
今シーズンマスカラの技術革新には、目を見張るものがある。各社1000円台のプチプラアイテムに、最新の技術を搭載している点も見逃せない。カールやフィット感といった機能性を突き詰めることで、“感情”や“ライフスタイルの自由度”までも拡張する、マスカラの驚くべき進化に迫る。
「デカ目」から「こそ盛り」へ。
まつ毛メイクとマスカラの変遷
時代とともにアイメイクのトレンドは移り変わり、マスカラに求められる仕上がりや機能も変化してきた。
まず、1990年代後半から 2000年代初頭にかけては、“盛り”が主役の時代。“ギャルメイク”や “囲み目メイク”の流行に伴い、マスカラはボリュームと存在感をひたすら追求していた。たとえまつ毛がひじきになろうとも、夕方にパンダ目になろうとも“デカ目”がもてはやされた時代だった。
10年代になると、エフォートレスなファッションの台頭と共に“抜け感メイク”が注目される。頑張り過ぎはよしとされず、まつ毛も肩の力が抜けたナチュラルなスタイルが主役になる。さらに、20年のコロナ禍において流行したのが“カラーマスカラ”だ。マスク着用中も血色感を演出するために、目元に暖色系のマスカラをあしらう女性が増加した。
マスク生活に収束が見えはじめた23年あたりから、クワイエットラグジュアリーの流行とともに“ミュートメイク”が注目される。一見すっぴんのようだけれど、上品なカールで目元の存在感を高めるスタイルだ。この時期、「ケイト(KATE)」が“ラッシュ フォーマー EX”でフィーチャーした“こそ盛り”というワードは、実に言い得て妙だったと思う。
2026年現在“まつ毛メイク”の
先にあるトレンドとは
では 26年現在、旬のまつ毛メイク及びマスカラとは、どのようなものだろう。こそ盛りトレンドは継続しており、デパコス・プチプラ含め“究極の素まつ毛”と表現したくなる、自然な仕上がりのマスカラが目立つ。
さらに、“落ちない”“メイクオフが楽”などの機能面が、劇的に進化したのも今シーズンの特長だ。機能が進化したことで“メイクの枠を越えた価値”に言及している点も新しい。ここでは各社の最新技術とともに紹介する。
号泣しても美しい
圧倒的ラスティング力の“耐久マスカラ”
カネボウ化粧品の「ケイト」から3月21日に誕生するアイメイクライン“号泣の涙神(るいしん)”シリーズ。まずネーミングにインパクトがあり、涙がひとすじ流れる広告ビジュアルも印象的である。
経験のある人も多いと思うが、泣いたあとのメイクは、たいがいひどい有様になる。涙でマスカラは流れ落ち、目元を拭う動作でこすれ、黒い筋になることもあるだろう。そんな場面においても美しさを保ち、泣くという心の底からの“感情の動き”を肯定する、コンセプトも斬新だ。
濡れても、こすれても落ちない耐久力のために、花王が開発したのは世界初の「耐久防壁成分」。3種類の皮膜剤を組み合わせ、糸を引くような粘度のあるテクスチャーを実現し、毛先までまつ毛1本1本を包み込む。なじんだあとは、強固なネットワークを形成し、カールを維持すると同時に、汗や皮脂からまつ毛を守り抜いてくれるのだ。
仕上がりは孔雀のように四方にパッと広がるシルエットを叶え、目元に華やかさを添えてくれる。適度なボリュームとカールが、強固なフィックス力で持続するのも特長だ。そして何より、このマスカラがユニークな点は、実際に“号泣耐久テスト”を行っていることである。
テスト参加者はマスカラを塗布したのち、動物系や家族系などジャンルの異なる数本の動画(平たく言うと“泣ける動画”)を30分視聴。泣いたあとも上記写真の通り、つけたての仕上がりを維持している。“落ちない”という機能を通してあふれる感情を肯定し、メイクの先にある価値を示してくれる希有な製品だと思う。
美カールとお湯オフの両立
長年の課題に挑む独自テクノロジー
「カールを長時間キープすること」と「お湯で簡単にオフできること」は、一見簡単そうで実は両立が難しい、マスカラの技術的課題だった。この難問に回答を導き出したのが、資生堂が開発した“ウオッシャブル ロック テクノロジー”である。
なぜ両立が難しかったかというと、カールを維持するには油性の強固な皮膜が適しているが、落とすためにはクレンジングが必要だ。一方で、お湯でするんと落ちるフィルムタイプは、水溶性の基剤を用いるため、カールの持続力に限界があった。
この相反する課題に対して、ウオッシャブル ロック テクノロジーは、“形状保持プロテクター機能”と“お湯センサー機能”により、両立を可能にしたという。
異なる機能を持つ成分を組み合わせた独自のポリマーは、まつ毛に塗布すると適度な固さを持つ皮膜となり、カールをキープ(=形状保持プロテクター機能)。さらにメイクをオフする際には、お湯に触れると膨潤する成分が皮膜をゆるめ、軽くこするだけで自然にオフできる(=お湯センサー機能)。
実際にウオッシャブル ロック テクノロジーを搭載した「マジョリカ マジョルカ(MAJOLICA MAJORCA)」の“ラッシュエキスパンダー ネオラッシュ”を試してみると、確かにまつ毛1本1本を捌いた上で、すらりと長い上向きのカールが手に入る。バリッと固まることなく、まつ毛がしなやかで軽いのも特長だ。さらに、お湯でするっと落ちる機能にも驚いてしまった。
“キレイ”と“楽ちん”の両立は、忙しい女性にはありがたい限り。生活上の小さなストレスから解放される喜びがある。この技術はマスカラだけでなく、アイメイク全般やUVケア等にも応用可能とのことで、今後の展開に期待したい。
“最高峰の素まつ毛”という
難易度の高い美しさへの挑戦
“塗るつけまつげ”シリーズにおいて、4タイプのマスカラを展開する「デジャヴュ(DEJAVU)」。すでにボリュームから短いまつ毛用まで、さまざまな製品が充実する中で、今回目指したのは、“素まつ毛の延長線上にある、最上級の美しさ”であるという。実際のところ、これはなかなか高度な課題だ。
ナチュラルだけれど、地味にならない。盛らないけど、パッチリ目元を際立たせる――。そのためには、根元は濃く毛先にいくにつれ先細る“究極の美フォルム”が必要になる。そのために開発したのが、独自の「ジェル状フィルム液」だ。
ブラシを根元に置いた時点ではたっぷりとつき、毛先へとすべらせる圧力によって、ジェルがほどけて、なめらかに広がっていく。このジェル状フィルム液を採用した“フォルミングラッシュ グロウブラック”は、塗布するだけで確かに根元は濃く、毛先にいくにつれ先細りするシルエットが叶う。一般的なマスカラに比べ、約70%も先細りするというから驚きだ。
実際に使ってみると、確かに根元はアイラインを引いたようにくっきりした印象になり、先端は細く長い繊細なシルエットになる。まるでもともとの自まつ毛が長かったかのような、“素まつ毛の最高峰”と呼びたい仕上がりである。
今回の3品は、いずれも“仕上がりの美しさ”“化粧持ち”という点で、素直に感動があった。さらに、メイクの枠を越え、「泣いてもいい」「キレイで楽ちん」「最高な状態の素の自分」という、心に響く価値をもたらす存在でもある。何より感動的なのは、このような最先端の技術が、プチプラのマスカラに搭載されていることだろう。これらを踏まえ、今シーズンはプチプラのマスカラを推したい気持ちでいる。「使わないのがもったいない」と、心から思うほどに。