フォーカス

「ル・ポールのドラァグ・レース」から10年 ドラァグクイーン美の“女王”へ

 コントゥアリング、セルフタンニング、そしてハイライト。ドラァグクイーン界は、メイクトレンドを発信し続けてきた。「ル・ポール(Ru Paul)のドラァグ・レース」の初回放送から10年。ドラァグクイーンたちは今、美の“女王”となりつつある。

 「この戦いに勝つには、ドナルド・トランプ(Donald Trump)以上に野心的で、オプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)より偉大で、タイラ・バンクス(Tyra Banks)よりセクシーでなきゃダメなの」。

 ル・ポールは10年前、自身のリアリティーショー、「ル・ポールのドラァグ・レース」シーズン1の出場者に向けて、こんなエールを贈った。この番組は選ばれたドラァグクイーンたちが「アメリカズ・ネクスト・ドラァグ・スーパースター」の称号をかけて競い合うもの。2009年2月にアメリカのLGBTQ向けのTVチャンネル、Logo TVで放送されて以来、ドラァグ界における文化的なタッチポイントとなり、最新のシーズン11の視聴者数は、各回平均92万6000人に及んだ。10月にはイギリス版が放送予定だ。

 “女王”たちのレースにより、世界のトップ・ドラァグクイーンが注目を集めている。同時にネット上ではLGBTQ文化を賛美する現象が広がり、YouTubeでは俳優のカミングアウト動画が何度も再生されている。ドラァグクイーンはニッチなコミュニティー以上の存在となり、ポップカルチャーに大きな影響を与え始めた。「ドラァグ・レース」のエグゼクティブ・プロデューサー、ランディー・バルバート(Randy Barbato)は、ドラァグクイーンを「新たなポップスター」と評する。「最初は映画スター、その後ロックスター、ラッパー、スーパーモデルが現れた。今、ドラァグクイーンは、彼らに匹敵するスターになったんだ」とバルバートは語る。「彼女たちは非常に優れたアーティストだ。ファッション、美容、あるいはコメディなど、多くの分野で人々に訴えかけることができる。視聴者がドラァグ・レースに注目するのは、ワイルドで、奇抜で、おもしろい“何か”が起こっていると考えるから。アーティストと心でつながっていると感じるから、視聴者は番組から目が離せないんだ」。

 ドラァグクイーンたちは、トレンドメイクの源流でもある。コントゥアリングやセルフタンニング、ハイライトといったメイクを、どのユーチューバーよりも、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)よりも早くに取り入れたのは、彼女たちだ。

 9月6日に始まったドラァグクイーンの祭典「第3回ル・ポールの“ドラァグコン”NYC」の来場者に美容関係者が多いのも納得だ。「ドラァグコンは、コスメブランドやウィッグ、宝飾品、アクセサリー業界から注目されている」とドラァグ・レースのエグゼクティブ・プロデューサー、フェントン・ベイリー(Fenton Bailey)は話す。「番組の視聴者が増えるに従い、ドラァグコンに参加するブランドが、コルセットなどのマニアックなブランドから、メジャーなブランドへと広がった」という。今回のドラァグコンNYCには「ウェット・アンド・ワイルド(WET‘N’WILD)」などのブランドが出展した。「かつてのドラァグコンは、ドラァグクイーンを見たいというニッチなファン向けだったが、今は美容やアクセサリー、ライフスタイルの大きなイベントになりつつある」との声もある。

 ブランドとドラァグクイーンのコラボレーションも活発だ。彼女たちは、誰よりも美容用品を使うのだ。

 例えばマリア・バレンシアガ(Mariah Balenciaga)は、フルメイクに少なくとも50種類の製品を使う。とりわけスキンケアとアンチエイジングには、当初から気を使ってきた。「エイジング対策は、若い頃から欠かさなかったわ。パフォーマーは、顔が”売り”だから」とバレンシアガ。「パーフェクトスキンのためにレーザー脱毛やケミカルピーリング、毛穴洗浄もやったわ。おかげでエイジングでは、みんなより先に進んでいるわね」。

 キャメロン・マイケルズ(Kameron Michaels)も少なくとも30種類の化粧品を駆使している。顔には4種類のファンデーション。メイクのきっかけは、若い時のひどいニキビという。「ママはコンシーラーを買うために、私を百貨店まで連れていってくれた。ニキビを隠すためにね。男の時は、自分のあごヒゲがお気に入り。ドラァグクイーンになるときだけヒゲを隠してくれる魔法のようなクリームがあったら素敵ね」とマイケルズ。

 メイヘム・ミラー(Mayhem Miller)が初めてメイクしたのは、10歳の頃。「みんな想像もできないくらい大きなニキビに悩んでいたの。ニキビは潰れると、我慢できないくらい痛い。それを見たママがファンデーションを塗ってくれたの。私はすごく興奮して、ファンデーションを落とさなかった。ボトックス、美容整形、性転換、そして、それらが与えてくれる自信、全てが素晴らしいわ。私は美容整形を受けていないけれど、たくさんの手術を経験したようなメイクするの。ビッチに見られるのは、楽しいわ。日焼けした肌も、ハイライトも、アイラッシュもみんな大好きよ。メイクオフには、食器用洗剤を使っているの。食器を洗う手に問題がなければ、メイク落としに使ったっていいはずよ(笑)」。