ビジネス

循環型ビジネス実現のためアダストリアが子会社設立 環境負荷を“見える化”する新ブランド

 アダストリアは、ファッションにおける循環型ビジネスを目指すため、2020年11月に100%子会社のアドアーリンクを設立した。アドアーリンクの事業第1弾として、EC専業ブランド「オー・ゼロ・ユー(O0U)」を立ち上げ、3月31日から自社サイトで販売する。アダストリア本体もサステナブル経営を掲げているが、規模の大きさゆえスピード感を伴った決断や新規取り組みなどは難しい部分もある。「アドアーリンクが循環型ビジネス実現のための前衛的な挑戦を担い、スピーディーに具現化していく」と、杉田篤アドアーリンク社長は話す。

 「オー・ゼロ・ユー」では、環境に配慮した天然繊維や再生繊維を選ぶという素材のアプローチ、長く着られる汎用性の高いデザインという企画アプローチ、3DCGモデリング活用によるサンプル削減・完全受注生産の実現といったアプローチなどでサステナビリティを追求する。サステナビリティをうたうブランドは既に業界内に多いが、アドアーリンクではそこから一歩踏み込み、サステナビリティの“見える化”に取り組む。

 具体的には、アパレルの世界的な業界団体であるサステナブル・アパレル連合(SAC)に加盟し、SACが開発した環境社会負荷の測定ツール「ヒグ・インデックス(HIGG INDEX)」を活用する。まずは、素材を対象とした同インデックスのデータベース(MSI=Material Sustainability Index)を使用し、環境スコアを算出して全商品で提示する。「環境に優しいとただ打ち出すのではなく、それを数値化して伝えていく」(杉田社長)のが狙い。SACに加盟している日本企業は、アドアーリンク以外ではファーストリテイリング、東レ、帝人、アシックスなど。

 各商品で二酸化炭素排出量と水使用量をどれだけ削減できたかを、分かりやすいマークで示す。また、温暖化、水不足、資源枯渇、水質汚染の4領域に対しどれだけ配慮できている素材を使った商品かについても、3段階のマークで表示する。同インデックスには素材についての指標に加え、工場(サプライヤーレベルでの環境汚染状況評価)、ブランド・小売り(企業の労働条件)の計3つの指標があるが、「今後半年~1年の間に全取引先工場の開示も行い、工場のスコアも示していきたい」。

リペアやリユース事業にも参入予定

 「オー・ゼロ・ユー」では21年内のショールーミングストアの出店は視野にあるが、基本的には自社ECに販路を限定する。まずECでスタートし、反応を見て実店舗を出すという手法ではなく、「EC特化の収益構造を作る。家賃や人件費がかからない分、商品原価率を高めていく」。また、3DCGモデリングを活用することで、サンプル製作や写真撮影などの時間を短縮し、「既存の商習慣に左右されないスピーディーなサプライチェーンを再構築する。素材の手当ては先行して行っておき、これまで3~4カ月かかっていた生産リードタイムを15~20日に短縮する。一部は既にそれができている」。

 このように、アダストリア本体で従来行ってきた実店舗前提のビジネスとは異なる部分が多く、「ヒグ・インデックス」のスコア開示もEC上で行うことから、約1300万人の会員を抱えるアダストリア本体のECサイト「ドットエスティ(.ST)」内ではなく、「オー・ゼロ・ユー」単独ECサイトでの販売を決めた。

 商品は、シャツやシャツドレス、スエット、セットアップ、サロペットなど、シーズンやシーンを超えて着られるアイテムが中心。全40型のうち5型が3DCGモデリングによる完全受注生産商品だ。全体の1~2割はユニセックスとして打ち出し、より汎用性を高める。中心対象として狙うのは30〜40代。価格は全アイテムの平均が8000円前後で、Tシャツなどは3900円、最も高い商品でも1万5000円という。

 アドアーリンクでは今後、「オー・ゼロ・ユー」のようなEC専業(D2C)ブランド事業に加え、リペア、リメイク、リユースなどの事業にも取り組んでいくという。「売れ残り商品などを(染め替えなど)アップサイクルして売っていく」と共に、ゆくゆくは客からの古着の回収といったアクションにも踏み込む考えがある。

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