ビジネス
連載 齊藤孝浩の儲けの秘訣 第10回

在庫を減らして最高益! 筆者が見た現場の不安と経営のリーダーシップ

WWDJAPAN.comは4月までマンガ版「ザ・ゴールシリーズ 在庫管理の魔術」を連載していました。在庫過剰に陥ると、つい値下げセールに頼ってしまう――。しかし、本当にそれしか方法はないのか? 利益を高め、最大化するための解決策を、アパレル在庫最適化コンサルで「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」「図解アパレルゲームチェンジャー」等の著者である齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、同マンガを読みながら、解説して行きます。今回は、第10話を取り上げます。

店舗も倉庫も不安を抱える「在庫改革」の壁

前回までのストーリーで、主人公の徹が店長を務める渋谷店は、在庫を減らしながらも売り上げを伸ばすことに成功しました。

今回から数回にわたってのテーマは個店の成功をいかに他店に広げて行くことができるか、です。

マンガ「在庫管理の魔術」の第10話は コチラ

店舗で働く人の大半は、販売機会を逃さないために「できるだけ多くの在庫を手元に確保しておきたい」と考えています。このため、在庫を減らしても売り上げを伸ばせるという話は信じられないのです。実際にそれを体験した人でないと、そんなことができるとは考えられないでしょう。

筆者は、小売りチェーン勤務時代、全店のバックヤードに眠っている在庫から、売れ筋以外の商品をすべて回収するプロジェクトを主導したことがあります。このプロジェクトでは、会社始まって以来の過去最高の消化率と最高益を達成し、みんなが決算賞与を頂きました。独立後、クライアント先と取り組んだプロジェクトでは、店舗に過剰に在庫を置かずに、倉庫にフリー在庫を十分に持つことで定価販売率を向上させたこともあります。

多くの店舗で働く人たちは「在庫が多いほど売り上げが伸びる」という思い込みを持っているのが現実です。自分たちを評価する唯一のKPI(重要業績評価指標)が売上予算達成で、売れ残り在庫の責任が自分たちにあるわけではないことから、このような「思い込み」が生まれてくるのです。今回のストーリーでは、成績トップの常連2店の店長が反対していることが、これを象徴しています。

店舗のバックヤード在庫を減らすことで全店の販売効率を高めるプロジェクトを始めると、必ず起こることがあります。それは、店舗で働く人が、在庫が減ったことで、欠品が起こり、売り上げが落ちるのではないかないかと不安を訴えることです。

もうひとつ、店舗の在庫を減らし、倉庫に持つようにすると、倉庫の人たちも以前より在庫が増え、不安を覚えるようになります。このストーリーでは倉庫のマネジャーが理解のある方で、とても協力的でしたが、一般的には、倉庫の責任者、担当者は、いままでほど店舗に在庫が出て行かず、倉庫の在庫が増えるので、「店舗での売れ行きが悪いのでないか」「多くの売り逃しをしているのではないか」と心配になるものです。

不安を乗り越えた先に見える新たな景色

私も、数々のプロジェクトで、こうした場面に遭遇しました。店舗と倉庫の双方が不安になり、中には社長や経営幹部に訴える人たちも出てくるため、こうしたプロジェクトを推進するには、経営者の理解とリーダーシップが欠かせません。

そして、店舗の方々には、「もし、欠品して、売り逃していると感じたら、改善しますので、遠慮なく申し出て下さい」と伝えるのです。しばらくすると、当初の不安の声はなくなります。なぜならば、売れ筋は売り逃さないように、倉庫から全店にタイムリーに補充しているからです。むしろ、バックヤード在庫が減って、店舗で仕事がしやすくなった、と感謝される声が増えて行きます。

まだ体験したことのない店長たちに対して、主人公たちは、どのようにその不安を払しょくし、プロジェクトを進めて行くのか?ここからが楽しみです。

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