ファッション

WWDJAPAN サステナビリティ・ディレクター養成  悩み深くも夢がある参加18人の実行宣言

 「WWDJAPAN」は「サステナビリティ・ディレクター養成」講座を2021年9月から12月まで全9回で実施した。リアル参加の18人は素材知識から循環型デザインの未来、社内への情報共有方法などに関するセミナーを受講した上でワークショップに参加。参加企業はSPA、OEM、専門商社、合繊メーカー、インポーター、セレクトショップ、ラグジュアリー、スポーツ、PR、非営利組織、美容室、デベロッパーなど多岐にわたり、それぞれに悩みを抱えつつ議論を重ねた。最終回には、各人が「循環型ファッションに向けた2022年の実行プラン」を発表。宣言内容からは垣根を越えて取り組むべき課題や希望が浮かび上がった。中でもポイントはこの4つだ。

① まず必要なのは社内の体制作りと啓蒙活動

 サステナビリティ担当に任命された人がまず悩むのが社内の啓蒙活動だ。「あの人は関心がありそうだから」と属人的に任されるケースも多いがそれでは波及と継続は難しい。重要なのは決定権ある立場の人が担当となる組織作りだ。

【悩み&宣言】

・今年はサステナビリティ推進担当部署を設立する(専門商社)

・全員がサステナビリティを自分事として捉え、全部署が目標にサステナビリティ関連を入れて実行できるようになる(セレクトショップ)

・推進に取り組む部署の活動をマネジメント含め社内公示し、社内協力を得やすくする(ラグジュアリー)

・講座に参加した自分と社のほかのメンバーとの知識量の差の広がりを懸念。専門部署はあるが数値目標がない(合繊メーカー)

・社内が一番課題。そもそも「なぜ、アパレルがサステナビリティを推進しなければならないのか」の啓蒙活動を行う(SPA)

・2022年はサステナ元年。意識向上と参加意識を高めるため貢献と指標を数値化(ラグジュアリー)

・デベロッパーとしてアパレルの課題を認識。商業施設づくりに携わる各部署が共通意識を持てるよう研修を実施(商業施設)

・取引先ブランドのデザイナーにSDGs に対する考えを問い、自分の考えも伝える。新しいラグジュアリーファッションの在り方を見つめる(インポーター)

② 外資日本法人の課題は環境負荷計測と再エネ導入

 外資ラグジュアリーの多くは、本社主導でサステナビリティ戦略が進んでおり「販社のジャパン社がすべきことは?」が共通課題。まずは日本事業の環境負荷の現状を把握。そして、本社・店舗の再エネへの切り替えだ。

【悩み&宣言】

・日本事業全体の環境負荷のアセスメントを初めて実施。ロードマップ(2050 年カーボンニュートラル)達成を目指してアクションプランロードマップを作成し実行する(ラグジュアリー)

・現状把握しているスコープ1~2における、CO₂削減目標値の設定とロードマップの策定(SPA)

・直営店は使用電力を100%再生可能エネルギーに切り替え済み。百貨店に切り替えリクエストを続ける(ラグジュアリー)

・使用総量の削減に努める(ラグジュアリー)

・自社倉庫近くにソーラーシェアリングを検討(セレクト)

③ 長期セールを見直し売り上げ至上主義から脱却

 特に小売業から多く挙がったのがセールの慣習の見直しだ。すなわち売り上げ至上主義や作り過ぎ問題からの脱却、販売員の働き方改革というアパレルの根本かつ緊急課題につながる。ブランド間や商業施設との連携がマスト。

【悩み&宣言】

・常々違和感があったが業界全体が賛同しルールを守る座組みが必要(インポーター)

・特に夏季は本番に夏物が店頭にないくらい開始時期が早い。とはいえ、自社だけセールを中止しても売り上げが取れず、出店区画が不利に。セールで売り上げを取るための過剰生産は過剰な値引きにつながり、消費者は値引きで買うことが当たり前。負のスパイラルから抜けるために官民一体で改善を!(セレクトショップ)

④未来を見据える循環型商品・プラットフォームの開発

 ファッションビジネスは直線のリニア型から循環型へ。それは一社では完結せず、企業や業界の枠を超えたつながりが欠かせない。とは言え同じ業界でも隣のことは案外知らないもの。ワークショップではその場でつながりが生まれることもあり、対話の重要さを痛感した。

【悩み&宣言】

・物作りに頼らないビジネスを展開。廃棄予定の服をアップサイクルして販売するプロジェクト(OEM)

・リセールやアップサイクルを通じた循環型事業に着手し、「無駄を出さない」ビジネスモデルを確立(SPA)

・環境配慮型商品に加えて、循環型商品・プラットフォームの販売推進(専門商社)

・引っ越し業者との業務提携。引っ越しの前後に大量に出る処分対象の衣類や家具を一般ごみではなく回収につなげる仕組み(SPA)

・造作物のごみ削減と循環。建築廃棄物のリサイクル(ラグジュアリー)

・受注⽣産への切り替え。素材に在庫リスクをはり、 QRにより最適量の⽣産へ(SPA)

課題は進化の種

 ワークショップでは上記以外にもたくさんのアイデアや宣言が飛び出した。これから取り組む企業の担当者はぜひ参考にしてほしい。アイデアの共有を惜しまないのがサステナビリティ・シフトを加速させるポイントだ。

【悩み&宣言】

・JSFA(ジャパン・サステナブル・ファッション・アライアンス)をはじめ国内の業界団体への加盟(専門商社)

・国内輸送において貨物利用を拡大してエネルギー使用を抑える(ラグジュアリー)

・環境負荷が少ない新素材の開発と採用(SPA)

・使用サーバー容量の削減を目指す(ラグジュアリー)

・デベロッパーとテナントの関係性のアップデート。 “売り上げ”以外のKPI設定(デベロッパー)

・理美容室をプラットフォームとしたドライヤーレス推進でCO2削減(美容室)

・SDGs体験の場を通じた商業施設のコミュニティーセンター化(小売り)

・商品を販売することで得た利益の一部を地球環境、そして社会へドネーション(PR)

・梱包に用いる未使用プラスチックの削減。再利用または全て再生可能に(ラグジュアリー)

・認証取得の推進(SPA)

・生物多様性保護につながる国際認証取得(ラグジュアリー)

業界から行政へのリクエスト

 サステナビリティ・シフトには民間と行政のタッグが欠かせない。そこでワークショップのラスト2回には、オブザーバーとして環境省、経済産業省の責任者を招き、本音で意見を交わした。下記は受講者から行政への質問やリクエスト。行政は「業界からの意見やアイデアを待っている」という。

・衣料品の環境配慮について、小・中学校の義務教育内にカリキュラム設定

・認知と導入が進んだFSC認証の(海外調達の)木材等建築資材は、需要の高まりもあり枯渇気味で原材料が高騰。 国内でFSC認証の資材調達が可能になるよう、国内森林(間伐材など)を有効活用し認証を与えることができないか。

・プラスチック代替の梱包製品の導入をクリーニング業界と連携

・サステナビリティに取り組んだら「助成金が出る」「減税になる」など、「取り組んだ方が得」と経営層に思わせる、説得のためのインセンティブ

・認証取得の支援。手続きや作業面や税制優遇など

・副業⽀援や派遣先企業への助成など、企業が外部の知⾒を取り⼊れやすい環境づくり

・循環型都市のネットワーク強化。都市の代表者とともに都市のリサイクルの可能性を分析・評価する試み

・CO₂排出量の算出サポート。環境負荷を可視化する業界共通のツール開発とその発信

・リサイクル/リユースに貢献できるリペア職人などの育成のサポート

・衣料リサイクル、回収促進のための法整備・仕組みづくり

・循環型商品、低環境負荷商品の消費推進となる仕組み(低減税率適用やエコカー補助金のようなもの)

・環境負荷の低い商品の輸入関税率緩和

・競合他社で連携してセールを適正な時期に遅らせるだけでは、消費者のマインドセットはできない。政府からの働きかけによりオープンセールの解禁日を設けるなど、官民一体で業界カレンダーの設定と消費者の啓蒙を

「サステナビリティ・ディレクター養成」講座(2021年9月から12月実施) 企画ページはこちら

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