米ニューヨークのファッション学校パーソンズ・スクール・オブ・ファッション(Parsons School of Fashion)は、ニューヨーク・ファッションウイーク開催中の9月14日(現地時間)、ファッションデザイン・社会学修士課程の2025年卒業コレクションを発表した。今年の卒業生グループ“ジェネレーション14”は、世界10カ国から集ったデザイナー、アーティスト、起業家からなる同プログラムの14期生だ。
フィオナ・ディフェンバッハー(Fiona Dieffenbacher)=パーソンズ・スクール・オブ・デザイン ファッション学科の准教授は、「今回のグループは、これまでで最も国際色豊かなメンバーだ。それぞれの文化的背景を活かしながら、グローバルな視点をファッションやアイデンティティー、クラフトにもたらし、表現した」と話した。
グローバルな視点を反映したコレクションを披露
ジャカルタで育ったカリナ・ナシワ・バクリ(Karina Nasywa Bakri)は、建築家の父に捧げるコレクションを制作。インドネシアの伝統を、鮮やかなカラーと幼少期の夢を具現化したものと融合させた。
ニューヨークを拠点に活動するススティレ・ブランク(Sustile Blank)は、2000年代のカルト映画的な、様式化されたダークファンタジーに着想を得た。ブランクはクィアとしてそうした世界に共感を覚えたという。
ブルックリンを拠点とするカミラ・ブスタマンテ(Camila Bustamante)は、彼女がペルーのリマで過ごした思春期の場面を切り取った。型破りなプロポーションで、10代の若者が、自分の体が変化していくこと、社会的な身体基準、そしてトレンドについて意識したときに感じるぎこちなさを表現した。ルックには、ネオプレン素材と日本のデニムを使用した。
中国生まれのダーハン・フォン・オアン(Dahan Phuong Oanh)は、スポーツウエアと女性性を融合させ、"極めてフェミニンでありながらも決して脆弱でない"アイテムでルックを構成した。
カナダ出身のジョンティー・カーム(Jontay Kahm)は、ネイティブアメリカンの伝統を称えながらもその境界を押し広げようとした。女性用のリボンスカートの概念を発展させ、ジェンダー規範に挑むメンズウエアコレクションを発表した。
イラン出身のディーナ・マフルーズ(Dina Mahrouz)は、彼女が10代の頃にサイズの合わない服を着ていた経験を基にコレクションを制作した。彼女はそうした衣服が肉体的にも精神的にも窮屈さを感じさせ、動き方や世界の受け止め方にも影響を与えたのだという。
アルメニア出身のアベル・マルティロシャン(Abel Martirosyan)のコレクションは、アルメニアの民族衣装にインスパイアされた。過去を振り返るのではなく、過去から新しいものを構築する試みだという。
上海に拠点を置くミカエル・モー(Mikaeru Mo)は、高機能のアウトドア用アイテムと洗練されたメンズウエアを組み合わせた。エレガンスと実用性を両立させながら、テクニカルなディテールを取り入れ、都市生活から過酷な環境までシームレスに対応できる衣服を作ったという。
エクアドルにルーツを持つキンバリー・オルテガ(Kimberly Ortega)は、物語を語りながら、文化的美学を融合し、そして作業着を個人的で表現力豊かな視点で再解釈することをテーマにした。
アレハンドラ・パラ・パロディ(Alejandra Parra Parodi)は、1970〜80年代の男性優位のラテンアメリカ文学ブームにおいて周縁化された女性作家らに着想を得た。レザーとイラカパームという、異なる地域からの素材を組み合わせ、当時の女性らが体現した"感性と知性における緊張"を表現した。
イタリア出身のフランチェスカ・サリス(Francesca Salis)は、サルデーニャの伝統衣装と現代的なシルエットを融合させた。コレクションでは、シルク、レザー、シフォン、リサイクル素材などを用い、ドレーピング、手縫い、レース細工などの技法が見られた。
カルフォルニア州で生まれ育ったリリアン・タトル(Lillian Tuttle)のコレクションは、ピエロの衣装に関するリサーチに基づいていた。タトルは、「人生には遊び心が必要だ。日常の服装にも、"ピエロの遊び心"を取り入れたい」と話した。
北京出身のインディ・ション(Yingdi Xiong)は、テキスタイルの廃材やかぎ針編み、構築的なシルエットで、カラフルで彫刻的なルックを制作した。各アイテムには、袖口や襟の構造を保つためにかつて使われた、砂糖水での硬化という中国伝統の技法が用いられた。
イラン出身のマリヤム・ヤズダンパナ(Maryam Yazdanpanah)は、彼女が名付けた6人の戦士のために仕立てたコレクションを発表した。ヤズダンパナは、彼女の制作した衣服を身にまとうことが、自分自身の戦士の精神を受け入れることになると説明している。
台湾出身のチーアン・ユー(Chi-An Yu)のコレクションでは、トレーシングペーパーと布を接着して制作した衣服が登場した。スーツは再形成され、ユニホームは解体され、紙は重みを帯びた素材へと変えられていた。ユーは、「服は私の手紙であり、切り、折り、縫い込まれている」と語った。