ユニリーバ(UNILEVER)の2025年度上半期(1〜6月期)決算は、売上高が前年同期比3.2%減の301億ユーロ(約5兆1772億円)、営業利益は同10.6%減の53億ユーロ(約9116億円)、純利益は同5.1%減の38億ユーロ(約6536億円)の減収減益だった。同社によれば上半期の減収は、アイスクリーム事業の分離コストと為替のマイナス影響によるもの。M&Aや為替などの一時的要因を除いた基礎売上高は同3.4%増、基礎営業利益は同4.8%減だった。
3月から最高経営責任者(CEO)を務めるフェルナンド・フェルナンデス(Fernando Fernandez)は、「上半期の実績は、通期の成長に向けて順調な滑り出し。下半期はアジアを中心に新興市場での成長の加速と、先進国市場での勢いの持続を見込んでいる」とし、「今後の優先事項は明確だ。ビューティ&ウェルビーイング、パーソナルケア部門の強化、米国およびインドへの重点的な投資、そしてプレミアム市場とデジタルコマースへの注力だ。主力ブランドの競争力を高め、あらゆるチャネルで成果を出せるマーケティングと営業体制を構築。売上高の安定的な成長と粗利益率の改善を目指す」と語った。
第2四半期の基礎売上高は同3.8%増の154億ユーロ(約2兆6488億円)と、第1四半期の同3%増と比べて加速。フェルナンデスCEOは、「第2四半期の売り上げ改善は、先進国市場での好調な業績と、新興市場で講じた対応策によるものだ」と述べた。発表を受けて7月31日、同社の株価は約1%上昇し44.96ポンド(約8902円)となったが、その後は0.7%下落して44.25ポンド(約8761円)で取引を終えた。
ウェルビーイングカテゴリーは21四半期連続2ケタ成長
上半期におけるビューティ&ウェルビーイング部門の売上高は全体の21%を占め、基礎売上高は同3.7%増加した。「ウェルビーイングの継続的な好調」が成長をけん引し、「ビューティは伸び悩んだ」という。
同部門内のヘアケアは横バイ。「ダヴ(DOVE)」は、ファイバー補修技術やパッケージの刷新を含む“本格的なリニューアル”により中程度の成長を遂げた。一方で、「クリア(CLEAR)」の中国市場での成長鈍化や、「トレセメ(TRESEMME)」の出荷量減少により相殺された。
スキンケアは1ケタ台前半の成長を記録。「ヴァセリン(VASELINE)」と「ダヴ」が2ケタ成長したが、ユニリーバが事業の“立て直し”を進めているとした中国とインドネシアでの減速により一部相殺された。
ウェルビーイングは21四半期連続で2ケタ成長を達成。顆粒状サプリメントブランド「リキッド I.V.(LIQUID I.V.)」と高級育毛サプリメントブランド「ニュートラフォル(NEUTRAFOL)」がけん引した。
プレステージビューティは横バイ。「アワーグラス(HOURGLASS)」「タッチャ(TATCHA)」「K18」は2ケタ成長したが、「ポーラチョイス(PAULA'S CHOICE)」と「ダーマロジカ(DERMALOGICA)」は落ち込んだ。同カテゴリーの基礎営業利益は同3.7%減の13億ユーロ(約2236億円)で、イノベーションと市場開拓を後押しするための投資が利益を圧迫した。
米国に初のフレグランスラボを開設
同社はビューティ&ウェルビーイング部門において、戦略の3本柱を定めた。1つ目は、ブランド力の強化によるヘア&スキンケアの“プレミアム化”。2つ目は、プレステージビューティおよびウェルビーイングのグローバル展開促進。3つ目は、イノベーションとソーシャルメディア主導の顧客接点強化による競争力向上だ。
7月23日、ユニリーバは同部門の成長を加速させるため、米コネチカット州トランブルの研究開発拠点内に、同社としては米国に初となるフレグランスラボを開設した。これは、1億ユーロ(約172億円)を投じたフレグランス事業の研究開発強化プロジェクトの一環で、トップ調香師や科学者らが集う、デジタルを軸とした協業スペースと位置づけている。
パーソナルケア部門も好調
パーソナルケア部門の売上高も全体の21%を構成し、基礎売上高は同4.8%増加した。「ダヴ」のデオドラントやレンジング製品が1ケタ台後半の成長を遂げた。
また、生産性向上プログラムは計画を上回るペースで進行しており、年末までに6億5000万ユーロ(約1118億円)のコスト削減を見込んでいるという。
アイスクリーム事業の分離は完了した。新設したザ マグナム アイスクリーム カンパニー(THE MAGNUM ICE CREAM COMPANY)の株式公開は11月中旬にアムステルダムで行われる予定で、ロンドンとニューヨークでの重複上場も計画されている。
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