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エスティ ローダーがジョー・マローンを英国で提訴 商標権侵害と契約違反で

エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES以下、ELC)は、調香師でブランドオーナーのジョー・マローン(Jo Malone)を相手取り、英国の裁判所に商標権侵害、不正競争、契約違反を理由に訴訟を提起したことを明らかにした。

同社によると、「ジョー マローン(JO MALONE )」の創業者であるマローン本人に加え、同氏のフレグランス企業ジョー ラブズ(JO LOVES)、ジョー ラブズ ホールセール(JO LOVES WHOLESALE)、「ザラ(ZARA)」を運営するインディテックス(INDITEX)の英子会社ITX UK(旧ザラU.K.)を相手取り、法的手続きを開始したという。

マローン側およびインディテックスの広報担当者はいずれもコメントを控えた。最初に本件を報じたのは英紙「フィナンシャル・タイムズ(FINANCIAL TIMES)」だった。

マローンは1999年、自身の名を冠したフレグランス事業をELCに売却。2006年に同社を退社した。その後5年間の競業避止義務期間を経て、11年に「ジョー ラブズ」を設立。同ブランドはロンドンのエリザベス・ストリートに店舗を構え、マローンは現在もブランドや企業、個人向けのフレグランスコンサルタントとして活動している。

「ザラ」向けフレグランスが訴訟の火種に

また同氏は長年にわたりインディテックスと協業し、「ザラ」向けのフレグランスラインを手掛けてきた。業界関係者によると、この「ザラ」向けフレグランスが今回の訴訟の重要な争点となっている。

19年、マローンは“ザラ エモーションズ コレクション バイ ジョー ラブズ(Zara Emotions Collection by Jo Loves)”と名付けた8種類の香りのコレクションを制作。ヨーロッパ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランドの「ザラ」店舗で販売された。翌20年、コロナ禍の最中に同コレクションは米国でも発売された。

白い紙箱に収められたこのコレクションには、調香師による言葉がそれぞれ印刷されており、並べると本棚の本のように見えるデザインになっている。顧客が“ライブラリー”として全種類を集めたくなるよう設計されており、店舗では「ザラ」の他のフレグランスと並べて販売されていた。

その後コレクションは拡張され、外箱には「ジョー ラブズ創業者ジョー・マローンCBEによるコレクション」と彼女の署名が記されている。CBEは大英帝国勲章コマンダー(Commander of the Most Excellent Order of the British Empire)を意味し、マローンは18年、当時のプリンス・オブ・ウェールズ(現在のチャールズ3世)からこの勲章を授与された。この栄誉は、フレグランス業界への貢献に加え、起業家、ショップオーナー、そして学生や中小企業へのメンターとしての活動が評価されたものだ。

「ザラ」の別のフレグランスパッケージには、「ジョー ラブズ創業者ジョー・マローンCBEによるコレクション」または「Ms.ジョー・マローンCBEによるコレクション」と記され、同様に彼女の署名が添えられている。

マローン退社後、ELCは元のブランドを「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」として拡大し、現在では世界84市場で4200カ所以上の販売拠点を構える。同ブランドは4000人以上の従業員を抱え、ロンドンのベーカー・ストリート近くにある歴史的建築物として保護されているジョージアン様式のタウンハウスを拠点としており、同施設は年間を通じてイベント会場としても利用されている。

ELC「ブランド価値を守る」

ELCの広報担当者は次のようにコメントした。「過去25年間にわたり、当社は『ジョー マローン ロンドン』の構築に多大な投資を行ってきた。現在、このブランドは世界中で愛される、卓越したブランド価値と明確なアイデンティティーを持つグローバルな象徴的ブランドとなっている」。

さらに声明はこう続く。「1999年にジョー・マローン氏がブランドをエスティ ローダー カンパニーズに売却した際、彼女はフレグランスのマーケティングを含む特定の商業活動において『ジョー・マローン』という名前を使用しないことを含む、明確な契約条件に同意した。この契約の一環として彼女は報酬を受け取り、その後長年にわたり条件を順守してきた。

しかし近年の商業活動における『ジョー・マローン』という名前の使用は、この法的合意の範囲を超えるものであり、『ジョー マローン ロンドン』が持つ独自のブランド価値を損なうものだ。私たちはマローン氏が新たな機会を追求する権利を尊重している。しかし法的拘束力のある契約上の義務は無視できるものではない。その条件が破られた場合、私たちは数十年にわたり投資し築き上げてきたブランドを守る」。

高級フレグランス市場で競争激化

今回の訴訟は、高級フレグランス市場の競争がいかに激化しているかを示す新たな例でもある。英ドラッグストアチェーンのブーツ(BOOTS)は単独型のフレグランス専門店を展開し、顧客が店内で香りを試しながらゆっくり過ごせる空間づくりを進めている。リバプール・ストリート駅近くにオープンした1号店では、これまで以上に多くのテスターを展示し、体験型の売り場作りを重視。さらに香りのプロファイリングやマッチングの高度なトレーニングを受けたフレグランス専門スタッフを配置している。

「ブーツ フレグランス」では、顧客が“シグネチャーセント(自分らしい香り)”や香りの組み合わせを見つけられるようサポートするコンシェルジュサービスも提供。結婚式など人生の大切な場面に合う香り選びもサポートする。実店舗に加え、「ブーツ」公式サイトとアプリ上にフレグランス専用ハブも開設し、1600以上の店舗でクリック&コレクト(オンライン注文・店頭受け取り)サービスを利用できるようにした。

また今年初めには、百貨店セルフリッジズ(SELFRIDGES)がロンドン店1階のフレグランスホールを改装。セルフリッジズのメリッサ・マクギニス(Melissa McGinnis)=ビューティ・バイイング・ディレクターは、フレグランスが同店で最も成長しているカテゴリーだと明かす。「フレグランスはコロナ以前から一貫して成長を続けており、顧客行動の変化が最も大きく表れている分野でもある」と語った。また「消費者はより多くの知識と選択肢を持ち、さまざまなシーンや1日の時間帯に合わせて“フレグランスのワードローブ”を構築するようになっている」と付け加えた。

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