毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年12月22日&29日合併号からの抜粋です)
村上:創業90周年の吉田カバンを特集しました。アイコンシリーズ“タンカー”を昨年サステナ素材に切り替え、海外進出にも意欲的です。高付加価値なモノ作りは、業界にとってヒントになるのでは?と考え、企画しました。
津布久:中学生の時に自分が欲しいと思って初めて買ったバッグも、最初のビジネスバッグも「ポーター」です。普段は広告制作が主ですが、本紙で初めて作る特集が吉田カバンで、うれしかったです。
村上:思った以上に“浅草橋のカバン屋”で驚きました。カッコいい人たちが働いているし、魅力的なコラボレーションも目白押しですが、オフィスの2階には山積みの段ボールの中で作業している人たちがいて。昔バッグ担当として浅草橋の老舗メーカーを取材していたときを思い出しました。今年の夏にスタイル(旧ヨシナガ)が事業停止するなど、浅草橋界隈のプレーヤーは確実に減っているのに、吉田は進化と発展を続けています。聞けばいまだに卸の方が多いそうで、“浅草橋のカバン屋”的商売も脈々と続いています。
社員全員に
“職人第一”イズム
津布久:78年間、吉田のカバンを作り続けている93歳の職人を取材しましたが、「モノを作るのが楽しい」と語っていたのが印象的でした。“タンカー”の企画から入っていた人で、吉田では社員全員に“職人第一”イズムが継承されているそうです。
村上:90周年の展覧会のテーマは“伝統と革新の継承”でした。その使命は、見たことのないカバンを作ること。「植物製ナイロンを使ったカバンを作ってみたい!」から、“タンカー”を刷新し、「もしカバンに香りがあったら?」「持ち手が柔らかくなればストレスが軽減できる?」など、売れるモノを考えるのではなく、今なお“まだ見ぬカバン”は生み出せるに違いないと思って開発しています。クラフツマンシップの伝統と真摯なモノ作りだからこそ生まれる革新が継承されているんですよね。
津布久:「ポーター」は訪日客にも人気ですが、特に欧州の人に好かれているのは納得です。
村上:最近はメンズ・ファッション・ウイーク期間中にパリで展示会をしていて、「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」創業者のラムダン・トゥアミや「セシリー バンセン」とコラボするなど、職人文脈がありながらもやっぱりオシャレです。日本発のグローバルブランドとしても期待です。