ファッション

ユニクロ柳井社長がパリで記者100人に熱弁 「ユニクロは美意識のある超合理性でできた服」

 「ユニクロ(UNIQLO)」は9月26日から29日までの4日間、パリでニットの展覧会「ザ アート&サイエンス・ オブ・ライフウエア クリエイティング・ア・ニュースタンダード・イン・ニットウエア」(The Art and Science of LifeWear Creating a New Standard in Knitwear)を開催する。前日の25日に行ったメディアカンファレンスには、18カ国から約100人が出席。柳井正ファーストリテイリング会長兼社長や、合弁会社のパートナーで「ホールガーメント(WHOLEGARMENT)」ニット機メーカーの島精機製作所の島三博・社長らが登壇し、インタビューに応じた。

 柳井社長は「『ユニクロ』の服は自らの手で個性を組み立てる日本の服だ。日本の高度技術で精緻に完成された商品を作っていることを実感してほしい。服は日常の生活を快適に過ごすための最高の部品。世界中の人が高品質の服を楽しみ、自分自身の個性を発揮できるようにしたことは、服に対する革命であり、民主主義だ」と唱える。

 フランスでは2009年10月にグローバル旗艦店をパリ・オペラにオープンしてから丸9年。14年にはマレ地区に小売り店として受賞もしたマレ店をオープン。フランス国内に25店舗、ヨーロッパ全体で75店舗を展開。グループ全体で世界3467店舗、売上高で約2兆1000億円、世界で年間に約13億枚を販売していると説明。さらに、「中国や韓国、東南アジアなどでナンバーワンブランドになったのに続き、来年はインドに出る。西南アジアでもナンバーワンになりたい。バングラデシュのダッカではソーシャルビジネスをしている。ダッカからニューヨークまで世界をつなぐ企業になりたい。こういう企業は世界唯一だと思う。今までのファッション、アパレルの概念を超えて、新しい洋服を作りたい」と語った。

 “LifeWear”というコンセプトについて、「人の生活を豊かにするための、美意識のあるシンプルで上質、細部に工夫をした、生活ニーズに即した服であり、進化する服だ。世界中の人が気軽に買えるライフウエアを提供したい」と前置きしたうえで、その理念は「メード・フォー・オール」にあると説明。「『ユニクロ』の服は、作り手ではなく着る人の価値観から作られた服。服そのものに進化をもたらす未来の服。美意識のある超合理性でできた服。あらゆる人の生活を良くしたいし、日本の完璧に最後までこだわる完成度を徹底的に追求していきたい。日本にある匠の文化、禅の思想、余分なものを極限まで削ぎ落した服。庶民の文化を芸術にまで高めた歌舞伎のように、本質的な価値のある服を作っていきたい。この考え方はフランスの文化と高い共通性がある。高価な素材を使った服、高品質な服は、登山家や特殊なスポーツ、一部の人のための服で、生産量も少ないため値段が高い。それを日常着に持ち込み、誰もが買える価格で信頼できる品質で世界中に提供した。人間の水分を熱に変えて暖める『ヒートテック』は、2003年からの発売以来、昨年までで累計10億枚以上を販売した。今回はニットだ。世界最高の技術と圧倒的なスピードで提供する。これが服の民主主義だ」と説明。

 さらに、「シンプル・メード・ベター」として、「単純なものほど完成度の高いものを作るのが難しい。余計なものを削ぎ落とした高品質・高機能の服。長く着られる服を目指して、愚直にひたすらまじめに、シーズンごとに改善を続けてきた。ファストファッションとは正反対のもの。持続可能であることがすべての前提。人類にとってもっとも大切な価値であり、本当に必要なことだと思っている。『ユニクロ』のステートメントは『服を変え、常識を変え、世界を変えていく』。世界に類を見ないユニークな存在だ。とくにニットに対する真剣な気持ちをぜひご理解いただきたい。世界中の人々にこの思いを伝えていきたい」と締めくくった。

 一方、島精機の島社長は、「日本の和歌山で一貫生産して、世界70カ国以上に横編み機を提供している企業だ。われわれの企業のスタートは1962年。軍手、ニットグローブを自動で編み上げる機械からスタートした。当時、作業者の手を保護するために世界中に広がった時期。ただし、手首と甲と手の平と指を別々に編んで一つ一つ手掛かりしていたため高価だったものを、効率化したかった」と「ホールガーメント」開発のきっかけを説明した。

 横編み機に進出したのは、「他の織機や丸編み機は糸から反物を作り、型紙で切り出し、縫い合わせて服にするものだが、横編み機は、糸1本から形にできるため、捨てる部分がないという大きな特徴がある。それを進化させたのが、『ユニクロ』にも採用してもらっている『ホールガーメント(WHOLEGARMENT)』だ。まるで3Dプリンターのような機械を23年前に開発した」という。

 「ユニクロ」と島精機は「ホールガーメント」誕生20年を機に、2016年に合弁会社イノベーションファクトリーを設立。革新的なニットウエアを世界で提供するため、今年あらためて戦略的パートナーシップを結び、取り組みを強化・進化させているところだ。

 島社長は、「『ホールガーメント』を含む横編み全体がサステイナブルにつながる。糸1本から作り上げ、捨てるところがないのが大きな特徴だ。加えて、ホールガーメントは縫い合わせることがないので、(作業も減るし)、縫い代がない分、軽くて着心地がいい。原料さえあれば、お客さまのお望みのことをすぐに作れる未来がある。追加生産やクイックレスポンスも含めて、未来の洋服の作り方の究極の形だ。社内のデザインシステムを活用して、より顧客が求めるデザインも作る。究極のクイックレスポンスもできる。これからのファッションビジネスはとても面白くなると思う」と述べた。

 柳井社長も「一本の糸から洋服になるのは革新的なこと。だが、まだまだ未開発だ。今からすごくすばらしい商品ができる。今までの服は全てパターンが2次元だったが、『ホールガーメント』では3次元で糸から作れる。しかもデジタル化して、直接お客さまの要望が工場に届き商品になり、店頭販売からネット販売まで全部カバーする。将来的には、お客さまの注文に応じて一つずつの商品を作れるようになる。極論すれば、工場から個々の人々に商品を送ることができる。『ホールガーメント』は服を作るための一番最適な手段になる。無限の可能性がある」として、IoT(モノのインターネット)によりマスカスタマイゼーションを可能にする最有力商材だと断言した。

松下久美:「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力小売企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルもカバー。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

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