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ビューティ業界の次なるトレンド、“クリーンビューティ”って何?ポジティブなイメージの裏に潜む懸念も

 ビューティ業界では最近、国内外で“クリーンビューティ”という言葉を耳にすることが増えています。特に海外では次なるトレンドとして大きな話題になっており、メディアがクリーンビューティ特集を組んだり、クリーンビューティとうたうブランドが次々と登場しています。直近では資生堂傘下の「ベアミネラル(BAREMINERALS)」が今年“クリーンビューティ” ブランドとしてリブランディングしたほか、同じく資生堂が10月にクリーンビューティスキンケアブランド「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」を買収しました。大手化粧品専門店の「セフォラ(SEPHORA)」も昨年からクリーンビューティブランドを積極的に取り扱うようになりました。

 では、いったい“クリーンビューティ”とはどのようなものなのでしょうか?決まった概念がないのでここからは、あくまでも私個人の見解として読んで頂けると幸いです。クリーンビューティはいくつかの要素があるとされますが、ざっくり言うと(1)体に害となるような成分を含んでいない、(2)自然・天然の原料を用いている、(3)環境や動物に配慮している。これらを満たしている化粧品のことを指します。

 「クリーン」は直訳すると「清潔」を意味するので、元々は汚れたもの、つまりは「体に害となるもの」を含まないという(1)の概念を指すことが多い印象です。体に害を及ぼす可能性があるもの(賛否両論ありますが)で主流なのは、パラベンやシリコーン、フタル酸エステル、人工香料、防腐剤などですね。こういった成分が着目されたのは、ジムに通ったり、食事にこだわったり、健康に気を使う人が増える中で、肌に直接塗布する化粧品の成分にもこだわる人が増えたことが背景にあります。その影響もありケミカル=体に悪いと言うイメージが広まってしまい、その結果(2)植物性や天然の原料を用いることが増えていきました。だからクリーンビューティブランドとうたうブランドは、自然の恵みを生かした製品を作っている印象がありますね(もちろん、最初から植物に着目したブランドも多くあります)。ちなみに注意すべきなのは、処方が100%植物・天然成分で作られているとは限らないこと。中にはメリットがあり安全なケミカルを製品に配合しているクリーンビューティブランドも多くあります。

 そこからさらに進み、体に“優しい”処方であっても、環境に“優しくない”処方は、今の消費者はネガティブに捉えます。だから最近は(1)と(2)に加え、サステナビリティに配慮することもクリーンビューティの一部と捉えることが増えています。それはパッケージにプラスチックを使わない、もしくはリサイクル可能な素材を使うということだけでなく、製品を世に送り出すまでのプロセスだったり、使い終わった後のことも考えることです。例えば製品を作る工程で水の量をなるべく少なくしたり、使い終わった製品はレフィルする・空容器を回収するなど、その関わり方は多岐に渡ります。また、クルエルティーフリー(動物実験を行わない)だったり、ビーガン処方にもこだわるブランドもあります。

ナチュラルビューティとの違いは?

 ちなみに、ナチュラルビューティとクリーンビューティは何が違うのでしょうか?繰り返しになりますがどちらも決まった概念がないので、解釈は人それぞれです。私が個人的に思うのは、ナチュラルな化粧品は自然・天然由来成分を用いている化粧品のことで、その中でも厳しい基準を満たし認証を得たものがオーガニック化粧品です。でもそうすると天然由来成分を少量使い、そこに大量にケミカルを混ぜてもナチュラルと言えてしまいます。それに消費者が気づき始めたこと、また中身(つまり、成分)だけでなくパッケージや製造工程などにおいてサステナビリティを求めるようになり、クリーンビューティという概念が生まれたのでは、と思うのです。

 もちろん、(ナチュラルと一緒で)クリーンビューティの決まった定義はないので、(1)(2)(3)全てをクリアしなくともクリーンビューティと訴求するブランドもありますし、(1)→(2)→(3)の順で取り入れているとは限りません。レギュレーションや認証などがない分、ちょっとでも(1)(2)(3)を取り入れていたら、クリーンビューティと言ってしまえるのです。

 でもそれって、ちょっと危険な気がしてなりません。なぜなら、ブームに乗っかり、マーケティングのためだけに“クリーンビューティ”を乱用するブランドも多くあるからです。いわゆるグリーンウオッシングです。そこまで一般消費者は見分けられない、という意見もありますが、化粧品に興味がない人はそうかもしれません。でも、少しでも美容に関心があり、コスメが好きな人はこれからどんどん敏感になっていくと思うのです。今は手持ちの化粧品の全成分について解説してくれるアプリやサイトがあり、例えば韓国で有名なアプリ「ファへ」は成分の危険性などをランクづけており、それが一覧ですぐに見ることができます。そんな「ファへ」は圧倒的な支持を得ていて、アプリ上で危険な成分が多く含まれているとされてしまった化粧品は、びっくりするほど売れないらしいのです。だから企業も「ファへ」の評価にとても敏感になっていて、製品開発に生かしていると聞いたことがあります。もちろんこういったアプリも個々の責任で信用する必要があると思いますが、成分アプリを当たり前のように一般消費者が参考するようになったら、見分けもできてしまうのではないでしょうか。だからこそ真剣にクリーンビューティに取り組んでいる企業はその姿勢を積極的にアピールしています。

クリーンビューティ以外は悪なの?

 また、もう一つ懸念するのは、“クリーン”という言葉がポジティブな意味合いが強いこと。そうすると、クリーンビューティとは捉えないブランドは全て悪なのか?という疑問が浮かびます。もちろん、そうではありませんよね。天然素材=安全、ケミカル=危険といったイメージをさらに定着させてしまう気がするのです。ノンシリコーンシャンプーがはやったのも、シリコーンに対するネガティブなイメージが広まったからですよね。サステナビリティなどは今の時代どこのブランドも取り組むべきことだと思います。ただ、ケミカルでも安全な成分はたくさんありますし、強い刺激で働きかける植物成分だってあります。肌がそれを刺激として捉えるかは、人それぞれ。結局は自分の肌に合うかが一番なのだと思います。

 クリーンビューティという言葉や製品が出始めたばかりですので、これから定義が固まってきたり、レギュレーションもできたりするのかもしれません。それまでは、消費者が個人の責任としてブランドや製品について知った上で選ぶことが必要なのではないでしょうか。また、ブランド側も積極的に「どのようにクリーンなのか」をアピールするのもいいのかもしれません。先日「ベアミネラル」の発表会に伺ったのですが、彼らのクリーンビューティに対するスタンスはとても分かりやすく、素晴らしかったです。そのメッセージは店頭でも分かりやすく提示しているようで、お客からも質問されることが多いとのこと。また、セフォラは独自に設定した“クリーンビューティ”基準を設けており、それをクリアするブランドのみがセフォラの“クリーン”認証を得られるそう。メーカー、消費者、どちらにも責任がありそうです。

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