
青山商事のスーツ量販業態「スーツスクエア(SUIT SQUARE)」は、ウィメンズブランド「シス(CIS.)」を2026年春夏シーズンで終了する。
「シス」は「アメリ(AMERI)」の黒石奈央子ディレクターを起用したビジネスウエアブランドとして24年9月にスタート。青山商事は当時「ザ・スーツカンパニー」を「スーツスクエア」へ改称・リブランディングするにあたり、「シス」を目玉の一つと位置付けていた。ビジネスウエアという形式的なルールにとらわれず、「自分らしい個性やファッションを自由に楽しめるオフィスウエア」を掲げ、「アメリ」の顧客層と重なる20〜30代女性の新客獲得を狙ったが、約2年での協業終了となった。
量販店スーツ不況の中、ウィメンズ獲得の策

スーツ量販店は昨今、構造的な逆風の中にある。オフィスウエアのカジュアル化と在宅勤務の定着でスーツを着る機会そのものが減り、ジャケットとパンツを1万円台でそろえられる「ユニクロ(UNIQLO)」などの低価格セットアップに需要が流れている。その中で、女性の新客獲得と商品の付加価値化に活路を求めて投入したのが「シス」だった。量販店の「安くてそれなり」のイメージを覆すべく、ジャケット単体で3万690円など、当時の量販店では攻めた価格で働く女性の日常着を打ち出した。発売時にはフォロワー29万人(当時)を持つ黒石のSNS発信を生かし、ウィメンズのEC売上高を前年同期比1.5倍に伸ばす目標も掲げていた。
起爆剤には至らず
ただ、起爆剤となるには至らなかった。26年3月期の同社のウィメンズカテゴリーの売上高は、前期比6.3%減の209億2200万円。連結売上高は1890億円(前期比3.4%減)、営業利益は105億円(同15.8%減)、純利益は69億円(同26.4%減)といずれも計画未達に終わった。遠藤泰三社長は本業不振の中、事業の選択と集中を進めている。26年3月期の決算説明資料では「規模の大小に関わらず、収益性が低く本業とのシナジーが見込めない事業」を整理すると明言。実際にカスタムライフのホームワイン事業を25年12月末で撤退、家具・雑貨のWTWを26年3月末で解散しており、「シス」の終了もこの事業整理の一環と見るのが自然だろう。
おしゃれ<コスパなのか
およそ2年で幕を閉じた協業だが、決して商品が悪いわけではなかった。「アメリ」が得意とする着回しの発想と、マシンウオッシャブルなどのイージーケアを両立させるなど、黒石の企画力と量販店の製造・調達力はうまくかみ合っていた。ビジュアルやスタイリングも洗練され、着てみたいと思わせるムードがあった。それでも難しかったのはーーやはり餅は餅屋ということか。客が量販店に期待するのは「日常着よりスーツ」であり、「おしゃれよりコスパ」ということなのかもしれない。
1万2980円の“みんなのスーツ”から商機狙う
それを裏付けるように、一方で好調なのが、25年11月1日に投入した上下1万2980円の“みんなのスーツ”だ。全世代向けをうたったこのシリーズは、ジャケパンやオフシーンなど「シス」と同じく着回しを重視しながら、スーツメーカーらしい立体的な仕上がりをより値ごろな価格で提案している。発売6カ月で6万着、シリーズ累計で約14万点、7億4000万円を売り上げた。同社の売上規模から見れば限定的だが、新客のうち22歳の購入者が61.2%、女性購入者が44.5%となるなど、課題だった若年層・女性客の獲得に貢献している。同社は“みんなのスーツ”をあくまで新客との接点をつくる入口と位置付け、シャツや靴などの周辺アイテム、さらにオーダースーツへの誘導により、客単価を積み上げていく考えだ。