ファッション

追記:ローランド・ベルガーとリバースプロジェクトがタッグ 環境スコアを算出するサービスを始動

【追記9月15日】ローランド・ベルガーは、リバースプロジェクトの代表を務める俳優の伊勢谷友介が大麻取締法違反の疑いで警視庁に逮捕されたことに関する一連の報道を受け、同取り組みは中止およびリバースプロジェクトとの提携も解消した。

 企業のサステナビリティへの取り組みの評価基準はこれまで極めて曖昧だったが、その取り組みをスコア化するサービスが始まる。伊勢谷友介が代表を務めるリバースプロジェクトはこのほど、ドイツを本拠とする経営戦略コンサルティングのローランド・ベルガー日本法人と連携して、アパレル製品の製造工程における環境負荷を測定するツール「リバースプロジェクトスコア(RPS)」のサービスの提供を始める。RPSは世界的な業界団体、サステナブル・アパレル連合(SAC)が開発した「ヒグ・インデックス(HIGG INDEX)」を参考にしたもの。ヒグ・インデックスは、①素材(素材ごとに環境への影響を定量評価)、②工場(サプライヤーレベルで工場の環境汚染状況を評価)、③ブランド(企業の労働条件)をもとに環境スコアを評価するものだが、RPSはより簡素化して「SDGsの取り組み」「素材の環境負荷」「労働環境と認証」の3軸を基準に評価を行い、その商品を100点を満点として点数化するものだ。スコアはタグに表示し、企業のサステナビリティへの取り組みを消費者に対して“見える化”していく。2021年春夏シーズン向けに一部のブランドで試験的に導入していく予定で、21-22年秋冬から本格的にサービスを提供する。同企画に携わるローランド・ベルガー日本法人パートナーの福田稔氏に、取り組みの背景を聞いた。

WWD:「ヒグ・インデックス」に注目した理由は?

福田稔ローランド・ベルガー パートナー(以下、福田):「ヒグ・インデックス」は、業界のグローバルな売り上げの約3割を占める200社以上の企業が加盟している、業界でも影響力の強いNPO団体SACが開発したもので、アパレル製品の環境負荷をもっとも詳細に“見える化”している指標だからだ。しかし、「ヒグ・インデックス」の課題はスコアリングの仕組みが詳細であるがゆえに複雑なところ。そこで今回日本の企業や消費者にとってもより分かりやすいツールが必要であると考え、RPSの開発に至った。

WWD:「ヒグ・インデックス」は複雑なツールだが、日本向けのRPSで改善した点は?

福田:RPSは消費者を啓発していくことが目的のため、できるだけ分かりやすい指標を提供したいと考えた。「ヒグ・インデックス」では、スコアが低い方が環境によいという表示で点数のスケールも幅があって複雑だ。そのためRPSではスコアを100点満点とし、点数が高い方が環境によいという直感的に理解できる表示にこだわった。またSACに加盟している日本企業はファーストリテイリングや東レなど5社しかない。RPSは日本企業にとってハードルとなる複雑さや言語の問題を解決し、日本でも“見える化”を推進する一助となるだろう。

WWD:企業はなぜ“見える化”に取り組むべきなのか?

福田:現在、グローバルでESG(環境・社会・ガバナンス)銘柄に対して投資が進んでいる。ESGにきちんと取り掛かる企業は成長性が高く、利回りがよいということが分かってきているからだ。当然ESGには透明性を持って活動内容を把握し、公表していくことが前提となる。投資家へのアピール以外にも、環境意識の高まっている消費者や従業員に対する影響もあるだろう。

WWD:日本国内では消費者や従業員の環境に対する意識はまだまだ低いが、それでも透明性を推進するべきか?

福田:中期的には日本でも消費者からの圧力が増してくるだろう。4月にわれわれが行なった消費者調査では、購買時にサステナビリティを意識する20代はかなり増えていることがわかった。特にファッションに対する関心が高い層では半数近い人が意識していると回答し、2割程度の人々はサステナブルなブランドを選ぶと回答した。20代のモード層の意識が高まると、5年ほどかけて一般にも普及していくというのがこれまでのわれわれの経験則だ。短期的には、NGOやNPOなどの第三者団体による情報公表が予想されるため、リスクマネジメントの一環としても取り組むべきだろう。

WWD:実際に情報を開示するなど透明性を担保して企業価値が上がった事例はあるか?

福田:ESG銘柄は成長性が高いことが前提だが、なかでもアディダス(ADIDAS)は、環境問題を事業機会としてうまく捉え、それがきちんと投資家に評価された企業の一つだ。彼らは20年以上前からサステナビリティに取り組み、2015年には海洋プラスチックゴミをリサイクルしたスニーカー事業を立ち上げた。かなり先行投資も行なっていたようだが、今は数百億円の事業に成長し、株価にも反映されている。最近ではESGや社会課題を事業機会にとらえるスタートアップも出てきており、資金調達に成功している。

WWD:今後はRPSを用いたスコア表示やカーボンフットプリントの表示など詳細な情報開示が求められていく?

福田:消費者は「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」や「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」などを擁するケリング(KERING)のような、日本の企業とは違うレベルで環境問題に取り組む企業やブランドの存在に気付き始めている。これまでの“ちょっとエコ”のような柔らかい打ち出しでは消費者に響かなくなってきているのが現実だ。より本質的な活動が見られていく中でRPSのようなツールをうまく活用してほしい。

WWD:これから透明性に取り組む日本企業に向けてアドバイスはあるか?

福田:新型コロナウイルスの影響で多くの企業が苦戦を強いられているが、2~3年後に落ち着くタイミングがくる。その間に、先日「セシルマクビー(CECIL MCBEE)」が全店舗撤退したように業界の新陳代謝が進むだろう。ここで生き残るためにはまず足元をやりくりしながら企業の存続を図ることが最優先だが、消費者の価値観の変化を見据えて早めにサステナブルなビジネスへの転換を図っていくべきだろう。

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