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米百貨店の破綻や閉店が相次ぎラグジュアリービューティの今後に影 ECでの高級感がカギか

 ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)やバーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)を経営するニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP)が日本の民事再生法に当たる連邦破産法11条の適用を申請した。無担保債権者のトップ20には「シャネル(CHANEL)」、トップ50の債権者リストには「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」や「カルヴェン リュクス パフューム(CARVEN LUXE PERFUMES)」などのビューティブランドが含まれていた。米国の百貨店はここ数年苦戦しており、新型コロナウイルスはさらなる追い打ちをかけている。昨年8月のバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)の破綻から始まり、今月はJ.C.ペニー(J.C. PENNEY)が破綻し、ロード&テーラー(LORD & TAYLOR)も破綻がうわさされている。そのほかノードストローム(NORDSTROM)は米国内の16店舗を閉店し、サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)などを擁するハドソンズ ベイ カンパニー(HUDSON’S BAY COMPANY)は2月に上場廃止、メイシーズ(MACY'S)も125店舗の閉店を発表し、百貨店を大きな販売チャネルとしているラグジュアリービューティの先行きが不透明になってきた。

 「この事態は、まさに時流に合わせて変化できなかったビジネスモデルの例だ」と、とある大手化粧品企業の最高経営責任者(CEO)は語る。「ECが普及してデジタルの売り上げがシェアを拡大する中、固定費が高いままの実店舗は続かない。ラグジュアリービューティは実店舗限定で扱うという考え方もなくなりつつある」。

 百貨店ビジネスの停滞は新型コロナの蔓延前から続いているが、コロナにより業績の悪化は加速。WSL ストラテジック リテール(WSL STRATEGIC RETAIL)のウェンディー・リーブマン(Wendy Liebmann)CEO兼チーフショッパーは、ポスト・コロナには百貨店と専門店の大量閉店が起こると予測する。「百貨店をはじめとするリテーラーの苦戦は以前から観察してきたが、今回のパンデミックで状況が急速に悪化した。ラグジュアリービューティ企業は次の一手を準備していなければ、かなりまずいことになるだろう」。ラグジュアリースキンケアブランド「レヴィーヴ(REVIVE)」のイレーナ・ドレル・ザイファー(Elana Drell-Szyfer)=CEOは「ラグジュアリービューティにとって、今後は従来の販売チャネルとは別の方法で売ることを考えなければならない。自社ECはもちろん、これまで考えられなかった手段もとる必要があるだろう。この(新型コロナの)期間で、事態が急速に変化している」と警鐘を鳴らした。

ビューティECでラグジュアリーブランドも生き残れるのか

 実店舗の閉店が相次ぎ、さらに新型コロナ禍によって、今後はECの存在がますます重要になることは言うまでもない。しかし、ラグジュアリー・プレステージビューティは製品同様に、販売員による接客をはじめとするラグジュアリーなサービスも求められる。丁寧なカウンセリングや店頭での体験など、デジタルで同様のサービスを提供することは可能なのかーー。そんな中、先日「ディオール(DIOR)」がパルファムの3Dオンラインブティックをオープンした。シャンゼリゼ通りの店舗をオンライン上で再現したもので、バーチャルに店内を歩き回ることができ、購入はECサイトに飛ぶ仕組みだ。人による接客には程遠いが、ECでも店頭同様の体験を提供することは、一つヒントになるかもしれない。また、最近は美容部員と1対1で話せるオンラインカウンセリングを導入するところも増えているが、デジタルネイティブではない高齢者層への対応など、課題は多く残る。

 一方で、アマゾン(AMAZON)がラグジュアリービューティの取り扱いを始めることが話題になっている。米国で上半期までにラグジュアリーブランド専用のプラットフォームをローンチする予定で、まずはファッションやアクセサリーから販売を始める。新型コロナの感染が拡大する前は、ビューティブランドの導入は10月にスタートする予定だった。アマゾンはコメントに応じなかったが、業界筋によると、プラットフォームは招待制のモバイルアプリで展開するという。また同社は、多くのプレステージブランドが懸念する“ラグジュアリーブランドの見せ方”という課題もクリアしたというが、エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)のファブリツィオ・フリーダ(Fabrizio Freda)は出店拒否の意向を示すなど、両論があるようだ。

 そしてプレステージビューティを中心に扱うECサイトのルックファンタスティック(LOOKFANTASTIC)のほか、セフォラ(SEPHORA)やウルタ(ULTA)のECも好調だ。セフォラやウルタでは「シャネル(CHANEL)」や「ディオール」の一部製品の取り扱いはあるものの、ハイプレステージやラグジュアリービューティと捉えられる「ラ・プレリー(LA PRAIRIE)」や「シスレー(SISLEY)」などはない。これらのサイトや店舗が、例えば「ラ・プレリー」の510ドル(約5万3500円)のクリームを販売するのに最適な環境と言えるのかどうかは、疑問が残る。

 これまで製品をニーマン・マーカスのECサイトで販売してきた「レヴィーヴ」のドレル・ザイファーCEOは「ニーマン・マーカスとのECビジネスは成功していた。ECサイトのビューティアドバイザーをおき、既存客のリストとともに、オンライン上でブランドを探している人がいれば通知が来るようになっていた」と話す。ニーマン・マーカスの元エグゼクティブ・バイス・プレジデントで1996年に「ローラ メルシエ(LAURA MERCIER)」を立ち上げたジャネット・ガーウィッチ(Janet Gurwitch)は「このような顧客育成こそがニーマン・マーカスの強み。店舗では、素晴らしいサービスを提供してきた。美容部員はただ製品を売るのではなく、ビューティの楽しみ方そのものを顧客に届けた。サックス・フィフス・アベニュー(などの百貨店)もそういった手厚いサービスを提供するかもしれないが、セフォラやウルタはそうではない」と話す。

 また、消費者も変化している。ガーウィッチ氏は「プレステージビューティの消費者はまだいるし、彼らを店舗に誘導するチャンスもあると思う。ただ、今後は革新的な新しいアイデアを生み出さないと厳しい」と語る。ニーマン・マーカスの今後についてはまだ不透明だが、今後はラグジュアリービューティを購入する消費者だけでなく、ミレニアル世代を集客できるようにならないと、先行きは怪しいだろう。ラグジュアリービューティブランドも、百貨店や専門店に依存せず、ECでも店頭同様のラグジュアリーなサービスを生み出したり、他の方法を模索したりする必要がありそうだ。