青山商事の「スーツスクエア(SUIT SQUARE)」は4月30日まで、「アメリ(AMERI)」の黒石奈央子ディレクターとの協業ライン「シス(CIS.)」のポップアップストアをルミネ新宿2の2階イベントスペースに出店している。ポップアップ出店は、今回が初めて。
ポップアップでは、“プレイフルストラクチャー(Playful Structure)”がテーマの2025春夏コレクションのアイテムが並ぶ。建物の造形美をインスピレーション源に、立体感や造形美を服で表現したジャケットやパンツ、ブラウス、シャツなど全15型。
会場は「アメリ ヴィンテージ(AMERI VINTAGE)」ルミネ新宿2店に隣接しており、黒石のファンの相互送客を狙う。青山商事の今井康友TSC営業部副部長は、「普段『スーツスクエア』では取り込めていない、ファッション感度の高いお客さまや、若年層のお客さまにアプローチできるとても良い機会だ。また、館には訪日客も多く、海外のお客さまにもリーチが見込める」と期待を寄せた。
好感触を得ることができれば、今後は都心のオフィス街などでもポップアップ開催も検討しているという。
「シス」滑り出し好調 購入者は狙い通り、20〜30代女性
「シス」は、2024年9月にスタート。「rules for fashion, enjoy with rules」をコンセプトに掲げ、ビジネスウエアのルールに縛られず、むしろそれを「楽しむ」という黒石ならではの目線でデザインしている。さまざまな着こなしやシーンを想定し、デザインや生地、シルエットに加え、裏地やボタンなど全て黒石がこだわりを持ってセレクト。ラインアップ自体はジャケットやシャツ、パンツなどビジネスの文脈を汲み取っていながら、ひとくせあるデザインやレイヤードスタイルで遊び心を加える。
ローンチから約半年経ったが、滑り出しは順調。2024年秋冬のデビューコレクションは一部の商品が完売し、追加生産を行うなど予想以上の反響があった。購買層は20〜30代の女性が中心で、狙った客層に届いていることがうかがえる。
さらに、公式ECサイトの購入者のうち、約9割が新規でスーツスクエアの会員に入会。普段「スーツスクエア」と接点のない客層の獲得につながっている。
主婦層の需要も実感 今後の服作りの参考に
一方の黒石氏は、量販のビジネススーツメーカーとの協業で得たものはあったのか。
黒石は、昨年第1子を出産。主婦との交流が増え、「シス」を「入卒園式で着たい」といった声も耳にするようになったという。このことから、オケージョンの多い主婦層には「アメリ」ではカバーしきれないニーズがあり、そこに「シス」の需要があることに気が付いた。
「普通のスーツだと面白くないし、派手過ぎると着ていけないというおしゃれなママたちの要望を応えるのに『シス』のアイテムはぴったり。今後はビジネスパーソンだけでなく、こういったニーズにも広く応えていけるような服作りを意識したい」と黒石氏。
今井副部長も「ビジネスとファッションのいいとこ取りをしたポジショニングのブランドを目指したい」と意気込む。「これからは黒石さんと同じ境遇の、子育てと仕事を両立している女性からのファン層も増えるはず。受験や面接などのオケージョン服の新たな提案も黒石さんと検討し、客層の幅を広げていきたい」。