ユニクロ柳井社長、働く女性に「野望のススメ」

アニバーサリーインタビュー

2018/7/9 (MON) 04:00
左から、尾原蓉子WEF名誉会長、柳井正ファーストリテイリング会長兼社長

 ファッション産業における女性の活躍支援を通し、産業全体の発展を目指す一般社団法人ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(WOMEN’S EMPOWERMENT IN FASHION以下、WEF)は、設立5周年を記念してシンポジウムを行った。「ユニクロ(UNIQLO)」の柳井正ファーストリテイリング会長兼社長が登壇し、柳井社長が「最も尊敬する女性」と公言する尾原蓉子WEF名誉会長を聞き手に、これからのファッション産業の在り方や自身の成功要因、女性活用について語った。対談の要旨は以下の通り。

尾原:「ユニクロ」の1号店となる店をオープンしてから、30数年がたちました。

柳井:僕の著作の「一勝九敗」にも書いた通り、「ひょっとしたらこういうことをやったらいいんじゃないかな」と思うことを実行してきた人生です。失敗することが常であり、失敗の中に成功のヒントがあるから必死に考える。それでもまた失敗はするんだけど、失敗することを考えるよりも、「ひょっとしたらうまくいくんじゃないか」と考えることの方が大事です。たとえば(2005年に)アメリカに初出店したとき、ニューヨーク郊外の(ニュージャージー州の)ショッピングモールに3店舗をオープンしました。当時、アメリカの人は「ユニクロ」を誰も知らない。売れなくて在庫処分が必要となったときに、ソーホーの本部そばに店を出してみたら、ショッピングモール3店舗分よりも売れたんです。本来はここが出店するべき立地だったのではないか、ここに世界最大の店を出したら売れるのではないかと考えて、3300平方メートルの物件をソーホーに借りました。一生懸命やったら誰かが助けてくれる人生だったし、ひょっとしたらうまくいくんじゃないかと考えてやってきました。

尾原:確かに、アメリカには「失敗しなさい、方向さえ間違えなければ全て学びになる」といった内容のことわざがありますね。

柳井:失敗が全て学びになる、とまで言うのはどうでしょう(笑)。自身を振り返ると、なんでこんなことをやったんだろうって思うような無駄な失敗ばかりです。例えば、(90年代後半に)「ユニクロ」を分解して(スポーツウエアショップの)「スポクロ」、(ファミリー向けカジュアルの)「ファミクロ」を出店しましたが、大失敗だった。考えたら当たり前です。分解したら3カ所まわって買い物しないといけない。1カ所で買えた方がいいですよね。でも、失敗するまでやってみないと分からない。ほとんどの人は失敗しないから分からないんです。仕事は自分の思い通りにはいかないものとして取り組んだ方がいい。将来、アメリカの成功した小売り企業みたいになれるんじゃないかなと思ってやってきました。そう考えて実践してきたことで、2018年8月期の売上高は2兆円を超える見込みです。ダイレクション(向かうべき方向)は失敗の中にある。僕がラッキーだったのは、親がこの仕事をしていて、それを継いだ。継いだからにはとことんやろうと覚悟を決めていた。アメリカの経営者で、「この人の話を聞いたら参考になるのでは」と思う人のところには、直接出掛けていって話を聞きました。

勉強よりも、もっと実践を

尾原:日本人は勉強はするが実践をしないとはよく言われますね。

柳井:まさにそうだと思います。(尾原さんが旭化成勤務時代に関わってきた)ニューヨークファッション工科大学の日本でのファッションビジネスセミナーに80年代に参加した際、一緒に参加していたのはほとんどが大企業の人でした。商社、問屋、繊維メーカー、量販店などの企業です。その人たちはセミナーを聞いても、結局実践には移さなかったんじゃないかと思う。それは非常に残念です。

尾原:自分を客観視することが得意だと公言していますが、客観的に見て自身の成功要因は何ですか?

柳井:誰も時代には勝てません。人のライフスタイルが変わることでファッションも変わっていく。(フォーマルが強かった)ファッション専門店を廃業した人が、「うちの店が無くなったのは世の中がカジュアル化したからだ」とかつて言っていました。僕はライフスタイルによって服は変わっていくと考えて経営してきた。ファッション業界で一番よくないと思うのは、変わり身がすごく早いことです。今シーズンはジュースの専門店だったのに、来シーズンはビールで、その次はウィスキーの専門店になる、といったことが多い。お客さんはその店に期待するものを買いにくるんだから、ジュース専門店ならずっとジュース専門店でいなければいけません。その時、その時でいい人に出会えて、チームに恵まれてきたというのも良かったと思います。あとは、実践を繰り返してきたというのもあっただろうし、運が良かったというのもあるかもしれません。

尾原:アメリカでは、ECを代表するアマゾン(AMAZON)と実店舗を持つウォルマート(WALMART)という2大勢力の戦いが激化しています。ファッションビジネスの10年後はどうなるでしょうか。

柳井:生き残るのは、自分のポジションにおいて求められることをやっているブランドやメーカーでしょう。自分はこの状況を厳しいとは思っていません。たとえばウォルマートは総合量販店であって、(「ユニクロ」のように)アイテムや分野に特化することはないし、ECはあくまでコミュニケーションの手段です。われわれはグーグル(GOOGLE)、アップル(APPLE)、騰訊(テンセント)などのプラットフォーマーのどことも競合することはないと思います。むしろあちらから一緒に組みたいと言われるでしょう。売り上げ全体に占めるECの割合はいま9%です。30%くらいまではいくでしょう。買う環境はいつでもどこでも可能、という形に整えていかないと生き残ることはできません。ショールーム型店舗は現時点で考えていません。ショールーム型店舗をやるより、ECでリアル店舗に近い体験ができる方がいいのでは。そこにリアルの店があることの意味を突き詰めて、お客さんのためになる店とは何かを考えるべきです。でも、ショールーム型店舗の実験だけはやってみたいですね。

尾原:日本でのイノベーションや起業について思うことは。

柳井:僕は日本にはイノベーションが結構あると思います。ただ、それを世界的な規模でやろうと思う人が少ないんじゃないでしょうか。今は違うかもしれませんが、日本のいいところは中産階級がたくさんいるということ。僕は最初からマスの市場を狙いました。東京の一角で新事業をやってみようではなくて、世界につながるという意識で行うといいのでは。莫大な消費のパワーがある東京は恵まれているし、東京は世界につながっています。(起業については)株式上場することで自己実現したと勘違いしている人がすごく多い。上場は出発点であって重要なのはそこから何をするかです。

柳井社長が一緒に働きたい人材

尾原:一緒に働きたいと思う人材は?女性の活躍という面では、目標よりも3年前倒しで女性管理職が全社員の31.3%に達しましたが。

柳井:一緒に働きたいのは、情熱を持っていて、専門性がある人。自分はこれができるという人でないと、ゲームに参加できないですから。同時に、言行が一致していて、それが正しくないといけない。また、周囲のことを考えて仕事をする人でないと、周りはついてきません。グローバル化とグループ化が、社内の女性活躍を後押ししています。女性は優秀で勤勉ですから、採用時に何も考えないと8割くらい女性を採ってしまいそうになります。でも、時間がたつとだんだんそれが変わっていく。(ライフスタイルの変化などの中で)課長や部長などの管理職に就くのが難しいという女性は少なくありません。でも、それだと自分がやりたい仕事の成果が出しづらいですよね。女性にはどんどんチャレンジしてほしい。出産、育児があるのは事実ですから、その期間が女性のキャリアのロスにつながらないように、自宅勤務でもいいから仕事を続けるべきだし、会社もそれを認めるべきです。(出産、育児などに関連し、働き方の)制度を作るとそれが固定化してしまう。会社、個人にとってメリットがあるならば、その都度、特例としてさまざまな働き方を認めていく形がいいのでは。僕は以前、このようなシンポジウムで男性に向けて「ボーイズ・ビー・アンビシャス」と伝えたことがあります。それは男性だけに向けたものではなく、女性に対しても「ガールズ・ビー・アンビシャス」と言いたい。野望が足りないと思う。(管理職就任などに対して尻込みし、避けるのではなく)やったらできるのではと考えて挑戦してみたらできることはきっとある。もし今の仕事が好きなら、自分の人生で仕事で達成したいことを突き詰めていけば、きっとうまくいくのではないでしょうか。

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