ファッション

「マーク ジェイコブス」の新たな船出 大胆な色彩で奏でるクリエーションへの喜びの讃歌

マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」は6月29日(ニューヨーク現地時間)、恒例となった独自の日程で、2027年春夏コレクションをニューヨーク公共図書館で発表した。同コレクションは米国ではバーグドルフ・グッドマンがコレクションラインを独占販売する。

今シーズンのテーマは「GRATITUDE.(感謝)」。ショーノートには、こう記されている。「豊かさをより深く認識することを学べば、人生の最も不確かな瞬間でさえ、困難の中に目的を、変化の中に可能性を見いだすことができます。感謝の気持ちを込めて何かを創ることこそ、私にとって最も純粋な自己表現の形なのです。(以下略)」・

今年5月には、長年にわたりブランドを支えてきたLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOËT HENNESSY LOUIS VUITTON)が「マーク ジェイコブス」の売却を決定。現在は取引の完了に向けた手続きが進められており、ブランドは新たな株主となるWHPグローバル(WHP GLOBAL)への移行期にある。ショー会場には両グループの幹部も姿を見せ、ブランドが新たな船出を迎えつつあることを印象づけた。大きな転換期にありながらも、独自のクリエイションを続けられることへの感謝と喜びを噛み締めてるかのように。今シーズンのテーマには、そんなマーク・ジェイコブス自身の思いが込められているようだ。

色とフォルム、レイヤードで遊ぶ
日常着に宿るポップな高揚感

マーク・ジェイコブスが数シーズンにわたり描き続けてきた、おとぎ話のようにドリーミーなワンダーランドと、大胆にデフォルメしたフォルムのコレクションから一転、リアルクローズへと大きく舵を切った先シーズン。2027年春夏もその流れをくみ、日常に根差したワードローブがランウエイを彩った。
全31ルックで構成された今シーズンは、大胆に色を掛け合わせたカラーブロッキングが印象的だ。PVCや、透け感と光沢を備えたナイロン、肌に溶け込むような薄手の素材を幾重にも重ね、鮮やかな色同士をぶつけながらも、大人が着られる上品な佇まいに着地させた。シアーな素材を通して異なる色や質感をのぞかせることで、レイヤードに奥行きを生み出している。トラッカージャケットやコルセット、構築的なフォルムのミニスカートも、軽やかな素材使いによって硬さを感じさせない。

今シーズンもマーク・ジェイコブスは、自身がデザイナーとして影響を受けた過去の作品を着想源に、そのエッセンスを現代のワードローブへと落とし込んだ。前半に登場する、透け感と光沢を備えたナイロンのレイヤードは、「ジュンヤ ワタナベ(JUNYA WATANABE)」の1996年春夏コレクションからヒントを得たようだ。ショーノートにはこのほか、イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)が1970年に発表したメッセージカード「LOVE」や、ボブ・フォッシー(Bob Fosse)監督の映画「オール・ザット・ジャズ」(1979年)、「シャネル(CHANEL)」の1993年春夏コレクション、さらにマーク自身が手掛けた「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の2009年春夏コレクションも参照元として記されている。

そこから引用したのは、鮮やかなカラーブロッキングや蛇を思わせるモチーフ、マイクロミニスカート、チェーンベルト、タイツ、ボディスーツといった要素だ。プラスチック素材でポップな表情を添えたチェーンベルトやチャーム、ジャラジャラと幾重にも重ねたネックレス、ウエストを強調するベルトはPVCで仕立てられ、大胆な色彩との組み合わせによって軽やかなユーモアを漂わせた。

ニューヨークのファッションシーンを長年牽引してきたマーク・ジェイコブスは毎シーズン、自由な発想と卓越した技術に裏打ちされたコレクションを発表している。一方で、現在のブランドビジネスの中核を担うのはハンドバッグだ。新たなオーナーのもとでブランドの可能性をどのように広げ、クリエイションをさらに深化させていくのか。今後の展開に期待が寄せられる。

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