2012年にレインジャケットからスタートしたデンマーク発のライフスタイルブランド「レインズ(RAINS)」はこのほど、創業の地オーフスに昨年11月にオープンした新たな本社で25-26年秋冬コレクションのショーを開催した。
オーフスはデンマークでコペンハーゲンに次ぐ第二の都市だが、その規模はこじんまりしていて穏やかな雰囲気が漂う。そんな街中から車で約30分の自然豊かな郊外に、「レインズ」はブルータリズム建築の新本社を構えた。ミニマルな空間に飾られたアート作品やモダンなインテリアが目を引く社内は、広さ1万1000平方メートル。オフィスとウエアハウス(倉庫)が一体化したデザインが特徴で、ガラスを多用することによりオープンな雰囲気を生み出している。また外壁の一部はリビングウォール(緑化壁)になっていて、雨水と時の経過によって緑が茂る。そんなインダストリアルなムードと自然が融合する本社は、ブランドが追求する“アーバンアウトドア“の概念を体現している。
誇張と豊かな質感で
定番を再解釈
「レインズ」にとって10回目のショーとなる今回の舞台は、スチールの棚が並ぶウエアハウスの通路を白い布で仕切った細長い空間。スティーン・ボルグホルム(Steen Borgholm)最高経営責任者(CEO)は、「ここはブランドの未来を指し示す場所。他とは異なる大胆な方法で、ブランドの未来を見せたかった」と新たな“ホーム“でショーを開いた理由を話す。
「フォーエバー(FOREVER)」と題した今季のコレクションの出発点は、定番の再解釈。ブランドを象徴するスタイルを軸に、アレンジを加えてデザイン性を打ち出した。例えば、レインジャケットやコートは、目の下までを覆う高い襟やパワフルな幅広のショルダーライン、構築的なフードで部分的に誇張。シグネチャーのPU素材に加え、光沢加工を取り入れたり、ハードシェルのコンセプトを掘り下げたり、毛足の長いファーのような防水フリースを用いたりと、質感のバリエーションやその対比もカギになった。そんなデザインや素材使いに加え、ショール状のパーツで体を包み込むようなスタイルやウエストをシェイプしたシルエットは、秋冬のトレンドにも通じる。
また、コペンハーゲンやパリで開いたこれまでのショーでは、ボリュームのあるパファーやトレーンを引くようなマキシ丈を用いたコンセプチュアルなアイテムが多い印象だった。しかし、今季はジャケットをあえて前後逆で着せたり、素材のミックスやレイヤードを駆使したりといったスタイリングを通して、ショーで“魅せる“ための遊びを効かせた。
ヨハンネ・ディンドラー(Johanne Dindler)=ヘッド・オブ・デザインが、今回のコレクションで改めて明確にしたのは「アクセシブルでありながら、先進的」というブランドのDNA。「『レインズ』の魅力は、一つのアイコニックなシルエットから全てがスタートしたこと。それを称えるとともに、いかにそのDNAを保ちながらも未来へ向けて進化させていくかを表現したかった」と話すように、マットなPU素材で作られたレインジャケットだけにとどまらないブランドの進化を示した。
3月には日本初の店舗を
ラフォーレ原宿にオープン
「レインズ」の現在の主要市場はアメリカ、フランス、イギリスなどで、欧米にはすでに約30店舗を構えている。日本ではワーキングユニット・ジャパン、ルックを経て、23年8月からはブルーベル・ジャパンが輸入代理店になり、3月には国内初の常設店をラフォーレ原宿1階にオープンしたばかりだ。
ボルグホルムCEOは、日本市場について「“機能的“や”クリーン“など日本とスカンジナビアのデザイン美学や価値観には共通する部分が多く、『レインズ』との相性はとても良いと思う。バッグやアクセサリーからウエアまで、今後の発展に大きな期待を寄せている。特に新たにローンチした“スバ(SUVA)“シリーズはこれまでのPU素材より透湿性にも優れているので、日本の気候にピッタリだろう」と説明。ブランドとしては「さらに機能性とデザイン性を併せ持つアイテムのラインアップを広げて、ブランドの世界観を補完していく」とし、26年にはシューズのローンチを予定する。