「大事にしているのは、自分のこだわりがエゴにならないように」
同ブランドを手掛けるのは、インテリアデザインを学んだ後、バッグデザイナーになったという中谷美香デザイナー。その経験が今日のクリエイションに生かされている。「根底にあるのは、『ポータブル・スペース(持ち運ぶ空間)』という考え方。空間をデザインする時に動線やデッド・スペースの使い方を考えるのと同じように、いかに機能性をデザインに落とし込んでいくかということを常に意識しています」と話す。また、バイヤーや職人からの要望やアドバイスに対する柔軟な姿勢も支持されている理由の一つだ。「大事にしているのは、自分のこだわりがエゴにならないようにすること。さまざまな意見を聞き、自分の中で咀嚼した上でより良い提案を返すようにしています」。新ブランド「アルバス」と「ポティオール」の違い
2015-16年秋冬には、大人の女性に向けた新ブランド「アルバス」もスタートした。コンセプトは「使う人自身がさまざまな生活シーンで自分らしい色を表現できる“余白”のある普遍的なデザイン」。中心価格は5万円台と「ポティオール」よりも高いが、素材に姫路から仕入れた牛革を使い、バッグに関しては全て日本生産にこだわる。新ブランド設立のきっかけは、「自分も40歳になり、違いの分かる大人の女性に向けた成熟したデザインに挑戦したかったから」と中谷デザイナー。日本の工場と長期的に取り組みたいという思いもあったという。販路は「ポティオール」とかぶるところも多いが、「もともと店頭に両方のブランドが並ぶことを前提に全く異なるデザインを打ち出しているので、特に問題はないですね」と語る。そんな彼女は、もの作りに徹する姿勢を貫いている。「いいものを生み出し続けることが私の役割だと考えているので、販売はその道のプロに任せている。バッグはシーズンを越えて使うアイテム。だから、一過性のものではなく、白シャツやデニムのように日本女性の生活シーンに根付くものを作りたい。長く続いてこそ初めてブランドと言えると思う」。