
オーストリアの繊維大手レンチング・グループ(LENZING GROUP)は、ファッション業界が直面する課題である「高い品質を保ちながら、より多くのリサイクル原料を取り入れることの両立」に対し、複合繊維という形でひとつの解決策を提示した。7月8~10日に開催された繊維・生地見本市ミラノ・ウニカで発表した。
今回の新技術では、マテリアルリサイクルされたコットン、シルク、ウールといった天然繊維に、「テンセルリヨセル」繊維を組み合わせることで、従来のリサイクル素材の品質のばらつきや安定性の欠如といった課題を克服し、「安定した商業レベルの品質を持つ生地へと変換させることを実証した」という。「テンセルリヨセル」繊維は、管理された木材や認証済みの木材を原料とし柔らかな手触りが特徴で、トレーサブルかつ資源効率の高い製造方法で作られ、優れた環境性能を示す「EU エコラベル」の認定を受けている。
このプロジェクトには、イタリアの紡績会社マルキ・エ・フィルディ(Marchi & Fildi S.p.A)、編物メーカーのマリフィーチョ・マッジャ(Maglificio Maggia)、織工会社のデストロ・ファブリクス(Destro Fabrics)、ニットウェア製造のマディヴァ(Madiva)が参加。用途や風合いに応じて、「テンセルリヨセル」の「LF」、「LFH」、「A100」といった各種繊維が活用されている。
レンチング・グループのカルロ・コヴィーニ(Carlo Covini)イタリア・スイス地域テキスタイルアカウントマネージャーは次のように語る。「多くのブランドが、リサイクル原料の使用拡大と品質基準の維持という相反する要件を前に、実用的なソリューションを模索している。『テンセルリヨセル』を、リサイクルされたコットン、シルク、ウールと組み合わせることで、従来ネックとなっていた品質の壁を乗り越えることが可能になる。これは単なる原材料のイノベーションではなく、消費者が求める高級品質を実現しつつ、ブランドが循環型ファッションに踏み出すための具体的な道筋だ」。
同社は特に重要な点として、このアプローチが循環型原材料のスケールアップという課題に対応していることをあげる。リサイクル繊維は、従来、品質上の懸念から、含有率が一部に限られていたが、用途に応じて、リサイクル含有率25%から50%の範囲で商業的な性能を維持することが可能だという。
「テンセル」ブランドの信頼性と、イタリアの製造ノウハウが融合した今回の取り組みは、「循環型×高品質」を求めるブランドにとって、現実的かつ実行可能な選択肢のひとつとなりそうだ。