LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は2月9日(現地時間)、同日付でグループの香水・化粧品部門の会長兼最高経営責任者(CEO)にパルファン・クリスチャン・ディオール(PARFUMS CHRISTISN DIOR)の会長兼CEOを務めるヴェロニク・クルトワ(Veronique Courtois)を任命したと発表した。クルトワ氏は今後、パルファン・クリスチャン・ディオールでの職務を継続しながら、ゲラン(GUERLAIN)、LVMHフレグランスブランズ(LVMH FRAGRANCE BRANDS)、ケンドー・ブランズ(KENDO BRANDS)を加えた4組織の傘下にある計16ブランドで構成されるLVMHのビューティ事業全体を統括することになる。併せて、グループのエグゼクティブ・コミッティーにも加わる。
LVMHは声明で、「クルトワ氏はLVMHのビューティメゾンで培った豊富な経験を背景に、パルファン・クリスチャン・ディオールの事業とブランド価値を大きく高めてきた。彼女の経験とリーダーシップは、管掌する各メゾンにとって重要な資産となる」と述べた。
クルトワ氏は、パルファン・クリスチャン・ディオール以前にゲランの事業拡大を手掛けた経歴を持つ。LVMHのベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼CEOは、クルトワ氏が製品およびブランドイメージを統括した7年間で、メゾンの魅力を大きく高めた点を評価しており、メンズフレグランス“ソヴァージュ”の成功をその代表例として挙げている。キャリア初期には、資生堂子会社のボーテ・プレステージ・インターナショナル(BEAUTE PRESTIGE INTERNATIONAL)でも経験を積んだ。
クルトワ氏は、23年3月から同部門を率いたステファン・リンデルクネッシュ(Stephane Rinderknech)氏の後任となる。リンデルクネッシュ氏は新たな個人的プロジェクトに取り組むためグループを離れる。なお、それ以前は同部門を単独で統括するトップは長年不在で、最後にその役職を務めたのは、04年に退任したパトリック・ショエル(Patrick Choel)氏だった。リンデルクネッシュ氏は、LVMHホスピタリティ・エクセレンス部門も統括していた。
LVMHが香水・化粧品事業を一人の経営幹部の管轄下に置いた背景には、ニッチブランドの台頭をはじめとする競争環境の激化がある。現在も、ニッチおよびインディーズブランドの成長や新興プレーヤーの伸長により、競争は一段と激しさを増している。
なお、リンデルクネッシュ氏は22年にロレアル(L’OREAL)からLVMHに入社。LVMHホスピタリティ・エクセレンス部門の会長兼CEOを務めた。キャリアの大半をロレアルで過ごし、北米ゾーン社長、ロレアルUSA CEO、グループのエグゼクティブ・コミッティー・メンバーを歴任していた。
LVMHグループのステファン・ビアンキ(Stephane Bianchi)=マネージング・ディレクターは、「リンデルクネッシュ氏はホスピタリティ事業の成長に大きく貢献した後、その専門性をビューティ事業にも生かしてきた。彼の功績に感謝するとともに、今後の成功を祈っている」と述べた。
今回のビューティ部門のトップ交代は、市場全体が堅調に推移する中、同部門の成長が相対的に伸び悩む局面での動きとなった。LVMHの25年12月期決算は、香水・化粧品部門の売上高が前年同期比2.9%減の81億7400万ユーロ(約1兆3941億円)だった。一方、25年の世界のビューティ市場は、4〜4.5%の成長が見込まれている。
こうした中、LVMHが「フェンティ ビューティ(FENTY BEAUTY)の株式の持ち分50%の売却を検討しているとの報道や、昨年9月にKVDビューティ(KVD BEAUTY)を米投資会社ウィンドソング・グローバル(WINDSONG GLOBAL)に売却したことを受け、ケンドー・ブランズ傘下のカスタムリップブランド「リップ・ラボ(LIP LAB)」やスキンケアブランド「オーレ・ヘンリクセン(OLE HENRIKSEN)」の動向にも、業界の関心が集まっている。
LVMHは同日、ベルナール・アルノー会長兼CEOの長男で、グループのイメージおよび環境担当ディレクターを務めるアントワン・アルノー(Antoine Arnault)氏がエグゼクティブ・コミッティーに加わることを発表した。アントワン氏は20年以降、イメージ、コミュニケーション、サステナビリティに関するプロジェクトを統括している。
アントワン氏は、24年パリ五輪におけるLVMHのパートナーシップを主導したほか、グループの職人技を紹介するイベント「レ ジュルネ パルティキュリエール(Les Journees Particulieres)」を創設。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の主要なコミュニケーション施策を手掛け、「ベルルッティ(BERLUTI)」をメンズウエアを代表するメゾンへと成長させた。
LVMHは声明で、「サステナビリティへの強いコミットメントを持つアルノー氏の専門性は、環境および生物多様性の保護を目的とした取り組みの継続において不可欠であり、環境パフォーマンス計画“ライフ360(Life 360)”の中核を担う」としている。