アンドエスティHD(旧アダストリア)の2026年2月期連結業績は、売上高で初めて3000億円を超え、過去最高の3043億円(前期比3.8%増)になった。営業利益は165億円(同6.5%増)、純利益は94億円(同1.2%減)だった。期初計画に対して、売上高は計画通り、利益面では「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」など主力ブランドの苦戦や、売上総利益率が改善できなかったことで未達だった。今後はブランドリテール事業、プラットフォーム事業、グローバル事業の3本柱で、2030年度(2031年2月期)を最終年度とした中期経営計画目標の、連結売上高4000億円、GMV(流通総額)1000億円、連結営業利益率8%を目指す。
同社は昨年9月、持ち株会社への移行とともに現社名に変更。今年1月に木村治社長の退任を発表し、3月1日から創業家出身の福田泰生氏が社長に就任し新体制がスタートしている。福田社長は「新体制でも昨年4月に発表した中期経営計画2030の目標値と、プレイファッション・プラットフォーマーに向けた事業構造の変革を継続していきたい」と宣言。「事業別の進捗に濃淡はあるが、それぞれの課題は明確で、成長ドライバーも見えつつある」としている。
最大の課題は主力「グローバルワーク」の再成長
ブランドリテール事業の売上高は2798億円だった。主力の「グローバルワーク」が538億円(同2.2%増)、「ニコアンド(NIKO AND)」が378億円(同5.4%増)と成長が鈍化する一方で、次の200億円ブランドとして期待する「レプシィム(LEPSIM)」が172億円(同15.7%増)、「ラコレ(LAKOLE)」が141億円(同11.8%増)と2ケタ成長した。「ジーナシス(JEANASIS)」や「ベイフロー(BAYFLOW)」は前年割れだった。グループ会社で「カレンソロジー(CURENSOLOGY)」「カオス(CHAOS)」などの高感度セレクトショップを展開するエレメントルールが137億円(同9.0%増)と好調だった。「アプレジュール(APRES JOUR)」などD2Cブランドを中心に手掛けるバズウィットが125億円(同2.3%増)と堅調で、3月にはラフォーレ原宿にブランド複合ショップ初となるバズウィット原宿をオープンし、ブランド力の強化に取り組んでいる。
今期はリアル店舗の再強化で収益性の回復を図る。最大の課題は、売上高1000億円(うち国内800億円、海外200億円を想定)を目指す稼ぎ頭の「グローバルワーク」の改革だ。前期は主力商品の伸び悩みや、過年度からの値上げを受けた購買マインドの低下により、上期に停滞してしまった。商品の鮮度や価格の手ごろ感が課題に浮上した。秋冬からエントリープライスの商品の投入や、店頭でのスタイリング訴求を強化。トレンドを取り入れた新商品開発やIP企画、QR生産の活用などを拡大。来期以降に再成長軌道に乗せたい考え。福田社長は「過去にはテレビCMなど広告宣伝を投入し、売価変更して販促してトップライン(売上高)を上げてきた。これをしっかりとプロパーで買っていただくことで、ブランドを棄損させず、お客さまからの信頼を得られるようにしたい。まだまだ都心や郊外SCなど出店余地もある」として、派生業態として始めたスマイルシードストアの展開を中止・統合し、「グローバルワーク」に集中して出店を加速させていく考え。
ECモールのアンドエスティの外部ブランド数が50超
マーケット型ECモール「アンドエスティ」を中心としたプラットフォーム事業は、外部ブランドの参画が順調に増加したため140億円となった。「アンドエスティ」のGMV(商品取扱高)は462億円(同14.4%増)で、自社グループが417億円(同6.6%増)、グループ外の構成比が9.7%まで高まり45億円(前期の3倍)となった。外部ブランドは新たに26ショップ増加し、計53ショップとなった「アンドエスティ」会員数は前期末から200万人増えて2170万人、アクティブ会員数は30万人増えて780万人となった。原宿に昨年4月にオープンしたアンドエスティストアは年間目標来客数に掲げた100万人をすでに上回っているという。アンドエスティ事業は今期、500億円を目指す。取り扱いブランドとカテゴリーの拡大、IP獲得に向けた販促に加え、今期はエンターテイメントコンテンツの拡大を進める。
グローバル事業は238億円だった。東南アジアの出店に遅れが出たが、中国・台湾など東アジアの伸びがそれをカバーし、計画通りの進捗だった。中国大陸では「ニコアンド」を中心に7都市・15店舗のリアル店舗と、マルチブランドのECを連携するクロスチャンネル戦略を推進。ECは前年倍増ペースで成長した。27年2月期中の黒字化が見込まれている。香港や台湾ではマルチブランド戦略を推進。自社ECでは日本と同様のスタッフによるスタイリング投稿「スタッフボード」の活用を進めた。今期は好調なグレーター・チャイナでの事業拡大を続けながら、遅れている東南アジアでの基盤構築に取り組む。タイでは新たに現地パートナーの支援も受けながら出店攻勢をかける。マレーシアでの新規出店や、ベトナムなど次のエリアの準備も進める。
前期は子会社のベルベット社を売却して米国事業から撤退しt。ライセンス事業として進めた米「フォーエバー21(FOREVER21)」の日本事業の終了、さらにはイトーヨーカ堂との協業ブランド「ファウンドグッド(FOUND GOOD)」の終了など事業再編も進めた。
2027年2月期の業績予想は、売上高3140億円(同3.2%増)、営業利益172億円(同4.1%増)、当期純利益は105億円(同10.5%増)を計画する。前期期中に終了した事業の減少分が約60億円あるが、国内外の出店や「アンドエスティ」のオープン化の拡大により吸収し、増収を図る。為替の変動に加え、原油高で物流コストだけでなく合成繊維など糸値で5~10%の高騰が見られているというが、売上総利益率は在庫管理の精度向上、リアル店舗の強化による値引き規制などにより、改善を目指すという。当期純利益では一過性費用として福田三千男会長と木村治社長の特別功労金支給に関わる特別損失12億円を計上する。投資額は、26年2月期は建築費の高騰など国内外の店舗開発とM&Aなどにより計画を上回る157億円だった。27年2月期は142億円を計画する。