上下をデニムウエアでそろえる“デニムonデニム”の装いが、新たなステージを迎えつつあります。流れは“脱イージー”。ラフなイメージが強かったデニムルックを、ドレッシー&スパイシーに着こなす提案が勢いを増しています。モード界からは格上げ志向のコーディネートが打ち出され、“デニムonデニム”は変革期に突入したようです。
「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」のデニムジャケットは、上下をひっくり返し、さらに肩や袖を余らせたかのような、パズル仕立てのデザインが特徴です。トロンプルイユ(だまし絵)のようなトリッキーさが、サプライズをもたらします。古着のパッチワークを思わせるたたずまいもあり、手の込んだ趣向とウィットに富んだ着想が、デニムルックの枠を超えた構築美へと導いています。今回は、パリやミラノのランウエイから、先端的なデニムコーディネートをピックアップしました。
ファー&ビジューで魅せる
ラグジュアリーデニム
デニムルックにはカジュアルなイメージがありますが、リュクスな印象をまとったゴージャス仕様のアレンジは、意外性に満ちています。決め手となるのは、ファーやビジュー。襟周りやカフス、裾などに配して、グラマラス感をアップ。“ハイ&ロー”のミックステイストが際立つ装いです。
「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」のデニムルックは、きらびやかでゴージャスなたたずまいが印象的です。オーバーサイズのシャツの縁にはファーをトリミングであしらい、ランジェリートップスを合わせてセンシュアルな風情を演出しました。ウエスト部分が2枚重ねになったデニムパンツには、全体にビジューをちりばめ、華やかさを強調。足元もファー仕立てのシューズを選び、ニット帽で抜け感を添えました。
エレガンスへと昇華する
ドレッシーデニム
ストリート色の強いデニムonデニムですが、近ごろはエレガント寄りのスタイリングが提案されています。バッグやベルトまでそろえたトータルコーディネートも登場し、デニムをドレッシーにまとう新発想のルックとして注目を集めています。
「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」は、ジャケットの襟にパールモチーフをぎっしりあしらい、華やかさを演出しました。おそろいのバッグからはベルトを長く垂らし、優雅な落ち感を漂わせています。共布のベルトにもパールモチーフを施し、リッチな印象をプラス。片耳アクセサリーやシャイニーなシューズが、装い全体にきらめきを添えています。
タフ×フェミニンの
ダブルミーニング
強さがファッションにおける重要なテーマに浮上してきました。タフさを前面に押し出しながら、フェミニンさを交差させるダブルミーニングの表現が、新たな趣向として注目されています。もともとワイルドなムードを備えるデニムは、こうした試みに格好の素材です。
「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のデニムルックは、細身でシャープなシルエットが印象的。適度にシワやダメージ加工を施すことで、力強いイメージをまとわせました。ゴツめのグローブはモーターサイクルを思わせるハードな表情。一方で、黒のストッキングとシャープなパンプスを合わせ、膝から下にレディーなニュアンスを漂わせています。
ショート丈で描く、
攻めのシルエットバランス
ショート丈のデニムジャケットは、装いにアクティブな印象を引き出します。ローライズパンツと組み合わせることで、斬新なシルエットバランスが生まれます。肌見せ部分が増える分、ネックレスやベルトなどの小物で装飾を加えると、上品に肌感を調整できます。
コンパクトなジャケットで動きを出したのは、「ディースクエアード(DSQUARED2)」。大きく開いたウエストゾーンに、超ワイドなデニムベルトを巻いて、ウエストのくびれを際立たせました。錠前を連ねたディテールが一段とアイキャッチー。濃いインディゴジャケットと、ダメージ加工を施したパンツのコントラストもくっきり。ゴージャスなアクセサリーが、デニムルックに華やかさを添えています。
色・風合いで上下に“ずれ感”を生む
進化系コーディネート
上下で同じ生地を用いたデニムルックが多い中、あえて風合いの異なる素材を引き合わせるコーディネートも現れています。異素材のマッチングが互いを引き立て合い、古着を取り入れたスタイリングにも好相性なアレンジです。
色落ち加減の異なるアイテムを上下で組み合わせたのは、「ディーゼル(DIESEL)」。ジャケットはスタンドカラーの珍しいタイプで、膝上まで届くロング丈もデニムでは異例の存在感を放っています。一方、パンツはウオッシュが深くかけ、フェード感を際立たせました。ジャケットの着丈とパンツの丈感が相まって、縦長のシルエットを印象付けています。
見慣れた印象のあるデニムonデニムも、いまやバリエーションは多彩です。今季は、従来のカジュアルさから一歩踏み出し、ドレッシーあるいはスパイシーに整えるスタイリングが主流。手持ちのデニムウエアに磨きを掛けるつもりで、新たなコーディネートに挑戦してみてはいかがでしょうか。