ファッション

仏語丸暗記で「マルジェラ」入社 「ミスターイット」ができるまで

 業界で話題の東京ブランド、「ミスターイット(MISTER IT.)」の砂川卓也デザイナーは、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」でデザイナーとして働いた経験を持つ。きわめてユニークな「マルジェラ」入社の方法から、そこで学んだことまでを紹介する。

WWD:「マルジェラ」で働こうと思った理由は?

砂川:学生時代からものすごく好きでとても影響も受けていたから。「マルジェラ」で働いている頃は毎日アーカイブをあほみたいに見ていました(笑)。

WWD:「マルジェラ」にはどうやって入社したのですか?

砂川:ポートフォリオと履歴書を「マルジェラ」に送っていました。かなり短いスパンで何回か送り、3回目でやっと電話がかかってきて、「来週、面接しよう」と言われ面接に行きました。

WWD:当時フランス語は全く話せないと聞きました。

砂川:はい。全くフランス語が話せない状態でした。フランス語の面接に備え、無茶苦茶完璧に準備していきました。日本語とフランス語を両方できる友人に、日本語で作った原稿を仏訳してもらい、さらに話してもらったものを録音し毎日聴いて丸暗記しました。それをそのまま面接で話し、聞き返されたときは「ウィーウイー」と言って笑ってごまかしました。

人の3~4倍働きインターンから社員へ

WWD:1週間で面接用の文言を丸暗記?

砂川:いいえ。その前からコンクールのプレゼン用に丸暗記はしていました。フランス人に「フランス語すごいうまいね」と言われるくらいにはなっていました。面接で「来週から」と言われ、まずはインターンで入りました。インターン初日に言われて印象的だったのは「この会社はインターンとか、社員とか全く関係なく、いいアイデアはどんどん採用していくから、遠慮せずにばんばんアイデアを出してほしい」ということ。懐の深さを感じたし、「アイデアをばんばん出したろ」と思いました。

WWD:インターンから社員になったのは?

砂川:3カ月後に上司に呼ばれ「パリに残りたいの?」と聞かれ「残りたいです」と伝えたら「これからは社員で」と言われました。

WWD:海外で働くにはビザが必要ですが、会社がビザを手配するのはかなり珍しいのでは?

砂川:絶対残りたいと思っていたので努力しました。ボスは海外出張が多く、1週間にやるべきことを彼がいる時に打ち合わせていたのですが、1週間のうち言われた仕事を2日間で全て終わらせ、あとの3日間で提案のために時間を費やしました。予想していることの3~4倍のことをして驚かせようと考えそれをやり続け、社長からも信頼を得られたと思います。インターン時代はプレ・コレクションを担当していましたが、社員になり、メーンコレクションと“アーティザナル”を担当することになりました。

「マルジェラ」で学んだことはブランドの在り方

WWD:「マルジェラ」にいたのが2012~15年ということは、当時、「マルジェラ」のデザインチームにいたデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)現「バレンシアガ(BALENCIAGA)」アーティスティック・ディレクターやジョン・ガリアーノ(John Galliano)=クリエイティブ・ディレクターと在籍期間は重なっていましたか?

砂川:デムナは最初の3カ月被っていましたがラインが違いました。ジョンは最後の半年間一緒に働きました。彼のロンドンで行った最初の“アーティザナル”までを手掛けました。

WWD:「マルジェラ」をやめたきっかけは?

砂川:そもそも2~3年しか働かないと決めていました。それ以上働いたら自分がやりたいことができなくなるなって思っていたから。そこから「ミスターイット」を立ち上げました。

WWD:「マルジェラ」で学んだことは?

砂川:服がどうとかではなくブランドの在り方です。「マルジェラ」はオフィスの扉を開けた瞬間から、花瓶も机も椅子も壁に飾ってあるものも全てが「マルジェラ」の空気感で徹底されています。また、働いているデザイナーにはそれぞれのマルジェラ像があり、受け取り方がすごく違うと感じ、とても面白いと感じました。

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