1月に続きベルリン・ファッション・ウイーク(以下、BFW)に参加した「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)」は7月5日、市内中心部にある皇太子宮殿で2027年春夏のショーを開催した。コレクションのテーマは、「アンドロジニー(Androgyny)」。「強さ」と「弱さ」や「美しさ」と「醜さ」から「規律」と「衝動」、「理性」と「欲望」、「解放」と「拘束」、「男性性」と「女性性」まで、相反する要素を一つの体の中に共存するものとして捉え、その曖昧な境界をまとうスタイルを提案した。
出発点は、社会的役割や既成のジェンダー観から解放され、自らの体を表現する人々の姿を捉えたフランス人写真家ベティナ・ランス(Bettina Rheims)による写真集「Modern Lovers」。「その本を見た時、ジェンダーにとらわれない曖昧な美しさやかっこよさを感じた。それを服を通して表現したかった」と柳川荒士デザイナーは語り、若き日のデヴィッド・ボウイ(David Bowie)やルー・リード(Lou Reed)、イギー・ポップ(Iggy Pop)を参考にしながらイメージをふくらませたという。そして固定観念に対するアプローチとして、「縛り」という言葉に着目。規律やルールとしての「縛り」と体を物理的に拘束する「縛り」というダブルミーニング(2つの意味)を精緻なテーラリングに込め、ボンテージを想起させるストラップを加えたジャケットやコート、シャツをコレクションの中心に据えた。
そこに合わせるのは、ラッセルレースのトップスやシャツ、手袋、深いタックを入れることでスカートのようにも見えるデザインに仕上げたショーツ、コルセットとワイドパンツ、ペプラム付きのブルゾン、キトゥンヒールを配したレースアップシューズまで。「フェミニン」と考えられがちな要素や素材を、メンズのスタイルに持ち込んだ。一方、ウィメンズでは力強いショルダーラインのジャケットやパイソン柄のトップス、ダブルカフスシャツなどをミックス。モデルは皆中性的な雰囲気で、ジェンダーの概念にとらわれることのない着こなしを際立たせる。そんな今季は、半年前に披露した力強くダークなスタイルと比べると繊細でエレガントな印象。特にメンズは、直近のメンズ・ファッション・ウイークで浮上した「繊細さ」や「もろさ」を受け入れながら新世代の価値観に即した男性性を再考する流れにも通じる。
「勝負なので、立ち止まってはいられない」
ベルリンでの挑戦は続く
「ジョン ローレンス サリバン」は先シーズンに続き、ドイツファッション協会(FASHION COUNCIL GERMANY)とベルリン州経済・エネルギー・公共企業局による支援プログラム「ベルリン・コンテンポラリー(BERLIN CONTEMPORARY)」に選ばれ、ショー開催のための助成金として2万5000ユーロ(約460万円)を受け取った。もちろんそれだけでは十分ではなく、さまざまな壁を乗り越えてのショーだっただろう。一方、半年前のBFW初挑戦から国内のみならず海外での露出は増え、「ヴォーグ ランウエイ(VOGUE RUNWAY)」など海外メディアでも再びコレクションが取り上げられるようになった。
柳川デザイナーは、2回目のベルリンでのショーを振り返って「今回も前回と全く同じチームで臨んだ。チームのムードもいいし、BFWに携わっている人たちのムードもとてもいい。ブランドの現状や規模を考えると、こんな大きな会場で発表できるというのは特別なことであり、幸せなこと。だからこそ、できる限り諦めずに突き詰めてやっていきたい」とコメント。「いつまでこうした環境で発表させてもらえるかはわからない」としつつも、「次回もまた申請するつもりだ。勝負なので、立ち止まってはいられない」と意欲的な姿勢を見せた。ベルリンで始まった「ジョン ローレンス サリバン」の新たな挑戦はこれからも続く。