
花王は今夏、ヘアケア事業変革の一環として新ブランド「ミーミーミー(MEMEME)」を立ち上げる。Z世代を中心とした若年層女性を主なターゲットに据え、機能性と手軽さを両立した設計が特徴。シャンプー、トリートメント、アウトバストリートメント、ヘアオイルの4品を展開し、価格はいずれも1540円(編集部調べ)。8月9日から全国の主要ドラッグストア約1万店舗で取り扱う。7月29日からは、MEGAドン・キホーテ渋谷本店やアットコスメトーキョーなど全国42店舗で先行販売する。
近年、Z世代を中心に「効率性」を重視する傾向が強まっており、ヘアケアにも手軽さと高機能性の両立が求められている。こうした時代の空気を捉え、同ブランドは「PLAY! ME〈毎日過去最高のわたしを楽しもう〉」をコンセプトに掲げた。ブランド名の「ME」を3つ重ねたネーミングには、多様な価値観を尊重し、自分らしさを肯定するメッセージを込める。処方設計には、短時間で効果を実感できる使用感を追求し、日々のケアに負担を感じさせない工夫を施した。効率性と自己表現を重視する若年層に寄り添い、新たな市場の開拓を狙う。
快進撃を支える
“感情軸”マーケティング
新ブランド「ミーミーミー」の誕生により、花王が進めるヘアケア事業の再編が最終局面を迎えた。2024年4月に投入した「メルト(MELT)」、同年11月の「ジアンサー(THE ANSWER)」に続く第3弾であり、再編戦略の「最後のピース」(野原聡・ヘアケア事業部ブランドマネジャー)となる。
同社のヘアケア事業は足元で計画を上回る成長を見せており、24年に公表した27年度の目標を上方修正した。国内市場でのシェア目標は当初16%強としていたが、25年6月時点で13%を達成。これを踏まえ、目標を18%に引き上げた。25年度の売上高は23年度比で26%増、27年度には同56%増を見込むなど、高成長を視野に入れる。
成長のけん引役は「メルト」と「ジアンサー」だ。「メルト」は全国約1万5000店舗に配荷され、出荷本数は250万本を突破。販売ベースでのシェアは3%強に達する。「ジアンサー」も約8000店舗に展開され、出荷本数は140万本超。販売シェアは4%強に達している。1400円以上の「ハイプレミアム」市場では、2023年に32位だったメーカー別シェアを4位にまで押し上げた。
この快進撃を支えるのが、“感情”を軸にしたマーケティング戦略だ。人間の本質的な感情ニーズを6つに分類し、「メルト」や「ジアンサー」、既存の「メリット(MERIT)」「エッセンシャル(ESSENTIAL)」「セグレタ(SEGRETA)」をそれぞれに配置。「ミーミーミー」は、躍動的・エネルギッシュというポジションを担い、「『メルト』『ジアンサー』に続く、末っ子的存在」(野原ブランドマネジャー)として加わる。
「ミーミーミー」は、「エッセンシャル」や「メルト」と同様に若年層を主なターゲットとしており、ブランド間のカニバリゼーションも懸念される。しかし野原ブランドマネジャーは、「消費者はその時々の感覚でヘアケアブランドを切り替える傾向がある。感情に基づいてスイッチしてもらえるよう、各ブランドに個性と一貫性を持たせた構成を意識している」と説明する。
コミュニケーション戦略では、「メルト」「ジアンサー」での知見を最大活用すべく、UGCの創出を促す仕掛けづくりに注力。インフルエンサー施策や体験イベントなど拡散性の高いコンテンツを発信し、Z世代に響くタッチポイントの拡大を図る。
全方位強化で次の成長フェーズへ

「ミーミーミー」の投入により、花王のヘアケア事業は次なる飛躍に向けた体制を万全にした。「ミーミーミー」はアウトバスやスタイリングといった新領域の拡張を担い、「ジアンサー」は個の最適化によるパーソナライズ事業を展開する。「メルト」は“休息美容”の概念を生かし、ヘアケア以外への応用も視野に入れる。
既存ブランドも再強化する。「メリット」は母と娘の関係性に着目した親子向けの提案を強化し、「セグレタ」は育毛シリーズを一新。26年にブランド誕生50周年を迎える「エッセンシャル」は、新たな広告フレームの展開を計画している。
今後は国内市場での実績を足がかりに、中国をはじめアジアを中心とした海外市場の展開強化も視野に入れる。野原ブランドマネジャーは「SNSを活用しながら、成功が難しいとされるグローバルのヘアケア市場に挑戦していきたい」と意気込む。
「ミーミーミー」一挙公開
「ミーミーミー」の“モイストブーストシャンプー”(400mL、1540円/レフィル320mL、1100円)は、アミノ酸系の洗浄成分を配合し、泡立ちやすすぎやすさに加え、傷んだ髪を1本ずつ薄い疎水フィルムでコートする技術を採用。ノンシリコーン処方とした。“モイストブーストトリートメント”(400mL、1540円/レフィル320mL、1100円)は、ケア効果の高い濃厚な処方ながら髪へのなじみやすさを実現。塗り広げやすい使用感が特徴で、短時間で効果を実感できる。
アウトバス製品は、“クラッシュジェルトリートメント”(120mL、1540円)と“モイストブーストオイル”(60mL、1540円)を投入。ジェルタイプは“プルプル”とした質感が特徴で、ベタつきを抑えながら自然なまとまりを演出する。寝癖のつきにくさやドライヤー使用時の速乾性も備える。オイルは手肌にも使える処方で、べたつかずにまとまりと艶を与える。香り設計にもこだわり、シャンプーとトリートメントはピンクグレープフルーツやレッドキウイ、フリージアを基調に、アウトバス製品にはブラックベリーをアクセントとして加えた。