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美容室生まれのヘアケアブランド「ルーティー」が躍進 開発責任者が語るサロン発プロダクトの新たな可能性

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PROFILE: 野村梨佳/フォーサイス 「ルーティー」ブランドマネージャー

野村梨佳/フォーサイス 「ルーティー」ブランドマネージャー
PROFILE: (のむら・りか)2018年からオリジナルブランドの立ち上げに携わり、ブランドマネージャーとして開発からPRまで担当。サロン発信ならではの強みを生かし現場のリアルな声を反映した製品開発を推進

美容室を運営する企業がプライベートブランドを立ち上げる例は珍しくない。しかし、サロン専売品の枠を超えて一般小売市場に進出し、成功を収めるケースは極めて稀だ。そうした中、フォーサイスが展開するヘアケアブランド「ルーティー(LUTY)」は、サロン、ECサイト、そして一般小売店と、多様な販路で急成長を遂げている。今回は同社の開発責任者である野村梨佳ブランドマネージャーに、ブランド立ち上げの経緯から現在の戦略まで話を聞いた。(この記事は「WWDBEAUTY」4月28日 & 5月5日合併号から抜粋して追記したものです)

WWD:フォーサイスは、「アリーズ(ALLYS)」などの人気ヘアサロンの他、ネイル・アイラッシュのブランド「ANNE」や、美容通販サイト「ビューティーパーク」などを運営している。そのうえで、自社ブランド開発を始めた経緯は?

野村梨佳フォーサイス「ルーティー」ブランドマネージャー(以下、野村):「ビューティーパーク」では他社ブランドを中心に取り扱っていたが、メーカーの都合で急に取り扱いが停止になるなど、不安定な面が多いことに気付いた。そこで「自社ブランドでしっかりと売り上げの基盤を築くことが大事」という考えに至り、開発に踏み切った。また“製品開発を通じて、系列サロンの美容師のヘア知識をより深める”という裏テーマを設定し、可能な限りスタイリストを絡めての開発をスタートした。

WWD:第1弾プロダクトはヘアオイルだが、その理由は?

野村:スタイリストなど技術者も含めた10人くらいのプロジェクトチームを作り、皆で何を作りたいかプレゼンし合い、最終的にヘアオイルに決めた。理由は主に3つ。1つは、一般的にシャンプー・トリートメントから作り始めるブランドが多いため、その“レッドオーシャン”は避けたかったから。2つ目は、「ビューティーパーク」のクチコミやレビューで、ヘアオイルに関するコメントが数多く寄せられていたから。使用感の“ベタつき”にまつわるコメントが圧倒的に多く、“ベタつかないヘアオイル”が求められている市場ニーズが明白だった。

WWD:3つ目は?

野村:3つ目がおそらく1番のポイントなのだが、他社のプライベートブランドについて調べてみると、意外にも“自サロンであまり使われていない”ケースが多いことが分かった。上層部を中心に開発してみたものの、その熱量がアシスタントレベルにまで伝わっておらず、とりあえず「うちで作ったんですよ」とお客さまにおすすめして、あっさりと終わってしまう……といったパターンが大半のようだった。そこで、美容師が(店販だけでなく)サロンワークでも使いやすいヘアオイルを第1弾アイテムに決めた。さらに“自社スタッフに心から気に入ってもらえる製品”を目指し、現場の声を可能な限り開発に反映。お客さまへの紹介方法も細かく設計し、「このタイミングで香りを試してもらう」「手元で使用感を確かめていただきやすいよう、ティッシュをさりげなく渡す」「試し終えた製品は目につく位置に置いておく」など、接客の流れまで丁寧にマニュアル化した。また、その理解度を5段階に分け、スタッフが製品理解の向上とともにステップアップして成長していけるような道筋を作るなど、会社一丸となって関わる取り組みが奏功した。

WWD:ECでも売れ行きを伸ばした?

野村:「ビューティーパーク」での取り扱いから始まり、プレゼントキャンペーンなどでまずは使ってもらう取り組みを通して認知を広げ、楽天やヤフーなどのポータルECサイトでも売れ筋になった。“ルーティー ヘアオイル”は、楽天ランキングのアウトバストリートメント部門で何度も1位になり、「LDK the BEAUTY」8月号 2024年上半期ベストコスメ ヘアオイル部門で1位になるなど売り上げを伸ばし、現在ではシリーズ累計出荷本数45万本を達成した。

WWD:一般小売市場に進出したのは?

野村:クセ毛・うねりケアに特化した“ルーティー プロテクトジェル”を、別の商談の際に持ち込んだところ、担当者の目に留まったのがきっかけ。当時はコロナによる行動制限が解除された頃で、今でこそクセ毛・うねりケア用の製品は市場で見かけるが、当時はとても珍しかった。「在宅勤務だった人が外に出る際、これまで気にならなかったクセ毛が気になるのではないか」といった発想から手掛けたアイテムで、実際にそのニーズは高かった。1980円という、サロンの店販品としては低めに設定していた価格もはまり、同製品は現在、ドラッグストアやバラエティーショップなど約5000店舗で販売されるまでに成長している。

WWD:一般的に「ECやドラッグストアなどに展開すると、その製品はサロンでは売れなくなる」といわれているが?

野村:この事業を通じて気付いたのは、「お客さまは思った以上に販路を横断しない」ということ。サロンで購入している人はサロンで、ドラッグストアで購入している人はドラッグストアで購入し続ける傾向があるようで、販路を広げたことによるサロンでの売り上げの影響はほとんど感じていない。

WWD:今後の展開は?

野村:もっと知名度のあるブランドに育てていきたい。百貨店での取り扱いも狙っているし、バラエティー・ドラッグストアの取り扱い店舗も、まだまだ伸ばせるポテンシャルがあると考えている。

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