ファッション

「プラダ」のタイトシルエットに潜むパーソナルな痕跡    不確実な未来に立ち向かうテーラード

プラダ(PRADA)」はミラノ・メンズ・ファッション・ウイーク期間中の1月18日、2026-27年秋冬メンズ・コレクションを現地で発表した。ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)が掲げた今季のテーマは“BEFORE AND NEXT(過去と未来)”。2026年春夏コレクションが現実から逃れる“解放”や“楽観”を描いたとすれば、今季は一転、不確実との“対峙”へと舵を切った。

ランウェイで目を引いたのは、縦に引き伸ばされた極めてシャープなテーラリングだ。コートのシルエットは、徹底してナローなIライン。窮屈なほどにタイトなシルエットは、「先が見えない不安な時代において、何かの支えになるように」というラフとミウッチャの意思の表れだ。身体にぴたりと寄り添うシルエットは、物理的・精神的に「守られている」という感覚をもたらす。

その隙のないシルエットには、意図的なノイズが潜む。コートの袖口から、だらしないほど長く飛び出すシャツのカフス。シャツの身頃には、アイロンの焦げ跡やカビ、食べこぼしのような生活の痕跡が残る。パディング入りのレザージャケットやコートには、手作業によるシワ加工を施し、使い込まれた表情を宿した。過去を捨て去るのではない。コートやジャケット、シャツ、ニットといった普遍的なユニフォームにもパーソナルな“痕跡”を刻むことで、そこに安心感が生まれる。

剥がれ落ちる未来、未完成の「可能性」

コレクションの時間のベクトルは、過去から未来へ。着用を続けることで表面のコーティングが剥がれ、ウールのガンクラブチェックが露わになっていくステンカラーコートも登場した。また、徹底してナローなパンツの足元には、まるで裾上げをしていないかのようなクッションがたわむ。服は、新品の状態から手を加えたり、パーソナルな経験と時間を重ねるたりすることによって、その人だけの服へと変化し、完成されていくという考え方がある。この“経年変化”のような、いわば服に秘められた「未来の可能性」を、現在に可視化した試みと捉えられる。

アイロンの失敗跡、剥がれ落ちる塗装、未完成の裾。「プラダ」がこれらを媒介して表現したのは、私たちのごく個人的な体験や記憶の重要性。こういったパーソナルな“痕跡”の積み重ねこそが、不確実な未来に立ち向かう拠り所になるというメッセージだ。

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