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ファッション写真の新潮流とは? “身体に焦点、時々シュールなポージング”

ファッション写真の変化にいち早く注目し、21人の若手写真家たちとその作風に焦点を当てた作品集「Posturing」が少し前に話題になった。その編集を手掛けたのがロンドンを拠点に「ウォールペーパー(Wallpaper Magazine)」などでフォトディレクターを務めるホーリー・ヘイ(Holly Hay)と、同じくロンドンでファッションキュレーターとして活動するショナ・マーシャル(Shonagh Marshall)だ。現代の写真家たちが起こした新たなムーブメント「Posturing」と名付け、それを丁寧に切り取り「“身体”をどのように用いるか」を見所に編集している。作品集を手掛けたヘイとマーシャルに現代のファッション写真について聞いた。

WWD:作品集「Posturing」を出版することになったきっかけは?

ショナ・マーシャル(以下、マーシャル):ロンドンのサマセット・ハウスでヘアスタイリストのサム・マックナイト(Sam McKnight)のキャリア40周年を記念した回顧展「Hair」(2016年11月2日~17年3月12日の会期で展示された)のキュレーションを手がけた後、ファッション写真の新たなアプローチとして、ポーズや身体で表現している写真家たちがいることに気がついた。彼らは、グラマラスなムードや性を強調した従来のポーズに疑問を投げかけ、シュールなポージングを取り入れることで新たな美学を創出し、服のイメージを覆している。そのことを当時、雑誌「アナザーマガジン(AnOther Magazine)」のフォトエディターを務めていたホーリー・ヘイに共有し、対話を続けたところ一緒に作品集を制作することになった。作品集は、21人の若手写真家たちの作品に加え、ファッション撮影の過程などを幅広く紹介した。10人のファッション業界人をインタビューしたページでは、人種や身体、性別、制作工程、経済的な事情について語り合い、これまでのファッション写真のあり方に異議を唱えている。

ホーリー・ヘイ(以下、ヘイ):この作品集は、3部構成の協働プロジェクトへと発展した。(展示、映像作品、作品集の)3つの企画で構成したプロジェクトの第3弾で、ファッション写真における身体の見せ方に注目した。回顧的な要素は一切含まれていない。それより、今の時代のファッションビジュアルを特徴づけるような、素晴らしい才能に恵まれたフォトグラファーたちをピックアップして紹介した。そうした編集を行うことで、ファッション誌がかつて打ち出していたイメージについて話し合うきっかけを作れるのではと、とてもワクワクしたよ。

WWD:マーシャルの肩書きであるファッションキュレーターとは?

マーシャル:ファッションは、現代カルチャーに欠かせない重要な一部分。現代を映す鏡であり、社会や政治、経済など、さまざまな問題について話し合う機会を作ってくれるもの。キュレーションを通じて、そうしたファッションの魅力をもっと掘り下げたい。そしてファッションキュレーションは、要素を分解して物語を作ることを意味し、それはけっして現代アートでは成し得ないこと。キュレーターとして活動することで、身体に焦点を当てた「Posturing」のように、テーマ性のある対話を生み出すことができる。

気になるのはファッション業界に
進出する
社会派ドキュメンタリー写真家たち

WWD:良いファッション写真とは?

ヘイ:ファッション写真は周りの世界に影響を受けやすく、その時代のカルチャーを反映しているから面白い。特にいいファッション写真はその傾向が強く、私たちのやる気を起こさせたり、楽しませたりしてくれるのと同時に、ある既存のスタイルを大きくに変えてしまう可能性もある。

マーシャル:さまざまな要素が含まれるが、個人的にはストーリー性のある写真や、見た人に疑問を抱かせるような写真が良い写真だと思う。ホーリーは以前、世界を全く違った視点で捉え、今まで見たことのない方法でディテールや美を表現できる人を良いフォトグラファーと表現していた。私もその通りだと思う。彼らは自分たちの世界に私たちを引き込んでくれる。

WWD:衣服よりも身体やポーズにフォーカスした写真を選んだ理由は?

ヘイ:ポーズに対するアプローチはもちろん、被写体が身に着けている服や着こなし方にも目がいくような作品にも注目した。コレクションに登場したままのフルルックでなければ撮影してはダメだというブランドがいまだに多いが、作品集に登場する写真家やスタイリストたちは、新たなファッションイメージを生み出そうと挑戦し続けている。

マーシャル:全ての作品から、“ファッションはこうあるべき”という考えを覆すようなパワーを感じてほしかったから。

WWD:ファッション写真はどのように変化しているか?また変化の先にはどのような未来が待ち受けている?

ショナ:ファッション写真は常に変化しているもので、いつも私たちの身の回りで起きていることを表している。だから、透明性をもって私たちの周りの世界を記録し、コメントすることが求められているのかもしれない。

ホーリー:若手の写真家たちは、これまでのファッション写真家とは違う形で物事を前進させる力を持っている。どちらの写真家も隣り合わせで存在することはできるが、私はファッションに対する新しいアプローチの方が面白いと思う。「Posturing」では独特なスタイルを紹介したが、ここ最近はファッション業界に進出する社会派ドキュメンタリー写真家たちが気になっている。

WWD:注目しているフォトグラファーは?

ヘイ:多すぎて1人に絞れないけれど、最近センタ・サイモンド(Senta Simond)の作品を買った。ものすごいスピードでファッション業界を魅了している。

ショナ:次の展覧会ではハンナ・ムーン(Hanna Moon)とジョイス・NG(Joyce Ng)の作品を展示する予定で、彼女たちと仕事をするのを楽しみにしている。