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「第62回グラミー賞」はビリー・アイリッシュが39年ぶりの快挙達成 タイラー・ザ・クリエイターのコメントも話題に

 世界最高峰の音楽賞「グラミー賞(Grammy Awards)」の第62回授賞式が1月26日(現地時間)、米ロサンゼルスのステープルズ・センターで開催された。

 毎年「グラミー賞」授賞式が行われるステープルズ・センターは、同日朝にヘリコプターの墜落事故で死去した元NBAのスーパースター、コービー・ブライアント(Kobe Bryant)が現役時代に所属していたロサンゼルス・レイカーズ(Los Angeles Lakers)の本拠地であることから、会場外の大型モニターには笑顔のコービーが映し出され、設置された献花台に多くファンのが花を手向け、幾度となくコービーコールが巻き起こるなど、追悼ムードが漂う中での開催となった。

 オープニングパフォーマンスを務めたリゾ(Lizzo)は、「今夜のパフォーマンスはコービーに捧げる」と口にしてから「Cuz I Love You」と「Truth Hurts」を披露。司会のアリシア・キーズ(Alicia Keys)も、「本日は、音楽界最大の祭典を祝うために集まりましたが、われわれは今深い悲しみに包まれています。なぜなら、世界の偉大なるヒーローをロサンゼルスで失ったからです。今回の悲劇的な事故で命を失ったコービーと娘のジアーナ、そして同乗された方々に心を寄せたいと思います。このセレモニーをこのような形で始めるなんて…」と悲しみをあらわにした。続けて、「音楽にはこの世で最も癒やしの力があります。いまこそ、その癒やしの力を借りるべき時です」とボーイズ・II・メン(Boyz II Men)の「It's So Hard to Say Goodbye to Yesterday」を彼らとともにアカペラで熱唱し、追悼の意を表明。その後もパフォーマンスを披露したラン・ディーエムシー(Run-D.M.C.)やリル・ナズ・X(Lil Nas X)らが、コービーのユニホームを掲げるなどしてスーパースターの不慮の死を悼んだ。

 リゾとともに主要4部門を含む最多8部門にノミネートされたビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)は、年間最優秀楽曲賞、年間最優秀アルバム賞、年間最優秀レコード賞、最優秀新人賞の主要4部門を史上最年少の18歳で総なめにする快挙を達成した。これは、1981年の第23回でクリストファー・クロス(Christopher Cross)が達成して以来39年ぶり2度目となる快挙で、女性アーティストとしては初。さらに、最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞も獲得したことから、本年度の「グラミー賞」における最多受賞アーティストにもなった。受賞スピーチでは「これまで『グラミー賞』についてたくさん冗談を言ってきたけど、今は心から感謝を述べたい」とコメントし、ビリーの兄で年間最優秀プロデューサー賞を獲得したプロデューサーのフィニアス・アイリッシュ(Finneas Eilish)も登壇した。「僕たちは今でもベッドルームで曲を作っている。今日もベッドルームで曲を作っている世界中の子どもたちに伝えたい。君たちも『グラミー賞』が取れるよ」。

 また、最優秀ラップアルバム賞はタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, the Creator)が受賞し、そのコメントが話題となった。実母と登壇した受賞スピーチでは、「また受賞できるか分からないから、少し話をさせてくれ。まず1つ目。ママ、俺を育ててくれてありがとう。2つ目、俺のマネージャー。君たちは、俺という種に水を与えてくれた。俺のアイデアを信じてくれてありがとう。3つ目は、友だちや家族に感謝を。俺のアイデアを信じてくれて、イラつくぐらいハイパーアクティブ(極端に元気で活動的)な俺に子どもの頃からつきあってくれて、いつもサポートしてくれてありがとう。俺はクレイジーなことばかりするし、ラップ界に完全に受け入れられていると感じたことがないけど、君たちはいつも俺を支えてくれた。おかげでここに立つことができたし、心からありがたく思っている。そして、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)に心から感謝している。子どもの頃、俺はテレビで見るものの多くから疎外されていると感じていた。でも彼のおかげでありのままの自分でいていいんだと思えるようになったし、彼は想像もできないほど俺の心の扉をたくさん開けてくれた。ファレルに会う前も、そして実際に会ったときもね。ありがとう、P。そしてみんな、愛しているよ」と感動的なコメントを述べた。

 しかしその後のインタビューで、「選出(投票)に関するニュースが出ていますが、このニュースによって本日受賞したことに対する見方は何か変わりましたか?」と問われ、「半分半分といったところだな。俺の作ったものがこうした業界で認められたことをありがたく思う一方で、俺たちみたいな見た目をした男が何かジャンルを超えた音楽を作ると、それが何であれ、ラップもしくはアーバンというカテゴリーに押し込められてしまうのは最悪だと思う」。続けて「俺はこの“アーバン”という言葉は、Nワードを政治的に正しく言っているだけだと感じるから嫌いなんだ。“アーバン”という言葉を聞くと、『なんで俺たちは、ただ“ポップ”というジャンルじゃダメなんだ?(=なんでそこに入れてもらえないんだ?)』と思うよ。だから、ラップカテゴリーでのノミネートも、半分は皮肉なお世辞のように感じたね。『ああ、幼いいとこたちもゲームで遊びたいんだね。じゃあ、この本体につながっていないコントローラーを渡しておこう。そうしたら、実際にはゲームに参加できていないけどその気になって満足して黙るだろうから』と言われているように感じる部分が少しあった。だが、その半面で俺の作ったものが『グラミー賞』のようなレベルで認めてもらえてありがたく思っているよ。俺はラジオに出ないし、俺の曲はターゲット(米国のスーパー)でかかったりしない。俺はこの会場にいる多くの人たちが聴いているものとは全く違う音楽を作っている。だから感謝していると同時に、『あー、うーん……』みたいな気持ちになったよ」と複雑な心境を吐露した。

 というのも、主にヒップホップを代表するシーンと「グラミー賞」の間には深い溝がある。昨年、チャイルディッシュ・ガンビーノ(Childish Gambino)がラップ楽曲として史上初めて最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞を受賞したものの、それ以前にラップ楽曲が主要4部門で受賞したのは、15年前に最優秀アルバム賞を獲得したアウトキャスト(OutKast)のみ。このようなこともあってか、チャイルディッシュ・ガンビーノは授賞式を欠席し、ドレイク(Drake)もパフォーマンスを辞退。さらに、ドレイクは「God's Plan」で最優秀ラップ・ソング賞を受賞するも、スピーチで「グラミー賞」の在り方自体に疑問を呈す発言をしたことでTV放送が途中でカットされるという事件も起きた。なお今回のタイラーの受賞スピーチの際にも、早く終わらせるよう指示があった。

NENEは「No Geography」収録曲の「Eve Of Destruction」に参加している

 日本人ではジャズ作曲家の挾間美帆が、最優秀大規模ジャズ・アンサンブル・アルバム賞での受賞を惜しくも逃したが、グラフィックデザイナーの小池正樹が「Woodstock: Back to the Garden」で最優秀ボックス・スペシャル限定盤パッケージ賞を受賞。また、ヒップホップユニットのゆるふわギャングで活動する女性ラッパーのNENEが参加している、ケミカル・ブラザーズ(The Chemical Brothers)の「No Geography」が最優秀エレクトロニック・ダンス・アルバム賞を受賞し、NENEは自身のツイッターで「このアルバムに私を選び参加させてくれたThe Chemical Brothers 、神様、ありがとう」と喜びを報告している。

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