アディダス(ADIDAS)がプーマ(PUMA)の買収に関心を示しているのではないかとの憶測が、一部の市場関係者の間で広まっている。米投資会社メトロニュークリア(METRONUCLEAR)のロイ・アダムス(Roy Adams)共同創業者が独ビジネス紙で「プーマは緊急事態にある。経営陣が業績回復に失敗した場合、アディダスとの合併が最善の選択肢だろう」とコメントしたことや、7月に着任したアーサー・ホールド(Arthur Hoeld)=プーマ新会長兼最高経営責任者(CEO)がアディダスで取締役を務めていたことなどが発端となっているようだ。
なお、本件についてプーマはコメントを差し控えるとし、アディダスは「市場の憶測についてコメントしない方針を取っている」と回答した。
プーマは今年に入り苦戦
プーマの2024年12月期決算は、売上高が前期比2.5%増の88億1720万ユーロ(約1兆5341億円)、EBIT(利払前・税引前利益)は同0.1%増の6億2200万ユーロ(約1082億円)で着地。しかし、25年1~6月期の売上高は前年同期比4.8%減の40億1820万ユーロ(約6991億円)、調整後EBITは同77.4%減の6250万ユーロ(約108億円)と大幅な営業減益に。これを受けて同社は通期の見通しを下方修正し、売上高は2ケタ減、営業損益は赤字に転落する見込みと発表した。
また、8月下旬には米ブルームバーグ(BLOOMBERG)が情報筋の話として、ケリング(KERING)のフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)会長兼最高経営責任者(CEO)一族の投資会社であるアルテミス(ARTEMIS)が、保有するプーマの株式29%の売却を検討していると報じている。
「アディダス」と「プーマ」は兄弟喧嘩の産物?
プーマとアディダスは、ルドルフ・ダスラー(Rudolf Dassler)とアドルフ・ダスラー(Adolf Dassler)兄弟が1924年に設立したダスラー製靴工場(GEBRUDER DASSLER SCHUHFABRIK)に端を発する。弟のアドルフが立ち上げた事業に兄のルドルフが加わる形でスタートしたものの、仲違いにより、それぞれ別の会社を設立することに。ルドルフは48年にルーダ(RUDA、後にプーマと社名変更)を、アドルフは49年にアディダスを立ち上げた。なお、いずれも社名は自身の名前を短縮した形となっており、本社は故郷であるドイツ・ヘルツォーゲンアウラハに構えている。
仲違いの原因は現在も不明とされているが、一説によると第二次世界大戦にまつわるさまざまな出来事が兄弟間の不和を招いたという。