「ヨウジヤマモト プールオム(YOHJI YAMAMOTO POUR HOMME)」は現地時間6月25日、2027年春夏コレクションをパリで発表した。
地球環境破壊への警鐘など、服を媒介にして社会的メッセージを声高に発信してきた「ヨウジ」だが、今季はそのような直接的なレタリングは影を潜めた。しかしブランドのアイデンティティーである「黒」から始まったルックが、ショーが進むにつれて緩み、ほころんでいくその様は、社会情勢の悪化とともにこわばりを強める世界への暗黙のメッセージにも捉えられた。
ブランドを象徴する全身黒の3ルックから始まった序盤。尖った肩、丸く張った肩、隙間を見せる接合と、肩の組み立て方を一型ごとに変えていく。キャスティングされたモデルたちの顔立ちや体つきは幅広く、体型にも性別にもとらわれない。黒の章に続くのは、プリントの展開だ。鴉(からす)、鳳凰、刷毛の跡、獅子の横顔。中でも鴉は、山本が繰り返し用いきたモチーフである。柄の上に柄を重ね、そこに赤が差し込まれる。黒いジャケットの下から赤と黒のペインタリーな柄をのぞかせ、靴やタイツも赤で呼応させる。
中盤からは、素材そのものが大きく変化していく。生成りのローリネン、続いて光沢のあるベルベットのスーツが黒、赤、オリーブと並ぶ。インナーには糸を垂らした刺繍。終盤に向けて崩壊のニュアンスは強まり、はしご状にほつれたローゲージニットが身体を覆い、胸元では大ぶりのクロスやチェーンが揺れる。黒のテーラードには崩れたニットやフリンジを接ぎ合わせ、胸にはストラップを渡した。
黒に始まり、プリント、赤、生成り、ベルベット、ニット、そしてレースへ。かっちりと組まれた一着が、歩みを進めるほどに緩み、崩れ、装飾へと変わっていった。服に刷り込んだ言葉を通して、戦争や海の危機へも鋭い眼差しを向けてきた山本耀司。その文脈に今回のコレクションを位置づけるとするならば、彼が反復してきた手法であるデストロイ加工も、硬い仕立てを解き、レースや手仕事へと向かう“ほころび”の表現も、より不寛容にこわばっていく時代への静かなる抵抗に思えてくる。