ファッション

「シンゾーン」が女子少年院と協業 少女たちの社会復帰を制作活動で支援

セレクトショップのシンゾーン(SHINZONE)はこのほど、女性に対する暴力や権利について意識を高めることを目的としたプロジェクト「ウィメンズ・ファッション・エデュケーション(Woman’s Fashion Education)」を始動した。第1弾として、法務省の機関である女子少年院の愛光女子学園(狛江市)と協働し、同学園の職業指導で制作されたレース編みを用いた商品3点を制作・販売した。今回の取り組みに至った経緯や想いを染谷裕之社長に聞いた。

今回のコレクションは、園生が編んだクロッシェ・レースを用いたキッズドレスと雑貨の計3点。キッズドレスはレース68枚を繋ぎ合わせた華やかなサーキュラーシルエットで、オートクチュールの一点物だ。参考価格は税込 41万2500円。小花モチーフのレースを散りばめたキッズキャップには、手描き風の「LOVE」ロゴを刺しゅうし、レッド生地には白レース、デニム生地には生成りレースをあしらった。スタイは中央に「LOVE」ロゴ刺しゅうを施し、小花モチーフのレースをランダムに配したデザインで、ホワイト、エクリュ、ネイビーの3色を企画した。

シンゾーンはファッションと福祉の架け橋となることをミッションの一つに掲げ、これまでに児童養護施設や乳児院で暮らす子どもたちを支援してきた。その活動の中で出合ったのが愛光女子学園だ。家庭環境に恵まれない子どもたちへの支援と、加害者の更生支援という女子少年院との協業は、根本的に異なる立場ゆえ社内には反対の声もあったが、染谷社長は迷わず支援を決定したという。

「シンゾーンのモットーは、“役に立とう、感謝されよう、心を満たそう”。社会の役に立てること、何より力を必要としている人の役に立つことで、私たち自身も心が満たされることがある。(本取り組みを通じて)少女たちが社会とつながる希望を見つけてもらいたいと思った」と染谷社長は語る。

このプロジェクトは、シンゾーンがこれまで手掛けた取り組みの中でも特に実現が難しかったという。一つ目の課題は、愛光女子学園が国の機関であることを踏まえ、プロジェクトから利益を出すことを避けることだった。そのため、生産を外部工場に依頼できず、製品はすべて社員が手作業で制作した。今回の製品の売り上げは全額、少女たちの支援に活用し、内訳も公開していく。

二つ目の課題は被害者感情への配慮だ。少女たちの更生を目的とした活動とはいえ、犯罪行為を犯した事実があり、被害者やその家族等への説明責任や、加害者が制作した製品をシンゾーンが販売することで顧客が離れる可能性もあった。その点について染谷社長は「今後もいただいた声は真摯に受け止めながら進めていく」と述べた。

学園での限られた授業時間で制作される上、個々の技量に差があるため、生産計画通りに数を確保するのは困難だったが、完成品を見た園生たちは、自らの手で作り出したものに価値が生まれたことに感動とやりがいを感じていたという。「自分の行動に価値が付くことで、社会とつながる希望を持つきっかけになったと感じる」と染谷社長。

さらに染谷社長は「ゆくゆくは就労支援にまでつなげたい」と語り、レース編みの職人や生産工場への就職など、学園での経験が社会での仕事につながるような展開を構想している。「すでに来年度の第2回プロジェクト実施も決まった。シンゾーンだからこそできる支援の形を模索し、継続していきたい」。

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