ビジネス

新興企業が老舗を買収!名物社長が語る「これからのテキスタイルビジネス」

 新興テキスタイルメーカーの宇仁繊維は、京都に拠点を置く老舗コンバーターの丸増を買収した。かつてテキスタイルビジネスは、華やかなプリントを企画してアパレルメーカーに販売する、丸増のような京都の“プリントコンバーター”が花形だった。一方、創業者の宇仁龍一・社長が62才で創業した宇仁繊維は、自社で膨大なテキスタイルを在庫し、それを売り切る、従来の常識を打ち破る新しいビジネスモデルで急成長してきた。ピーク時に150億円を売り上げていた丸増も現在は、従業員数12人、売り上げは6億円に減少した。宇仁繊維は商圏と人員を丸ごと引き受けるとともに、老舗企業の再生を目指す。宇仁社長に丸増の買収とテキスタイルビジネスの今後を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):丸増とはどのような会社なのか?
宇仁龍一・社長(以下、宇仁社長):丸増は、京都のプリントコンバーターの名門企業の一つで、ピーク時にはテキスタイルだけで150億円の売り上げを誇っていた。合繊メーカーや紡績メーカーの生地に、華やかなプリントを付けて、アパレルに納入するプリントコンバーターといえば、テキスタイルビジネスの花形だった。しかし、アパレルの海外生産などの業界の構造変化に伴い、プリントコンバーターは90年代以降、一気に衰退した。丸増も、創業一族が手を引き、プリント生地部門のみが独立し、古河修平・社長のもとで3年前に再スタートを切っていた。

WWD:課題をどう見る?
宇仁社長:プリントコンバーターの課題は、“ファッション素材のサプライヤーになりきっていなかった”に尽きる。プリントコンバーターのビジネスのやり方は、在庫を持たず、アパレルメーカーに図案を提案した後に、受注生産して、数カ月後に納入するというもの。プリントが服の最も大きな付加価値の一つだった時代はそれでよかったかもしれないが、インクジェットプリントでどんな柄でも簡単に作れる現在、それで通用するわけがない。アパレルメーカーへのテキスタイルサプライヤーとしては、いかにも不完全だ。

WWD:どう再生するのか。
宇仁社長:当社は約3万点という膨大なテキスタイル見本を常時在庫し、注文があれば即出荷できる体制を築くことで、リードタイムを究極的にミニマイズするやり方を確立。日本の服地業界が年々縮小する中で、当社は創業以来ずっと増収を達成してきた。工場の廃業や撤退が相次ぐ中、当社は逆に自社工場を作り、コスト競争力のあるテキスタイルの生産を可能にしている。それに当社の従業員は20代が大半で、みな若い。長年の経験と勘が必要だと言われてきたこの業界では、これも異例のことだ。膨大な商品をそろえているから、経験がいらない一方で、逆にファッションが好きな若い人ならではの感性が武器になっている。取引先は大手アパレルから中小のデザイナーブランド、はては海外のブランドまでかなり幅広い。

WWD:買収の狙いは?
宇仁社長:当社は創業15年で、私以外の従業員の大半は20代と若い。一方、丸増の従業員は40~50代と業界経験が豊富で、長い間培ってきたテキスタイルビジネスのノウハウがある。考え方の面では徹底的に意識改革を促す一方で、そうしたノウハウが融合すれば、非常に大きな力になる。宇仁繊維本体も、かれらのテキスタイルの企画開発力を生かすことができれば、グループ全体のパワーの底上げにもなる。彼ら自身は大手アパレルとのネットワークもあり、その部分を宇仁繊維グループとして強化するという戦略もある。宇仁繊維は、創業15年でグループの年商は70億円になった。3年後には120億円を目指したい。

PROFILE:
宇仁龍一(うに・りゅういち):1937年1月12日生まれ、77才。兵庫県西脇市出身。西脇工業高校卒業後、1955年に祖父が創業したテキスタイルメーカーの桑村繊維に入社。1999年に同社を定年退職後、62才で宇仁繊維を設立。現代美術家の横尾忠則とは高校の同級生

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

韓国ブランドの強さに迫る 空間と体験、行き渡る美意識

日本の若者の間で韓国ブランドの存在感が増しています。K- POP ブームが追い風ですが、それだけでは説明できない勢い。本特集では、アジアや世界で存在感を示すKブランドや現地の人気ショップの取材から、近年の韓国ブランドの強さの理由に迫ります。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。

メルマガ会員の登録が完了しました。