
美容医療の普及とともに、医療と美容の垣根が一層低くなっている。国内の美容医療市場は右肩上がりで拡大を続け、矢野経済研究所によると2024年度の市場規模は前年比6.2%増の6310億円に達した。こうした潮流の中で、皮膚科医が監修・開発するスキンケアブランドや、施術後の肌をケアする専売コスメ、美容クリニックの開院など、医療知見を日常ケアに生かす動きが広がっている。科学的エビデンスや専門性を重視する消費者心理を背景に、クリニック発やドクターズブランドの存在感が増している。
日本初の美容皮膚科発祥の
「イシイクリニック ビューティラボ」
1973年に日本で初めて(同社調べ)美容皮膚科医により開設したサロン「ドクター石井 メディカル エステティック サロン」などを展開するドクターイシイグループは、オリジナルブランド「イシイクリニック ビューティラボ(ISHII CLINIC BEAUTY LAB.)」を展開する。同ブランドから院内処方する発酵マスクの主要成分であるコメ発酵液エフイシイを配合したホームケア向けライン“ファーメント ライン”を2023年に立ち上げた。11月12日には、乳液“デュアルRCエマルジョンヴェール”(30g、1万5400円)を公式サイトで発売する。
“ファーメント ライン” はホームケア向け発酵スキンケアを扱う。これまでクレレンジング、洗顔料、化粧水、クリーム、UVクリームを展開。メイン顧客層の40代後半の肌は乾燥を感じやすい傾向が強く、クリームの油分による皮膜感だけではなく、肌の内側から潤いを与えるケアが求められているとして乳液を投入する。
健康的で潤いのある肌は、角層の細胞間脂質に存在するセラミドの量がカギとなるため、“デュアルRCエマルジョンヴェール”は、エフイシイに加え、院内処方のヒト型ナノ生セラミドを採用。独自のタイムディファレンス デリバリーシステムにより、時間差で肌表面と内側に作用し長時間潤いを持続する。そのほか、ビタミンC誘導体やビサボロールなど6種のエイジングケア成分も配合した。
皮膚科と美容皮膚科を併設する
「新宿駅前IGA皮膚科クリニック」開院
肌免疫ケアスペシャリストとしても活躍する皮膚科医の伊賀那津子医師が20年6月に立ち上げたスキンケアブランド「アイジーエーラボ(IGA LAB)」は、肌免疫ケアをコンセプトにクレンジングオイルと美容液の2品を愚直に販売する。いずれも肌バリアを整え、毛穴ケアもできるとして、約20万人いる自身のSNSフォロワーなどから支持を得ている。伊賀医師は、日常的な皮膚トラブルに対応する皮膚科(保険診療)と美容的な肌に悩みに応える美容皮膚科(自由診療)が受診できる「新宿駅前IGA皮膚科クリニック」を10月1日に開院した。
伊賀医師は、大学病院や地域の総合病院、都内の皮膚科・美容皮膚科クリニックで経験を積み、「肌の治療だけではなく、肌の未来を守る視点が必要」と開院した。保険診療では、ニキビや酒さ、赤ら顔、脂漏性皮膚炎、湿疹、帯状疱疹などの治療を行ない、自由診療ではニキビ跡や毛穴の開き、肝斑、シワ、ほくろ、薄毛などに対応する。
美容クリニックから信頼度の高い「レナトス」
全国の美容サロンや医療機関に、美容機器や化粧品を展開するクレシオは、24年1月から美容医療施術直後から使用できる医療機関専売のスキンケアブランド「レナトス(RENATUS)」を投入。医学会や美容医療学会などで製品を紹介し、現在、全国の美容クリニック約1000カ所に販売網を持つ。同ブランドは、美容クリニックの施術で使われる導入美容液“レナトス”から、ホームケア用のスキンケアラインとして誕生した。
これまで、洗顔石けん、化粧水、乳液、日焼け止めを扱ってきたが、10月中旬からブランド初のクレンジング“ラクトンBeeクレンズ”(100mL、2860円)を発売する。肌に刺激を与えず古い角質をしっかりオフする次世代PHAと呼ばれるグルコノラクトンを採用。グルコノラクトンは、マイルドなピーリング効果と高い保湿力、抗酸化作用を持つ。低刺激性処方のオイルリッチクレンジングで敏感肌や施術後の肌にも使用できる。
同社は今後もホームケアラインの品ぞろえをさらに強化。クリニック専売ブランドとしての信頼感を維持しながら、一般消費者にも訴求できる製品を拡充することで、ブランドのロイヤルティーを高め、リピート購入を推進する。