ビューティ

ドイツの“Gビューティ”はクリーンが人気 ベルリン発新鋭ブランドは新型コロナ禍でも前向き

 スタートアップ企業が集まるドイツ・ベルリン。ビューティ業界でも、ロレアル(L'OREAL)などの大手企業は(ドイツ)本社をデュッセルドルフに構える中、ベルリン発のブランドが次々と誕生している。中でも注目の新進気鋭なブランドには、いくつか共通点がある。(1)効能に科学的な根拠を持つ自然由来の成分を配合する、(2)サステナビリティに積極的に取り組む、(3)ドイツらしいデザインを物語るミニマリスティックなパッケージを特徴としつつ、カラフルな色や感性に訴えかける香りを採用する、(4)使いやすさを重視するーー。こういったこだわりは環境や健康に強い責任感を持つ若年層に強く響き、支持を得ている。

 また新型コロナウイルスは経済に大きな影響を与えているが、ベルリン発のビューティスタートアップは上記のようなこだわりを強く打ち出しながら、前向きな姿勢を保っている。ドイツでは少しずつさまざまな規制が緩和されてきており、ほとんどのサロンも営業を再開している。スキンケアやメイクアップ、フレグランス企業は、明るい未来に向けて着々と前に進んでいるようにみえる。

 ここでは、そんな“G(ジャーマン)ビューティ”の新星とも言うベき、ブランドや小売店を5つ紹介しつつ、それぞれに新型コロナ禍の影響についても聞いた。

アメイジングリー(AMAZINGLY)

 ベルリン発のオーガニック・ナチュラル化粧品専門店。2011年にオランダ人のフローリス(Floris)とイングリッド・ヴァン・オンナ(Ingrid Van Onna)が立ち上げ、自社ブランドに加え、国内外のナチュラル化粧品を数多くそろえる。立ち上げて数年はECでのみ展開していたが、17年にはベルリンに路面店をオープンした。

 ヴァン・オンナ創業者は「ドイツの化粧品市場は飽和状態ともいえる。国外のブランドの多くはドイツへの進出を簡単だと思っているが、現実はそんなに甘くない。マス市場は価格競争が起き、プレステージ市場はそこまで大きくない」とドイツの化粧品市場について語る。「しかし、厳しいレギュレーションのもとで作られたドイツ産の化粧品は海外でも高い評価を得ている。“メード・イン・ジャーマニー”は、かなりポテンシャルがある」。

 新型コロナは、17人の従業員を抱える同社にも大きな打撃を与えた。「店舗が閉まったとき、卸しの売り上げは75%ほど落ちた。その一方で、オンライン売り上げは25%増えた。そのおかげで解雇をせずにすみ、倉庫の従業員にはボーナスを支給した」。また、新型コロナ禍でもよく動いている製品はあるという。「ここ数カ月の間では、『FYIコスメティックス(FYI COSMETICS)』の美容液『スクワラン』と日焼け止め『プロテクティブ デイリー モイスチャライザー SPF 30』が爆発的に売れている。特に日焼け止めは紫外線だけでなくポリューションやブルーライトなどから肌を守り、デイリー使いにぴったり」。

エール(AER)

 100%ボタニカル成分を用い、ベルリンで手作りしているフレグランスブランド。「グッチ(GUCCI)」や「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」でフレグランスのディレクターを務めた経験を持つテッド・ヤンイン(Ted Young-Ing)とヘア・ビューティコンサルタントのステファン・ケール(Stefan Kehl)が18年に設立。ヤングイング創業者は「ドイツ人は流行よりも質を重視するので、ナチュラルな原料で作られた上質な化粧品を求める。『エール』では全て手作業で生産し、原料もなるべくドイツ国内で調達している」と語る。ラグジュアリーなガラスボトルのフレグランスはオンラインだけでなく、新型コロナの蔓延前はドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)などの実店舗でも取り扱われていた。

 「売り上げは正直激減した。2月ごろから新型コロナの影響を受け、3月は状況が悪化し、4月は底をつく状態に。売り上げのビジネスが卸なので、リテーラーが閉店している限りはわれわれのビジネスも止まっている。本当は新しい香りと新ブランドを発表する予定だったが、その計画も頓挫してしまった。今はこの状況を乗り越えられるように、既存ビジネスの存続に注力している」と厳しい現状を語った。一方で、「キャンドルやホームフレグランスが好調なほか、美しい香りのハンド消毒液を作り、売り上げをけん引している」という。

 ベルリンで起きている“アヴァンギャルドフレグランス”ブームをけん引する2人はポジティブに前を向く。「ベルリンでは今、インディペンデントな調香師や新規ブランドが多く頭角を現している。少しずつ他国からも注目を集めており、今後(ベルリンのフレグランス市場の)ポテンシャルは大きく花開くと思う」とケール創業者。

ギッティ(GITTI)

 全成分が天然由来で、そのうち55%が水というナチュラルなネイルポリッシュブランド。19年にジェニファー・バウム・ミンクス(Jennifer Baum-Minkus)が立ち上げ、処方はビーガン、パッケージもサステナブルな素材を用いている。「ドイツではクリーンでナチュラルな製品が人気で、クリーンビューティブランドが次々と誕生している。『ギッティ』はベルリン発だが、ネイルの色は世界中の文化からインスパイアされており、インターナショナルなブランドだと考えている」。

 バウム・ミンクス創業者は「この非常事態の中、チームのメンバー同士は今までよりも距離が近くなった。今は9人の従業員が在宅勤務しているが、完全にデジタルで仕事ができるように環境を整えた」と話す。また、新型コロナウイルス流行で健康に気を使う人が増える中、クリーンビューティのニーズも高まっていると感じているようだ。「今こそ、ノントキシック(無毒)な処方のネイルをみんな求めているわ。そして在宅でネイルケアをする人が増え、売り上げは伸びた」と話す。

メルム(MERME)

 元モデルでオーストリア出身のクレア・ラルストン(Claire Ralston)が手掛ける「メルム」は、人工成分や香料などを一切使わないスキンケアブランド。美容液からフェイスミストまで、ほとんどの製品は1つの原料だけで作るという究極のシンプルケアを提唱し、手頃な価格帯でも人気を集めている。「Gビューティは高品質とハイパフォーマンスでありながらもアフォーダブルなことで知られる。また、サステナビリティやエコフレンドリーな取り組みはインターナショナルな市場に影響を与える」と語るラルストン創業者。

 「新型コロナウイルスは世界を大きく変えた。われわれはこのグローバルな危機を乗り越え、より意識を高く持って協力的な会社でいようと努めている。メルムでは全てのオペレーションをデジタルにシフトし、従業員も在宅勤務をしている。ブランドのファンがさらに満足できるように、ビジネスの方針を見直し、新たなスタートを切った」と希望を口にした。

ケス(KESS)

 インクルーシビティーをうたう米国ブランドにインスパイアされ、あらゆる人が使えるメイクアップ製品をそろえる「ケス」。コンサートやイベントのチケット販売を行うイベントニム(EVENTNIM)が展開するブランドで、製品はいたってシンプルでありながらマルチな機能性を持ち、デイリー使いできることで人気だ。ビーガン処方で、パッケージもミニマル。ベストセラーの「ザ デュオ スティック」はチークとハイライトが一つになっており、スティックタイプで誰でも使いやすい。

 ヴィクトリア・シンフ(Victoria Schimpf)=コミュニケーションディレクターは「ドイツの消費者の目は厳しく、必ず成分や効能をチェックする。(成功するには)そんな彼らの信頼を得るのはマストだ」と説明する。現在はオンラインのみで展開しているため、店舗の臨時休業や閉店は行う必要がなかったという。またオンラインストアでは、ここ数カ月は継続してハイライターが人気だったという。「この厳しい状況の中、ベルリンの小規模なブランドは互いに支え合っている。みんな競合相手だが、競争は感じないわ」と、ベルリンのスターツアップカルチャーについて話す。

 新型コロナウイルスの影響でサステナビリティへの取り組みは加速すると予想されているが、それはビューティ業界においても間違いなく言えることだろう。Gビューティの中でもユニークなコンセプトや社会と環境に強い責任感を抱くベルリンのスタートアップは、次世代のビューティブランドと感じている。そんなベルリン発のGビューティブランドに、ぜひ注目してほしい。

Laura Dunkelmann(ローラ・ダンケルマン) : ドイツ・ハンブルク生まれ。ファッションジャーナリズムを学び、雑誌編集者に。現在「タッシュ(TUSH)」マガジンのビューティディレクターを務めながら、フリーランスエディターやビューティブランドのクリエイティブコンサルタントとしても活躍中

最新号紹介

WWD JAPAN

模索する東コレ21年春夏 デジタル×リアルの突破口

「WWDジャパン」11月2日号は、2021年春夏「楽天 ファッション ウィーク東京」特集です。世界が直面するリアル×デジタルという課題、そして東コレに漂う停滞ムードの打破が期待される中、冠スポンサーの楽天が新たな支援プログラム「バイアール」をスタート。支援対象となった「ダブレット」と「ファセッタズム」はどんなショーを行ったのか、デジタルをどう掛け合わせたのか、どのようにメディアを巻き込んだのか。こ…

詳細/購入はこちら