な趣味嗜好を持つようになり、企業は細かくターゲティングし、趣味嗜好に合うものを提供することが必要になった。時代の変化とともに、企業のマーケティング活動における「Makuake」の活用ニーズが高まっているのも感じる。
山﨑:会社として若手社員たちが持っている感性やアイデアも大事にしたい。会社やレーベルの看板は関係なく、新しいことに挑戦できる場として「Makuake」はすごくいいと思った。「Makuake」を起点に、新しい取り組みが生まれている。
坊垣:その最たる例が、新商品企画をビームス社内で公募するプロジェクト「マクアケグランプリ」。想像以上に多くの応募があった。
山﨑:「マクアケグランプリ」は、「Makuake」においてテストマーケティングや新しいファンとの接点の創出を通して、今までとは異なるモノづくりに挑戦できたらと思って始めた企画。実際に始めてみると、若手社員などから合計30組ほどの応募があり、とても驚いた。
坊垣:「新しい発想で、新しいものを生み出したい」という思いがビームス側にあったので、弊社も若手社員を審査員に入れて、審査をさせてもらった。審査をしていて、“ビームスらしい”と感じたのが洋服のアイデアだけでなく、ビールなどのアイデアも生まれていること。まさにカルチャーをつくっている会社だと感じた。
山﨑:最終的に数多くの企画の中から、子どもが自分で服を作れる「知育玩具 ふくパズル」、ビールが苦手な方でも楽しめる「HARAJUKU CITY IPA」、そして沖縄とキューバの伝統を掛け合わせたウエア「ミンサーGUAYABERA」など上位6組のプロジェクトを「Makuake」でスタートさせた。
坊垣:「マクアケグランプリ」はテストマーケティングの側面が強いが、ビームスでは、作り手のストーリーに共感してもらいながら「受注生産」という形で販売する場としても「Makuake」でプロジェクトを実施している。そこに対する考え方、取り組みについても聞きたい。
山﨑:ビームスは衣料廃棄ゼロを目指す中で、経年によって提供できなくなったデッドストック品を新たな商品へとアップサイクルさせるプロジェクトとして「ReBEAMS(リ・ビームス)」を立ち上げた。
その商品の販売先として「Makuake」を選んだのは、開発の裏側にあるストーリーをしっかり伝えられると思ったからだ。深くストーリーを書くことで、私たちの考えが生活者に伝わり、結果的に応援してもらえる。
坊垣:説明を簡潔にし、いかに効率よく買えるようにするか。これは既存のECサイトなどにある購買体験だ。それはそれで価値があると思うが、買い物にはセレンディピティ(偶然の出合い)も必要だと思っている。実はこれが欲しかった、実はこういうものが好きだった、という新たな気付きを提供できたらと思っている。
そういう体験を楽しんでもらいながら、ブランドのこだわりや商品の本質的な価値が伝わっていけば、より良い世の中になっていくと信じている。最後にビームスが今後取り組んでいきたいことがあれば教えてほしい。
山﨑:今以上にローカルに力を入れたいと思っている。新しいモノやサービスが地方から自発的に生まれ、それが花開いていく状態をつくりたい。マクアケとはローカル共創プログラムを中国地方から始めているが、今後いろいろな地域でやっていきたい。マクアケと一緒に面白いことを仕掛けていければと思っている。
SYNERGY
1 若手社員のアイデアを生かす場として「Makuake」を活用
2 作り手の思いへの「共感」が購入につながる
3 ローカル発信の新しいモノやサービスをバックアップ