サステナビリティ

創業家の29歳が立ち上げた「ゲス ジーンズ」 ストーンウォッシュ、ヒップホップの次はサステナブルへ

PROFILE: ニコライ・マルシアーノ

ニコライ・マルシアーノ
PROFILE: 2014年に17歳で「ゲス」にインターンとして入社。デニム製品の開発に注力。入社後3カ月で学校を辞め、「ゲス」でのキャリアに身を捧げる。23年までに新規事業開発統括責任者に就任。24年にデニムプロダクトに焦点を当てた「ゲス ジーンズ」を始動

ゲス(GUESS)」が、ブランドの出発点であるデニムに再び光を当てる展示を東京・原宿で開催中だ。会期は7月12日まで。40年以上にわたるブランドの軌跡をたどる本展示では、軽石を使った加工法“ストーンウォッシュ“の導入や、1990年代のカルチャーアイコンたちと共に成長した変遷を辿る。最終パートでは、「ゲス」のこれからを示す象徴として、パートナー企業のジノロジア社と共同開発した最新技術“ゲス エアウォッシュ“を展示。これは従来の水や化学薬品の使用を大幅に削減した加工技術で、「ゲス」がサステナビリティを軸に掲げて進化していることを示す。その変革において現在旗振り役を務めるのが、創業者ポール・マルシアーノ(Paul Marciano)の息子、ニコライ・マルシアーノ(Nicolai Marciano)だ。ニコライはデニムプロダクトに焦点を当てた新ライン「ゲス ジーンズ(GUESS JEANS)」を2024年に立ち上げた。サステナビリティをコアに据え、ブランドのヘリテージを次世代に伝えるミッションを担うニコライにそのビジョンと挑戦を聞いた。

WWD:「ゲス ジーンズ」を立ち上げるに至った背景を教えてほしい。

ニコライ・マルシアーノ(以下、マルシアーノ):僕のミッションは、次世代のオーディエンスにリーチすることだ。デニムブランドとして始まった「ゲス」は、40年以上の歴史を通じてライフタイルブランドに成長した。今ではバッグやアイウエア、フレグランスまで25以上のカテゴリーを有している。その進化はすばらしいことだけど、一方でデニムブランドとしてのアイデンティティーが僕らの世代には伝わっていないことが課題だった。僕にとっては「ゲス」と言えばデニム。僕が17歳で「ゲス」で働き始めた最初の3年間はほぼ毎日デニムの加工場に通っていた。今回の展示でも触れているようにデニムは「ゲス」のルーツと未来に向けた方向性を語る上で重要なツールだと考えた。

WWD:「ゲス ジーンズ」ではサステナビリティを大きく打ち出した理由は?

マルシアーノ:ただ、それが“スタンダード“であるべきことだから。100カ国で約2000店舗を構えるブランドとしてサステナビリティを追求する責任がある。サステナビリティは今後ブランドが業界を牽引する存在として向かうべき方向であることは間違いない。「ゲス」では20年以上前からサステナビリティに取り組んできた実績があるから、「ゲス ジーンズ」を始めようとした際にも、生地やトリム、加工の方法まで全て必要な選択肢がそろっていたんだ。

WWD:サステナビリティがスタンダードであるという価値観は誰から教わったもの?

マルシアーノ:会社のカルチャーがもともとそうだったのだと思う。僕の生活はいつも「ゲス」が中心にあった。その中でサステナビリティという考え方は、父や会社の中でも常に話題にされてきた記憶があるし、ロサンゼルスという土地柄もあると思う。“エコ“や”環境保護“にすごく敏感なカルチャーを持っている場所で育って自然とそういう感覚を育んできたのだと思う。

WWD:必要な選択肢は全てそろっていたとはいえ、製造工程を大きく変えるのは難しい局面もあったのでは。

マルシアーノ:もちろん。すごく大変だった。“エアウォッシュ“は既存の機械では対応できないから、取引先の工場に出向いて、「これが僕たちの新しいやり方だから」と直接伝えに回った。ありがたいことに、みんな僕たちの考えに共感してくれて、未来に対して投資する決断をしてくれたんだ。強いパートナーシップがあったからこそ乗り越えられたと思う。クリエイティブ面でもたくさんの課題があった。当初は本当にシンプルな製品しか作れなくて、量も生産できなかった。でも、そこを諦めたくなかった。自分のチームにも、技術チームにも、限界を突破しようと言い続けた。だって、50型あるうちの2型が“エアウォッシュ“では意味がない。それなら僕はやりたくないとも言った。僕にとっては、きちんと規模感を持ってインパクトを出すことが重要だから。最初は苦しかったけど、同時にものすごい速さでテクノロジーも改良されて、乗り越えることができた。

WWD:サステナブルな製品は価格が上がりやすいが、「ゲス ジーンズ」では通常よりも価格を抑えたと聞いた。

マルシアーノ:手に取りやすい価格設定も妥協できないポイントだった。最初に話した通り、僕のミッションは新しい世代にブランドを届けることだから。たとえば18歳くらいの子が、品質がしっかりしたかっこいいデニムを買えて、しかも「これは環境にも配慮された製品なんだ」と感じられるような商品を作りたかった。品質、価格、サステナビリティの3つをそろえているブランドは多くない。それをパートナーと一緒に挑戦できていることを、すごく誇りに思っている。

WWD:サステナビリティの観点で、今後さらに改善したいポイントは?

マルシアーノ:デニムにおける最大の環境負荷は水。今後のステップとしては、工場レベルで水のリサイクルを導入すること。開発ラボではもう実現しているけど、それを全体の生産に広げていけば、99%まで削減できる。

「ゲス ジーンズ」をキャンバスにコミュニティーを作りたい

WWD:VERDYをチームに迎えた背景も教えてほしい。

マルシアーノ:彼とはもう10年来の付き合いになる。ファッションウイークや「コンプレックスコン」、いろんな場所で出会う中で、共通の友人も多くて自然とつながった。僕にとってファッションを考える上ですごく大事なのが、カルチャーの視点。VERDYはまさに、グローバルなカルチャーを体現している人物。だから僕が「日本をブランドの中心に据えたい」って考えたとき、最初に頭に浮かんだのがVERDYだった。彼となら一緒に何か最高のことができると思ったし、ブランドのメッセージをちゃんと表現してくれる確信があった。彼の発信はいつもポジティブでエネルギーがあって、誠実。僕が目指したい「ゲス」の方向性とも重なった。これからも音楽やアート、いろんな人たちと手を組んで「ゲス ジーンズ」の“エコシステム“を作っていきたい。つまり、ただプロダクトを作るだけではなくて、コミュニティーを育てるイメージ。今回オープンしたショップでは、VERDYが選んだブランドがコラボしてくれたけど、「ゲス ジーンズ」がキャンバスになって、いろんなアーティストやブランドが自由に「ゲス」という土台をリミックスできる仕組みができたら面白いと思う。

WWD:“ザ ネクスト 40 イヤーズ オブ デニム“展で伝えたいメッセージは。

マルシアーノ:デニムブランドとして始まった「ゲス」が、築いてきたものは時代を超えて通用する普遍的なツールだと信じている。そこに新しいテクノロジーやイノベーションが融合されて、未来に向けて大きく踏み出そうとしている。そんな「ゲス」を360°体験できる場所になっていたらうれしい。

■「ゲス ジーンズ」“ザ ネクスト 40 イヤーズ オブ デニム”開催概要

日程:7月4〜12日
時間:月〜木・日曜日 11:00〜20:00 / 金・土曜日 11:00〜21:00
場所:ヨドバシJ6ビル
住所:東京都渋谷区神宮前6-35-6
入場料:無料
※7月4日の営業時間は13:00〜

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

Is AI GOOD?AIがもたらす「ゲームチェンジ」

「WWDJAPAN」12月1日号は、ファッション&ビューティ業界でいよいよ本格化する“AIゲームチェンジ“を総力特集しました。11月19日のグーグル「ジェミニ3.0」発表を契機に、生成AIは「便利なツール」から「産業の前提インフラ」へ変貌しつつあります。ファッション&ビューティ業界で浸透する生成AI及びAIの活用法とゲームチェンジに向けた取り組みを紹介しています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。