スニーカーにまつわる噂話のあれやこれやを本明社長に聞く連載。“スニーカーカルチャーは原宿で生まれた”のは有名な話だが、その原宿のある渋谷区には、世界的なスニーカーショップがいくつもある。都市に限ったことかと思いきやそうでもなく、世界同時ブームが起こるのがスニーカーの面白いところ。東京でも地方でも同じスニーカーを履いている。最近、イベントで地方店を巡ることが多くなった本明社長が、次に考えていることとは?(この記事はWWDジャパン2021年11月22日号からの抜粋です)
本明秀文社長(以下、本明):先日、渋谷未来デザインが主催する「ソーシャルイノベーションウィーク渋谷2021」に参加した。「メルカリ」のタモさん(田面木宏尚メルカリジャパンCEO)と「#FR2」の涼君(石川涼せーの社長)、「スニダン」の内山君(内山雄太SODA社長)、(寺門)ジモンさん、DJのLicaxxx、うちの小島(奉文「アトモス」ディレクター)をゲストに、スニーカートークをライブ配信したんだ。このイベントは、渋谷区がサポートする産官学民のプログラムなんだよ。
――なぜ、渋谷区とスニーカーなんですか?
本明:渋谷区民のふるさと納税による税金の控除や還付の対象は、毎年数十億円にのぼるらしい。本当はその分を渋谷区にも使って欲しいけど、渋谷区には農業、林業、漁業みたいな第一次産業がない。だけどファッションは世界に誇れるものがある。(渋谷区明治神宮前の)原宿エリアは日本で一番スニーカーショップが密集していて、世界で一番いろんなハイプスニーカーが見られる場所でもある。そんな経緯で、スニーカーがテーマのトークショーを開催することになった。
――なるほど。相性はいいですね。
本明:僕がビジネスでうまくいった一番大きな理由は、原宿で店を開いたからだと思う。
――世界的なファッション都市だから、ですか?
本明:そう。僕の実家は八王子だから、商売を始めようと思ったときは(原宿より近い)高円寺も選択肢にあった。当時はフリマが面白くて、若者はみんな原宿か高円寺に行っていたからね。僕も高円寺によく行っていたし、どっちに店を構えようか悩んでいたんだけど、原宿にあった不動産屋が「森山不動産」って名前だった。それがうちの嫁さんの旧姓と同じだから、ここがいいなと思って。そこで紹介してもらったのが、最初に「チャプター(CHAPTER、アトモスの前身の店)」を構えたジャンクヤードだった。もしもそれが高円寺だったら、今の僕はいないと思うよ。
――確かに、原宿は聞いたことがあっても、高円寺は聞いたことがないという人は意外に多いかも知れません。
本明:だから、僕は“原宿”や“渋谷”っていうのが世界に広げていくための大事なワードなんだと思う。僕は将来的に、スニーカーイベントを地方でも開催したい。ただ「アトモスコン」(ATMOSCON、アトモス主催のスニーカーコンベンション)は、メーカーの最新作をお披露目する超都市型イベントだから、地方で開催するのはなかなか難しい。それにアトモス主催だから競合やリセールショップがNGという制約もある。でも渋谷区主催ならそういった人たちにも声を掛けられるかもしれない。渋谷でスニーカーイベントを開いて、そのコンセプトのままゆくゆくはスニーカーカルチャーの盛り上がりや魅力を地方にも持っていきたい。
――ファッション業界が地方の行政と取り組むと、地方の良いものを東京に持ってきて売るパターンが多いですけど、渋谷のコンセプトを地方に持っていくのは新しいです。ファッションでいうと、原宿と地方都市では売れるものも違うし、流行も違います。でもスニーカーは北海道から沖縄まで、タイムリーで同じものがはやるので成立しそう。
本明:スニーカーなら全国どこでもできると思う。最近は毎週末「アトモス」のイベントで地方店を巡業しているけど、むしろ地方の方がスニーカーへの情熱はすごいかもね。うまくいけば、各地域でスニーカーコミュニティができるかも知れない。
――スニーカーで町おこしですね。