
いまだに30℃越えの残暑が続く中、「クリームの話なんて」と思うかもしれない。しかし、猛暑のひと夏を経験した肌だからこそ、あえて今「クリーム」を紹介したい。2025年秋冬のクリームの進化を紐解きながら、極端な気候に立ち向かうスキンケアを考える。
「ベタベタ感」は過去のもの?
塗った途端に消えてしまうクリーム
日本のスキンケアシーンにおいて、「ベタベタ感」は、長いことネガティブワードの上位に位置している。スキンケアの説明文には「べたつかない」という表現が頻繁に登場し、SNSや口コミにおいても「ベタベタ感が苦手」「枕につくのが嫌」という意見を目にする機会がある。
確かに高温多湿な日本の夏に、クリームには手が伸びない気持ちも共感できる。ドラバラ(ドラッグ・バラエティーストア)市場において、ジェル系の保湿アイテムやオールインワンが目立つ理由の1つでもあるだろう。
実際に近年のクリームを見渡すと、バタークリームのようなコッテリ系は、ほぼ皆無といっていい。特に25年秋冬の新作は、一見こっくり濃厚そうでも、実際使ってみると実に軽いのだ。クリームでありながら肌に吸い込まれるような感覚もあり、「あれっ、塗ったはずなのに消えちゃった」と、驚くものも少なくない。
ベタベタした膜感は残らず、塗布後の肌に柔らかさと独特のシールド感を実感できる――。この不思議なテクスチャーの裏側には、塗膜技術など処方の進化が隠されている。
「透明コルセット」を叶える
塗膜技術や処方技術の進化
まず、クリームなのに「すっと浸透するような感覚」を抱ける理由は、オイル成分の微細化や、油と水を上手に分散する技術にある。
例えば「SK-Ⅱ」は、アミノ酸由来のカプセルに包むことで、保湿成分をリッチに配合しながら、軽やかなテクスチャーを実現。また「ヘレナ ルビンスタイン(HELENA RUBINSTEIN)」は、処方に6段階のステップを採用している。水溶性成分と脂溶性成分を段階的にブレンドし、エイジングケア成分プロキシレンをミクロンサイズの液滴状にして加えることで、シルキーな感触とバンデージのようなシールド感を両立した。
このような「軽いのに」「保護効果に優れた」独特のシールド感も、進化型クリームの特長といえるだろう。ここには、各社の塗膜技術の粋が凝縮されている。
スマートな設計に感動したのが、「ポーラ(POLA)」が開発した「自己再生ベール」。2種類のポリマーにより、表情の動きで壊れても自動的に元に戻る塗膜である。また「カネボウ(KANEBO)」は、擬似胎脂成分と多糖高分子を採用し、厚みのある崩れにくい塗膜を実現。双方ともに塗膜に弾力性があり、これが「塗った時のハリ感」に関与している点も見逃せない。
塗布したとたんにすっとなじみ、消えてしまうかのように肌と一体化。さらになじんだ後はハリで支える、まさに「透明コルセット」のようなクリームたちである。
猛暑から急転直下の秋口に
クリームを使うべき理由
前述のように「感触が軽い」「有効成分が浸透する」「シールド膜で潤いを閉じ込める」「ハリを実感できる」、となればクリームを使わないのは、逆にもったいない気がしてしまう。
なぜなら、近年は四季ならぬ「二季」と言われるほど、気候変化が極端になりつつあるから。今は30℃越えだったとしても、短期間で気温も湿度も急激に低下する可能性がある。紫外線ダメージでバリア機能が低下した肌は、あっという間に潤いが奪われてしまうだろう。
さらに猛暑のひと夏を越えた肌内部には、活性酸素や炎症が発生しやすいことも忘れてはならない。乾燥から守りつつ同時にダメージケアをしないと、エイジングサイン発生の引き金になってしまう。だからこそ、残暑のこの時期からクリームを推したい気持ちなのだ。ここから先は、新作の進化型クリームを紹介したい。
顔の上半分に注目し、
ハリをもたらす軽やかなクリーム
「SK-Ⅱ」から9月20日に登場する“スキンパワー リニュー エアリークリーム”は、動画で撮影した映像を分析し、20代から始まる「目に見えないエイジングサイン」に注目している。ハリのカギを握る「顔の上半分のゆるみ」にアプローチするために、ピテラ、クマル酸、シャクヤクエキスを配合。これらの保湿成分をアミノ酸由来のカプセルに内包することで、空気のように軽やかなテクスチャーとリッチな潤いを両立した。ふっくらと曲線美を描く、つややかな質感へと導いてくれる。
肌全域の再生を促し「自己再生ベール」で守り抜く
常に先端のサイエンスを取り入れ、進化し続けるポーラの最高峰スキンケア「B.A」は、毛の根元周辺が持つ「年齢に左右されない再生力」に注目し、全製品にオリジナル成分「BAコアエキス」を配合して、今秋リニューアルを果たした。中でも“クリーム”には、表情の動きによって壊れても、形状復元性がある「自己再生ベール」を採用。押し返すような弾力感に富んだテクスチャーで、塗布後の肌に弾むようなハリ感をもたらす。
擬似胎脂成分を用いた
しなやかなシールド効果
「カネボウ」の30年以上に及ぶ胎脂研究から誕生した、“クリーム イン ナイトⅡ”。お腹の中で赤ちゃんの肌を包む胎脂を分析し、擬似胎脂成分「TAISHI™Complex」を開発。同時にナイアシンアミドを配合することで、エイジングサインに多角的にアプローチする。擬似胎脂成分と3種の多糖高分子によるシールド膜は、崩れにくくしなやかな点が特長。厚みと弾力性を有し、塗布後の肌にハリ感をもたらし、ひと晩中しっかり守り抜く。
6段階の処方ステップで
軽い感触とバンテージ効果を両立
「ヘレナ ルビンスタイン」の“リプラスティ ルコンストラクション ナイト クリーム50PX”は、エイジングケア成分、プロキシレンを50%と高濃度に配合している。水溶性成分と脂溶性成分を段階的にブレンドし、プロキシレンをミクロンサイズの液滴状にして配合する、6段階の処方ステップを採用。肌の上でとろけ、しっかり包むバンデージテクスチャーを実現し、エイジングサインに総合的に迫る。
日中は30度を越える残暑が続いているが、朝晩は涼しさを感じる日もあり、今後急激に気温が下がる可能性も否めない。だからこそ、今の時期からぜひ「進化型クリーム」に注目して欲しい。乾燥の季節へのソフトランディングに、力を発揮してくれるはずだ。