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yutoriはZ世代D2Cアパレルの枠を超えて成長を加速【小島健輔リポート】

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ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。ファッション業界の新興勢力として最も注目を集めているアパレル企業がyutoriである。バラエティ豊かなブランド群でZ世代の支持を集め、創業社長の片石貴展氏は時代の寵児としてメディアで引っ張りだこ。2023年12月に上場した同社の最新決算を小島氏がどこよりも詳しく分析する。

SNSマーケティングを駆使したD2CでZ世代を捉え、M&Aも駆使して急成長するyutoriが2025年3月期決算を発表した。その急成長の仕掛けとブランドマネジメントの秘訣、今後の発展性を探ってみた。

ハートリレーションの子会社化で成長が加速

yutoriの25年3月期は売上高が92.3%増の83億600万円、EBITDAが87.1%増の9億5700万円、営業利益が75.0%増の6億7100万円、当期純利益が40.0%増の3億1400万円と、ZOZOと資本提携した21年3月期以降5期連続の増収増益となった。本体が売上高を38.2%(16億4900万円)伸ばしたのに加え、24年8月16日に51.0%の株式を取得して連結子会社化した株式会社ハートリレーション(小嶋陽菜COO、安倉和弘CEO)の売上高が下半期から加わって52.9%(22億8400万円)も押し上げた。

大雑把な計算だが、非支配株主に帰属する当期純利益1億916万円が全てハートリレーションの49%分に相当するとすれば、ハートリレーションの純利益は2億2278万円、法人税率から逆算した推定営業利益は3億2940万円、営業利益率は14.4%と推計できるから、買収前23年12月期の営業利益率10.5%から4ポイント近く上向いている。yutoriの25年3月期の営業増益2億8767万円にM&Aに伴う半期分ののれん償却費7500万円を加えた実質営業増益3億6267万円の実に9割強を占めると推計されるから、ハートリレーションの子会社化は大正解だったことになる。

高価(ハートリレーション株式51%の取得費用は16億9200万円)でも自社より高収益な会社を買収するという決断はLBO※1.を容易にしたのはもちろん、初年度(半期)から大きな投資利回りをもたらした。ハートリレーションの子会社化以前の最盛期21年12月期の営業利益率は26.5%(売上高21億8600万円、営業利益5億8000万円)だったから、yutori傘下になって成長が加速しマネジメント精度が高まれば再び20%を超えると期待される。

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