スニーカーにまつわる噂話のあれやこれやを本明社長に聞く連載。スニーカー業界ではこのごろ、「スニーカーブームは終わった!?」という会話が飛び交っている。本明社長もそんな雰囲気はヒシヒシと感じているよう。社長いわく、売れないときにこそ売れる“あのモデル”が今人気らしい。まぁ長い歴史を振り返れば、これまでも山あり谷あり、たとえ冬の時代を迎えても何度も息を吹き返してきたスニーカー業界。2022年はどんな年になる?(この記事はWWDジャパン2021年12月20・27日号からの抜粋です)
――2022年はどんなスニーカーが売れると思いますか?
本明秀文社長(以下、本明):最近はどんどんスニーカー業界の景気が悪くなっている。そういうときは決まって“白白(オールホワイト)”の“エア フォース1(AIR FORCE 1)”が売れるんだ。ワントーンで1足持っておけば何にでも合わせられるからね。アロケーション(配分)だから「アトモス(ATMOS)」には一度に200〜400足、少しずつ入荷するんだけど、11月頃から入荷するたびに、1日で全部売り切れるようになった。25年以上スニーカーの商売をしてきて、このパターンは今回で4回目。これまでも白白の“エア フォース1”ブームが来たときは、スニーカーが売れなかったときだね。
――これまで売れなかったときはいつですか?
本明:1回目は1998〜99年にかけて、“エア マックス95(AIR MAX 95)”が起こしたハイテクスニーカーブームが終わったとき。日本企画の“裏ダンク”(通常の配色を反転させたダンクの通称)が発売されたころだけど、そのすぐ後から「ナイキ(NIKE)」のショップ別注が始まって、「アトモス」でも2001年に“エア フォース1”と“ダンク(DUNK)”(共にグレー×ネイビーのモデル)の別注モデルを発売した。ストリートのパワーが大きくなったタイミングだったと思うんだけど、その01〜02年ごろにスニーカー業界でドメスティック(日本国内で生まれたブランド)ブームが起きた。これが2回目。「ビズビム」や「タス」が立ち上がったり、「ベイプ」が“エア フォース1”にインスパイアされた“ベイプスタ(BAPE STA)”を出して、代官山に「フットソルジャー(『ベイプ』のスニーカー専門店)」をオープンしたり。僕も「マッドフット(MAD FOOT)」に出資していたし、自社ブランドとして「ユービック(UBIQ)」も始めた。その頃は本当にドメスティックスニーカーならなんでも売れていたんだけど、逆にスポーツブランドは苦戦して景気自体はあまり良くなかった。3回目が11〜12年で、リーマンショックの影響があった最後のころかな。
――ドメスティックブームのころは白白の“エア フォース1”が常に売り切れていて、全然手に入らなかったのを覚えています。
本明:当時は今より数も少なかったしね。景気が悪いときはほかにも「ニューバランス(NEW BALANCE)」のグレーかブラックが売れる。それもやっぱりベーシックじゃないと売れない。今、女の子の間で売れているのが1万円以下のスニーカーなんだけど、「ナイキ」も最近値上げしたし、「アディダス(ADIDAS)」もこれから値上げする。来年は市況がますます厳しくなると予想しているよ。ファッションでもミニスカートが増えてきたのは、景気が悪くなった証拠だと思う。やっぱり生地を使わない分、安く作れるからね。最近は、僕のところにも不調なファッションブランドを会社ごと買って欲しいという相談がよく来るんだけど、条件も悲惨で、会社は1円で譲渡、在庫は上代の10分の1で買い取りみたいな感じ。ファッション業界全体が良くない。
――なるほど。どこかにビジネスチャンスはあるんでしょうか?
本明:今はデジタルで売らないと売り上げが取れない。勝ち組は「ペイペイモール」だよね。「ZOZOTOWN」が出店してからうちも参加しているけど、週末ごとのポイント還元キャンペーンがすさまじくて、1日の売り上げが2倍になる。あとはベビー・キッズ用品かな。みんな自分のものは買わなくなったけど、子どもには変わらずお金をかけている。キッズシューズはプレゼント用にも売れるし、根強いコレクターもいるよ。とにかく、白白の“エア フォース1”は景気に一番敏感なスニーカーだから動きを常にチェックしている。来年もいっそう気を引き締めて商売しないとね。