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最も影響力のある見本市が激変 サステイナビリティーはトレンドとしてではなく本気で取り組むべきこと

 9月17~19日にフランス・パリで開催されたファッション素材見本市「プルミエール・ヴィジョン(Premiere Vision以下、PV)では、例年に比べて明らかな変化が見られた。「サステイナビリティーに取り組むと商売の幅が広がる」から「サステイナビリティーに本気で取り組まないと商売にならない」へ――出展社からは焦りにも近い気持ちが伝わってきた。PVは各国の有力企業2000社以上が出展する世界で最も影響力のある素材見本市で、ラグジュアリーブランドからスポーツメーカー、グローバルSPAのデザイナーや素材担当者が必ず訪れる。

 サステイナビリティーがトレンドワードとなって久しいが、それがトレンドとしてではなく、本気で取り組むべき重要トピックに大きく流れが変わった。今回PVがサステイナビリティーの中でも“環境への責任”を全面に打ち出しその必要性を強く訴えかけたこともあるが、どうやら、出展企業を焦らせたのは主催者側の変化ではなく、取引先の変化にある。

 「変化のシーズンだと感じだ」と話す出展社もいれば「協業先から具体的にどう取り組むべきかの相談が格段に増えた。本気で取り組まなければいけない危機感が伝わる空気が流れている」という声が上がった。

「サステイナブル素材しか見ない」

 大きな影響力を持つ有力ラグジュアリー・コングロマリットのブランドはブースを訪れた際に「サステイナブル素材しか見ない」という姿勢だったというし、別のコングロマリットのラグジュアリーブランドは「サステイナビリティーの認証がないと買わない」と伝えてきたという。これまでも「サステイナブルな素材しか見ない」という客はいたが、その多くはブランドのサステイナビリティー担当者であり、テキスタイル担当やデザイナーからもここまでの声が上がることはなかった。

変化の背景にフランス政府

 その背景には、政治の力がある。フランスは2023年までに売れ残った衣料品の廃棄が禁止になることが決まり、また、8月に開催されたG7に合わせて「ファッション協定(Fashion Pact)」が発表された。

 「ファッション協定」はエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)=フランス大統領が、「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」を擁するケリング(KERING)のフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)会長兼最高経営責任者に対して、ファッションとテキスタイル関連企業トップと共に、環境に与える影響を削減するための実践的な目標を設定するミッションを与えたものだ。

 「ファッション協定」には、そのケリングをはじめ、「エルメス(HERMES)」「シャネル(CHANEL)」から「ナイキ(NIKE)」「アディダス(ADIDAS)」「プーマ(PUMA)」、「ザラ(ZARA)」を擁するインディテックス(INDITEX)、H&Mヘネス・アンド・マウリッツグループ(H&M GROUP)といったメーカーから、セルフリッジズ グループ(SELFRIDGES GROUP)やカルフール(CARREFOUR)、マッチズファッションドットコム(MATCHESFASHION.COM)やノードストローム(NORDSTROM)といった小売りまでが参加する。いずれの企業にも、50年までに温室効果ガス排出量ゼロを達成するアクションプランを作成し実践することが求められている。

 PVのパスカリーヌ・ウィルヘルム(Pascaline Wilhelm)=ファッション・ディレクターに「政府からの働きかけがあったか」と聞くと「ない」と即答したが、「PVはサステイナビリティーについて考える委員会には参加はしている。コミュニケーションはあるが、直接働きかけがあるわけではない」と答えた。フランス政府がサステイナビリティー追求に本腰を入れ、PVも足並みをそろえたことは明らかである。

 9月23日に開催される米国での国連気候変動サミットを前に20日、世界中の若者たちが、地球温暖化への対策を求めた抗議運動を行った。21日には国連ユース気候サミットが開催され、各国政府に一刻も早い対応を求めた。彼らジェネレーションZは、これからの消費を担う世代である。ファッション産業に関わる企業にとってその経済活動に責任が求められるだけでなく、サステイナビリティーに取り組むことが、もはや経営の基本的な姿勢になりつつある。