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丸山隆平が明かす俳優業への想い 「いただいた役に対して何でもござれで向き合うのが役者の仕事」

PROFILE: 丸山隆平/アーティスト、俳優

PROFILE: (まるやま・りゅうへい)1983年、京都府出身。SUPER EIGHTのメンバーとして活動中。グループとしては、2025年に日本武道館でのライブを初開催し、その模様が収録されたDVD「超八 in 日本武道館」が2026年5月27日に発売。5月28日には新曲「ダンダーラ」が配信リリース。ソロとしては、歌手やベーシスト活動、俳優業など、幅広く取り組んでいる。近年のドラマでは、「着飾る恋には理由があって」(21)、「FOGDOG」(25)、「時すでにおスシ?!」(26)などがある。出演映画は、「泥棒役者」(17)、「金子差入店」(25)、「名無し」(26)。舞台では、「浪人街」、「震度3」、「oasis」などがある。ラジオは、FM COCOLO「Groove-Method」のDJを担当している。

昼下がりのファミレスで発生した大量殺人事件。だが防犯カメラに映る容疑者の男の手には、凶器らしきものはなかった。不可解な力で“名前のない怪物”となった男は、なぜ惨劇を引き起こしたのか——。佐藤二朗が原作・脚本・主演を務めた映画「名無し」は、孤独と絶望の果てに暴力へと走る男の狂気を描いたサイコ・バイオレンスである。

監督を務めるのは、「アルプススタンドのはしの方」などで知られる城定秀夫。佐藤が演じる山田太郎の過去に深く関わる人物として、少年時代の“名無し”に名前を与える警官・照夫を演じたのが丸山隆平だ。丸山はこれまでの明るく親しみやすいイメージとは異なる、重く残酷な本作のどこに惹かれ、照夫という存在をどう捉えたのか。話を聞いた。

佐藤二朗という人に
興味が湧くような台本

——これまで丸山さんのイメージにはないバイオレントな作品で驚きました。佐藤二朗さんが原作・脚本・主演を兼任している本作ですが、まずはそんな本作のどういう部分に惹かれてオファーを受けたのか教えてください。

丸山隆平(以下、丸山):個人的にサイコ・サスペンスやホラー、スプラッターといったジャンルは好きで、よく観ていたんです。だからもともと興味はあったんですが、けれどなかなかそういう作品にお誘いいただく機会が今まではなくて。それは僕にバラエティーのイメージもあるでしょうし、年齢的なものもあると思うんですが。それで今回ついにそのチャンスが回ってきて、かつ重要な役どころを僕に任せてもらえるということで、とても光栄に思いお受けさせていただきました。もちろん大前提として、原作漫画の作品の面白さに惹かれたということも大きいですが。

——ホラーはどういう作品が好きなんですか?

丸山:初めて観た映画がVHSの「バタリアン」だったんですよ。それは僕が選んだのではなく、母が好きだったからなんですが。ホラーだけどコメディー要素もあったり、特殊メイクも面白かったり、それがなんとなくフィットしまして。「死霊のはらわた」もそうですが、内臓が出てきたり頭が吹っ飛んだり、日常では見られない非現実があるじゃないですか。そういうのが好きな子どもだったんです。子どもってカマキリを捕まえて獲物を食い殺すところを観察したり、残酷なことに対する好奇心があると思うんですが、それに近い興味があったのかもしれませんね。

——本作の台本を読んだときの印象はいかがでしたか?

丸山:いろいろ想像を掻き立てる台本でしたよね。「名前」というのはどんなものにも付いているじゃないですか。人間が勝手に付けているだけの独特の文化だと思うんですが、やはり名前とは大切なもの。でも主人公にはそれがない。それってすごく切ないことだし、その時点で物語がすごく広がっていくように感じたんです。そして読みながら「二朗さんの何がこの台本に落とし込まれているのか。二朗さんのどこからこの物語が生まれたのだろう」ということも気になりました。単純に佐藤二朗という人に興味が湧くような台本だったと言いますか。

——確かにこの物語がどのように生まれたのかは気になりますね。今回丸山さんは重要な役どころながら佐藤さんと一緒に演じるシーンはありませんが、共演する上で何かお話はされたんですか?

丸山:同じシーンの撮影がなかったので……。唯一お会いしたのが撮影前のお祓いのときで、その際には感謝の言葉をくださいました。あと僕の役名が照夫なんですが、「父方のじいちゃんと同じ名前なんですよね」ってお話もさせて頂きました。

子どもとの演技

——残酷で重い物語の中で、丸山さん演じる照夫は、少年時代の“名無し”に名前を与える名付け親であり、本作における人間性を象徴するような存在でもあります。丸山さんは、この照夫という人物をどのように捉えて演じられたのでしょうか。

丸山:照夫の台詞の中に「人はみな一人じゃない」という言葉があるんですが、交番勤務をしている巡査である照夫は「すごく優しい、良い人一色だけの人間ではいてほしくない」と言われましたので、そこは意識していましたね。彼には彼で家庭のこともいろいろあるでしょうし、フラットな人間として、綺麗事だけじゃない部分を表現できたらいいなと思っていました。それができたかは分からないんですが、「監督のOKが出ているならOKだろう」と毎カット信じながらやっていました。

——子役たちの演技が非常に印象的でしたが、実際に一緒に撮影されていかがでしたか?

丸山:動物園のシーンとか撮影の直前まで喋っているんですけど、みんな「ここぞ!」というときの集中力がすごいんですよね。本番が始まると一気に切り替わるんです。

——少年・太郎役である和彦さんとは、撮影裏でどんな関係だったんでしょうか?

丸山:彼はスタッフさんたちとも積極的にコミュニケーションを取っていましたが、照夫を演じる自分としては、裏側の距離が近すぎると彼と僕の間に流れているものが壊れてしまう気がして。もちろん共演者としてお話はしますが、子どもに対する親しみを込めた話し方はしないようにしましたね。あくまでいち共演者として話をして、それ以上あまり踏み込まないよう心がけました。

台詞がある役は今回が初めてだったらしく、本人からも「役者としてやるんだ」という気持ちが伝わってきたというのもありますし。とても意欲的で楽しそうにお芝居していましたよ。

——「ふつうの子ども」の主演でも話題となった嶋田鉄太さんが照夫の息子役アツシを演じていましたね。

丸山:監督が「あの子は天才なんだ」って絶賛してましたね。息子役ではありましたが、照夫は子育てというものがよく分かっていない不器用な父という感じがしたので、その距離感もちょっと出てると良いなと思いながら演じていました。

——撮影していて印象に残っているシーンはありますか?

丸山:屋上の場面は印象的でしたね。太郎の手を掴んで、宙ぶらりんの状態になる場面があるんです。下から支えられてはいるんですが、カットによっては本当にしっかり彼の手を掴んで引きあげようとしないといけない。やはり子どもの手って物理的に頼りないんですよ。だからどう握ればいいのか、どこでカットがかかるのか、どこまで準備できるのかということは、周りのスタッフも含めてすごく慎重に確認しながら進めていました。

観た人の解釈に委ねる

——佐藤さんが演じた山田太郎という役について、完成した作品を観てどう思われましたか?

丸山:僕自身は、人ごとには思えないような感覚がありました。ただそれを観た方がどう受け取るかについては、余白を残しておきたい。僕が何かを言うことでその視点だけで観てほしくないという気持ちもあって。もちろん僕なりの感想はありますが、それ以上に、観た人がこの作品のどの部分を受け取るのかが気になるんですよね。ただのグロいスプラッター映画として観る人もいるだろうし、何かのメタファーとして感じる人もいるかもしれない。そういう意味では、いろいろな受け取り方ができる作品だと思います。

ただ一つ言えるのは、佐藤二朗さんのファンにとってはたまらない作品なんじゃないかなと。というのも、本作は二朗さんの中にある何かを覗き見するような感覚があるんです。それが狂気性なのか、悲しみなのか、それとも言葉にできない何かなのかは分からないですけど、そういうものが作品の中に打ち込まれていると思うんですよね。だから僕自身、二朗さんにインタビューしてみたいんです。二朗さんが受けたインタビューもくまなく読みたいし。きっと「なぜこんな作品を?」と質問責めにあっているでしょうから(笑)。

——今回が初となる城定監督との作品づくりはいかがでしたか?

丸山:こちらにかなり委ねてくださる監督なので、最初から最後まで自分の芝居に油断ができませんでしたね。常に「これで大丈夫なのかな」と思いながら進めていたと言いますか。ただどの現場でもそうですが、質問や提案はさせていただきました。例えば「太郎が花子にご飯を渡す場面で、どういう距離感でどう動いていくのか」というようなことを、監督や撮影部の方々と場面場面でディスカッションしながら進めていきました。

俳優という仕事について

——「金子差入店」に「名無し」とこれまでのパブリックイメージを覆すような役に連続で挑戦されていますが、今度トライしてみたい役やジャンルはありますか?

丸山:特にないですね。「これを丸山にやらせたら面白いんじゃないか」と思っていただけるものがあれば前向きに挑戦したいです。年齢を重ねることで出会う役も変わっていくでしょうし、自分のイメージをもっと壊してくれるような役にも興味があります。「これは丸山にぴったりだ」と思っていただける役ももちろんうれしいですし。

自分としては方向性を決めているわけではないんです。自分で可能性を狭めたり、「これがやりたい」「あれがやりたい」と自分の希望を前面に出したりするより、いただいた役に対して何でもござれで向き合うのが役者の仕事だと思っているので。だから今は、自分の中に強い「これをやりたい」という欲求はあまりないですね。むしろ、周りの方から「こういう丸山が見たい」と思っていただけるものがあれば、ぜひ挑戦してみたいです。

——役者とアーティストの仕事で、どのようにスイッチを切り替えているんでしょうか?

丸山:自分では「切り替えている」という感覚はあまりないんですけど、自然と切り替わっている部分はあると思います。それはきっと誰もが日常的にやっていることと同じで。家族と会うとき、会社の上司と話すとき、部下と接するときって、それぞれ少しずつ自分が変わるじゃないですか。無意識に切り替えているというか。例えば取材でも、役者さんに話を聞くときとアーティストの方に話を聞くときでは、質問の内容も変わりますよね。それに合わせて自分も変わっていると思うんです。だから特別にスイッチを入れているというより、みんなが自然にしていることとそんなに変わらない気がします。

——では、その二つの仕事に共通する感覚はありますか?

丸山:役者とアーティストの仕事で共通して苦手なのは「覚える」ということですね。台詞もそうですし、歌詞やフレーズもそうですが、とにかく覚える作業には時間がかかります。僕は文章を読むこと自体があまり得意ではないので、見ただけでパッと覚えられる人が本当に羨ましいですね。「本をたくさん読めばいい」と言われることもありますが、僕は本を読むより人と話しているほうが楽しいんです。会話をして、それを自分なりに解釈していくほうが性に合っていると言いますか。

ただ、台本はきちんと守ります。歌にもフレーズや決まりごとがありますし、まずはそれを自分の体に落とし込む作業が必要なんです。そこまでいければ、あとは自由になれる。でも、その自由になるまでの過程に時間がかかるんですよね。その部分が一番大変だなと思います。

PHOTOS:RIE AMANO
STYLING:YOSHIO HAKAMADA(juice)
HAIR & MAKEUP:NOBU(HAPP'S.)

作品概要

映画「名無し」
原作・脚本:佐藤二朗
出演:佐藤二朗 / 丸山隆平 MEGUMI / 佐々木蔵之介
監督・共同脚本:城定秀夫
2026年5月22日から全国公開 82分 PG-12
©佐藤二朗 永田諒 /ヒーローズ ©2026 映画「名無し」製作委員会
https://774movie.jp/

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