アトモスの創業者・本明秀文さんの独自の目線と経験から、商売のヒントを探る連載。故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の大規模回顧展「ザ・コード(The Codes)」が9月30日~10月9日、パリの美術館「グラン・パレ」で開催された。「THE TEN」の熱狂は、いまもスニーカーヘッズの記憶にしっかりと刻まれている。その時代を業界の最前線で目撃した本明さんが語る、ヴァージル、カニエ・ウェスト(Kanye West)、オアシス(OASIS)──。時代を動かしたのは、テクノロジーではなく、“人”だった。やっぱり人は、“人間臭さ”に惹かれるのかもしれない。(この記事は「WWDJAPAN」2025年10月13日号からの抜粋です)
──ヴァージルの大回顧展が開催されています(現在は閉幕)。生きていれば45歳だったとか。この連載の写真で本明さんが手に持っているのは、ヴァージルと「ナイキ(NIKE)」のコラボレーション「THE TEN」ですよね。
本明秀文(以下、本明):僕は2回だけ会ったことがあるけど、本当に“いい人”だったよね。最初は「ナイキ」のイベントで紹介された。その日僕は、ヴァージルと会うからって、「THE TEN」の“ハイパーダンク”をわざわざおろして履いて行った。そしたらヴァージルが「サインを入れてあげる」って、いつものクォーテーションマークを使って、“ATMOS”って書いてくれた。次に会ったときは、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のデザイナーになった後だと思う。人は有名になると変わっちゃうじゃない。でも彼は全く変わらず、そのときもサービス精神旺盛だった。本当にいい人って早死にするのかなって、それぐらい悲しかった。僕はそのヴァージルの才能を見いだしたカニエ(・ウェスト)もやっぱりすごいと思う。世間ではここ数年たたかれているけど、ファッションと音楽をここまで融合させたのはやっぱりカニエ。“イージーブースト(YEEZY BOOST)”を開発して、一世を風靡した。カニエがすごいのは、「ナイキ」とちゃんと喧嘩したことだよね。天下の「ナイキ」に反抗して、本当に「アディダス」に行っちゃうんだから。
──カニエは「ナイキ」でも「アディダス」でもオリジナルモデルを作り出しましたもんね。
本明:そうそう。普通はやったとしてもマイナーチェンジするだけ。だけどカニエだけは“意味分かんないもの”を生み出した。ヴァージルもレディーメイド(既製品に新たな文脈を与える美術的観点)だったけど、強烈だったのは「THE TEN」を一気に出しちゃったこと。それも何度かに分けて売り出すことで、毎週お祭りみたいな感じで盛り上がったし、すごくクリーンな印象だった。
──それまでそういう例はあったんですか?
本明:ない。あれが斬新だった。ランニングもあればバッシュもあって。「ナイキ」とどういう話をすればこれが実現するの?みたいな。とにかく、すごいと思った。あとは、ローンチのポップアップイベントをニューヨークのウォール・ストリートでやったでしょ。あれも“意味が分からなくて”、いいよね。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。
